【記事紹介】「建設的アクティビストの活動の活発化と日本の実務への示唆」(旬刊商事法務)

本日は年末に公表された記事のご紹介です。
商事法務研究会による機関誌「旬刊商事法務」のNo.2248, 2249に掲載された「建設的アクティビストの活動の活発化と日本の実務への示唆」です。

上・下に分かれており、上はファラロンキャピタル(直近東芝に臨時株主総会開催を請求したことでも話題になりました)の日本代表の今井氏、下はアンダーソン・毛利・友常法律事務所の仁瓶弁護士・生方弁護士が、それぞれ筆者となっています。

足元、日本市場において「建設的アクティビスト(Constructivist)」が活動を活発化させる中での、その経済的動機や日本市場における構造的変化(上)、建設的アクティビストの活動が企業価値向上の契機となった事例の紹介と日本の実務への示唆(下)が紹介されており、とても興味深く読みました。
(余談ですが、日本語の文献で"Constructivist"の表現を見たのは、個人的に初めてな気がします。)

詳細は当然ながら実際の記事を読んでいただければと思いますが、面白かった主な点は下記の通りです。

上:建設的アクティビズムとPE投資の類似性

上では、リターンの源泉における建設的アクティビズムとPE投資の類似性が指摘されており、まさに我が意を得たりの内容でした。

①株価と理論上の「現時点での」本源的価値とのギャップ⇒資本政策の改善
②本源的価値そのものの増加⇒事業の改善
と、いずれのリターンの源泉も、両ファンド業態に共通するものです。

ただし、PE投資は基本的にマジョリティ(多くのケースで100%)の議決権を取りにいくのに対し、アクティビストはあくまでマイノリティしか持たないため、コーポレートアクションを強制することが出来ない点は相違として指摘されています。
(一方で、そのアクション実行を説得出来るかがそのファンドの巧拙に繋がり、説得できるのであれば、投資先の候補は全上場企業になるため、その分より幅広い母集団から探すことができますね)

下:投資家との和解契約における法的留意点

海外でのアクティビストと企業が締結した和解契約の事例が紹介されつつ、同様の契約を日本企業が締結する場合の日本法上の留意点が解説されています。

個人的には、議決権を拘束するような契約を発行体が締結する場合、会社法308条2項に関連して無効となり得るという点は全く存じ上げない内容で、とても勉強になりました。

その他、利益供与規制やインサイダー規制の観点からの留意点も触れられており、非常に実務的な内容で示唆に富むものでした。こういった点を踏まえても、アクティビスト対応において強い弁護士事務所を雇うのは必須ですね。

ということで、簡単ではありますが、新年一発目の記事でした。