マネックス・アクティビスト・ファンド②

①の続きです

マネックス・アクティビスト・ファンドに関連して日々こちらのチャンネルで動画が公開されています。
今回はこの動画内で説明されている、本ファンドの運用方法についてまとめます。

運用者も第一線級の猛者が揃う

ファンドの中心メンバーとなる「カタリスト投資顧問」のメンバーは動画にも出演しています。無敵超人のような経歴の数々で、さながら資産運用業界のオールスターチームといった趣です。
・平野太郎氏:住友銀行(GSへの出向含む)⇒マッキンゼー⇒アライアンス・バーンスタイン。ボトムアップリサーチのエキスパート
・小野塚惠美氏:GSAMに20年勤務。ESG分野のスペシャリスト
・花澤明洋氏:JPM⇒ホライゾン⇒ミレニアム。マーケットインサイト部分を担当
・貝沼直之氏:(動画にはまだ出てきていませんが)バイサイド・セルサイドそれぞれのアナリスト、事業会社のIR等、多彩な経験

この他、マネックスグループの20/3期決算説明資料によると、村上ファンド出身者や投資銀行出身者もメンバーに居るようです。

メンバーのスキルセットの幅広さはその分だけエンゲージメントアプローチの幅広さにも繋がると考えられ、バラエティに富んだメンバーによるエンゲージメント手法にも期待が高まります。

運用の3本柱

本ファンドの運用については、次の3つの柱をベースに運用していく旨が説明されています。運用メンバーの経歴とある意味ではコインの表裏の関係ですね。

・ホリスティックエンゲージメント
「ホリスティック(holistic)」は全方位的、網羅的といった意味。経営者だけでなく、社外役員や規制機関、メディアなど、様々なアプローチを用いて会社の企業価値向上を提案していく。

・ボトムアップリサーチ
徹底的な分析。関連分野のエキスパートから話を聞く、ネットワークを活用するなど、様々な形で会社を深くリサーチし、会社の理解をしていく。中長期的な会社の成功のために、運用していく。

・マーケットインサイト
市場の需給・ボラティリティーによる株価のブレにも対応。エンゲージメントを目的とした株だけ持つと、インデックスとの乖離が大きくなってしまうので、インデックスを意識しながら全体のポートフォリオを組み立ててリスクとリターンを最適化する。

面白いのは、3つ目のマーケットインサイトの要素を入れていることですね。いわゆるゴリゴリのアクティビストだと、エンゲージメントを行う対象企業の株式のみを保有することが想定されます。これは、エンゲージメントがうまくいけば高いリターンを得られますが、一方で失敗すれば大きく損失を被る可能性のあるハイリスク・ハイリターンの戦略です。
これに対して、本ファンドは一般の個人投資家に対して広く販売していく商品でもあることから、幅広い株式をポートフォリオに組み込むことで、一定程度リスク・リターンを平準化させるという目的かと思います。
実際、TOPIXなどの指数に対して基準価額どのような動きを見せるのか、今後の月次運用報告を追うのが楽しみです。

幅広いエンゲージメントテーマ

その他のファンド概要については下記資料に色々と載っています。

P18にありますが、ポートフォリオの構成として、40%が事業計画の見直し、25%が親子上場等、20%が株主還元・IR強化、15%がその他、というイメージが示されています。4割を占める事業計画の見直しは他のテーマに比べても難易度が高く、その分上手くいくとより大きな株価のカタリストになると思われ、この辺りの巧拙がパフォーマンスにも直結してきそうです。

また、本ファンドに関して気になるのは、取り組んでいるエンゲージメント活動についてどこまでオープンにするのか、です。スパークスの「対話の力」では、株主提案を行った帝国繊維を除き、エンゲージメントの具体的な内容は企業名を伏せ、限定的な記載でした(それでもよく読むと企業が分かる、というケースも多かったですが)。
これに対して、松本社長は本ファンドについて「個人投資家も巻き込んでエンゲージメントしていく」旨を発現していますので、その手法にも注目したいところです。

運用報酬として、いわゆる「2の20」(資産総額の2%を毎年基本報酬としてとりつつ、運用による成果部分は20%)かつ、購入時に3%の手数料をとられるということで、決して安いコストではありませんが、天才債券トレーダー松本大氏が株式運用に本気を出したらどのような成果を出すのか、一ファンとして楽しみにチェックしていきたいと思います。

(※ 言うまでもありませんが、本記事は私が個人的に興奮した内容を書いてあるだけであり(笑)、投資活動の勧誘や特定の銘柄・ファンドへの推奨等を目的としたものではありません。あくまで投資は自己責任でお願いします。)