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エストニア、タリンの街

先週はエストニアに旅行に出かけていた。エストニアといえば、私の中ではまな板をはじめとした木工品の街、あるいはスカイプをはじめとしたITに強いイメージで、小国ながらものづくり文化の根強い国だという印象を持っていた。一方で梨木香歩の『エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦』を読んで自然豊かなところであるとも知っていた。とはいえ具体的に知っている首都の名前ぐらいで、ほとんど知らない国であることに変わりはなかった。

フィンランドの首都ヘルシンキからフェリーで二時間移動するとエストニアの首都タリンへ到着する。思ったよりも大きく豪華な船で、中には免税店があってお酒が安く買えるようだ。実際お酒を買うためだけに船に乗る人も少なくないらしい。

タリンに着いて最初に気づいたことは、至る所にエストニア語と並んでキリル文字でロシア語が記載されていることであった。1991年の独立回復までソビエトの支配下にあった影響がまだ色濃く残っているということだろう。住宅街を歩いていると北欧の国という感じなのに、バスやトラムに乗ると途端にどこか東欧の雰囲気がするのも不思議な感じだ。

旧市街のタリン歴史地区は世界遺産に登録されており、今でも中世の街並みが残っている。今はクリスマスの時期なので、ラエコヤ広場にはクリスマスマーケットが広がっていた。

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(さらに中世感を味わいたい人は、この広場の横にあるIII Draakonというお店がおすすめ。ビール、ソーセージ、ステーキ、スープ(+食べ放題ピクルス)ぐらいしかメニューはないが、中世の食堂をイメージした店内が特徴的。)

しかし旧市街を出て新市街行くと、デパートやビルがたくさん並んだ場所があり、そこは首都らしく都会な印象を受ける。また新市街と逆側に行くと、テレスキヴィという地区があり、そこは若手のデザイナーや企業家が集まるクリエイティブの発信地になっていて、今のエストニアを感じることができる。

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(ソビエト時代工場だった場所を使って、オフィスやカフェ、クラブ、古本屋、レコード屋、雑貨屋(木工品や革製品など土地のものづくり)が集まった一つの地区となっている。建物の壁には様々な印象的なペイントが施されている。)

タリン駅を中心として今と昔が程よく混在した地域を少し離れると、野外博物館があり、しんとした空気の中自然を思う存分堪能できる。

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これがざっと私の体験した初エストニアの旅であった。小さな場所に古いものから新しいもの、そして自然まで共存している不思議な街タリン。また目には見えないがエストニアは行政サービスのほとんどが電子化されている電子政府としても知られ、住んでいなくても電子国民になれる仕組みもある面白いところである。買い物も、記憶している限りカードが使えなかったところは(有料トイレ以外)なく、現金を持ち運ぶ必要もない。

例えば東京と比べるとものも人も少ないし、一見の華やかさや豊かさは東京のような大都市の方が優っているのかもしれないが、エストニアの『軽さ』は、むしろ物質に依存しないこれからの生活を体現しているのかもしれない。意図的にそうしているのか、歴史を踏まえて結果的に物質に依存しない形で国や文化を残そうとしているのかはわからないが。

観光目線で見るとタリンは三日もあれば十分な気もするが、国の政策やシステムなどに注目して仮想国家としてのエストニアという視点からみるとまだまだ面白い街の見方が出来る気がした。また今回は車がなかったので行くことができなかったが、エストニアにはユニークな島もたくさんあるようなので、いつか訪れてみたい。