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道具の話Vol.1 カラビナ

雑貨屋店主であり、モノと暮らし愛好家である、きさらちさとが自身の視点で足立道具店のプロダクトのちょっとコアな部分まで魅力をお伝えする、『道具の話』。
今回は足立道具店の「カラビナ」についてご紹介します。


家や事務所、自転車の鍵…など複数の鍵を持ち歩くときに束ねて携帯できる、カラビナキーホルダーは、その人の個性が出る持ち物の一つ。
人前に出す機会が多いものではないけれど、鍵につけているキーホルダーがちらっと見えると、その人の意外な一面が見えて、ついついのぞき込んで見てしまったりしますよね。

「毎日使うものだから、自分のアイデンティティを表現できるものを持っていたい。」

足立道具店のカラビナは、そんなこだわりさんにうってつけのアイテムです。

ステンレスの板材を曲げた、とても素直なカタチ。
無骨になりがちな金属のプロダクトが、繊細さを持ち合わせている不思議な魅力があります。
その魅力はどこからくるものなのか。少し紐解いてみたいと思います。

足立道具店の1stプロダクトは、岩城工業にあった1つのサンプルから始まる。

岩城工業さんの工場訪問で見つけた、板材を曲げた技術サンプル。

「かっこいいですね、これ、ブラッシュアップしましょう!」

足立道具店の1stプロダクト「カラビナ」は、ブランドの中でも一番人気のアイテム。
もともと岩城工業さんで板材を曲げた技術サンプルとして作っていたものが、市橋店長(デザイナー)の目に留まり開発することになります。

「見たときにカラビナになるなって思いました。最初は開閉部を押して開けるのがすごく固くて。男性で頑張って開けられるくらいだったので、誰でも開けやすいけど鍵が抜け落ちないようにしないといけないのが課題でした。」と市橋さんは言います。

その課題をクリアするために、板材の素材を変えたり、開閉部の構造を変えたりと、沢山の試作サンプルを経て今の形が完成しました。

1本のステンレスの板材をぐるっと曲げた、段差のないシンプルなカタチ。

開閉部の段差になっている部分をフラットな見た目にしたい、という市橋さんの希望を叶えてくれたのは岩城工業の職人さんだそう。内側に段差をつけることによって、美しさを維持しながら、開けやすく鍵が抜け落ちない構造にたどり着きました。

シンプルだけど、ひとつひとつに理由がある。
それを主張しすぎないのが、簡素で丈夫な足立道具店のプロダクトの特徴です。

工場にある、さまざまな角度に対応できる曲げ型。

曲げの角度にもきちんとこだわりがあります。
角度が浅いと開閉部が固すぎて使いにくく、逆に角度が深いと複数のキーホルダーを束ねられない。岩城さんの工場にある沢山の金型を様々なパターンで試作し、使いやすく安心感もある、使う人にとってベストな角度を見出しました。
また、ステンレスは曲げた角度から少しの跳ね返りがあるため、曲げたい角度より多めに曲げて加工する等、熟練した職人さんだからこそ精度を高められる沢山のアイデアが小さなプロダクトに詰まっています。

開閉部の精度は、油断をするとスキマが開き、リングが取れてしまうため、特に気を付けて加工しているのだとか。
「安いものじゃないからね、これを買った人が残念な思いをしないようにしっかりつくらないと。」と岩城社長が仰っていたことがとても印象的でした。

足立道具店の店長であり、デザイナーの市橋さん。

「色々試作をして、素材を変えてみたりもしたけれど、結果的には設計したというよりは、サイズや重さが手で持った時に一番しっくりとくる感覚の部分を信じたんですよね。」と市橋さんは言います。
素材そのものの良さを引き出したり、工場で加工できる最適な方法を考えたりして、工場とデザイナーでコミュニケーションをとりながら作り上げていく。
無理のないものづくりこそが、手に取った時の感覚に訴えかけてくる不思議な魅力に繋がっているのでしょう。

日常のさり気ないシーンで、
気分をあげてくれる佇まい。

展示会などや販売会に出店すると「これ、持ってるよ!」と、使っているカラビナを見せてくれる愛用者が多いのだそうです。誰かに自慢したくなるその気持ち、わかります。笑

家にいる時はフックにかけられる形状なので、鍵の居場所をつくってあげられます。
さり気ない佇まいで、見るたびに「あぁ、これ好きだな」と思ってしまうような存在感を醸し出していますよね。

鍵だけをシンプルにまとめるもよし、お気に入りのキーホルダーをつけてちょっとだけハズすのも、身に着けるプロダクトの楽しさのひとつです。

※写真のようなボトルの取り付けには別途リングを取り付ける工夫が必要です。
水道管補修リング/オーリングを使用しています。

鍵以外に、アルコールスプレーやジェルを、取り付ける使い方もおすすめ。使いたいときにさっと使えるようなところにも活躍してくれます。


佇まいを持ち歩く。

シンプルだからこそ目立たず、自分からアピールはしないけれど、ひっそりと佇んでいる。
でもきっとその佇まいに気がついて、「それ、いいね!」と言ってもらえたら喜んで自慢してしまう。
そんな魅力が詰まっているプロダクトだと感じます。
カラビナという“プロダクト”を持ち歩いているというよりは、自分のアイデンティティともなるモノの“佇まい”そのものを持ち歩いているのかもしれませんね。

取材・文・写真(2.3.4.6.7.10.11枚目)きさらちさと


足立道具店 カラビナ
サイズ:W6×D74×H26mm
素材:ステンレス(SUS304)
値段:¥2,090(税込)
製造:岩城工業株式会社
オンラインショップ

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