見出し画像

1日15分の免疫学(8)自然免疫①

第2章 自然免疫:生体防御の最前線

大林「自然免疫は、皮膚や粘膜の物理バリア(解剖学的障壁)と補体(化学的障壁)が病原体に突破されたら出番ですね!」
本「ほとんどの外来微生物は、数分~数時間後には自然免疫によって検知され死滅する」
大林「頼もしい!自然免疫細胞は、人類が長年かけて獲得したレセプターで病原体を認識してるんだよね!」
本「そう、先天的にもっている」
大林「先天的ということは、そのレセプターをコードする(≒レセプターを構成するタンパク質の設計図である)遺伝子先天的に欠損していたら……どうなるんです?」
本「適応免疫系に問題がなくとも、自然免疫の欠損により免疫不全となる。この話は13章で詳しくやるよ」
大林「うぃ」

本「さて、抗菌酵素antimicrobial enzymeや抗菌ペプチドantimicrobial peptide、そして補体系complement systemによる初期防御が突破されるとPAMPを検知するPRRによって自然免疫細胞が活性化される」
大林「容赦ない専門用語交じりの説明ィ!」

◆復習メモ
PRRパターン認識レセプターpattern recognition receptor):多型性のない(≒多様性の低い)自然認識レセプター。単純な分子PAMPを認識する。

PAMP病原体関連分子パターンpathogen-associatedmolecular pattern):多くの微生物にある分子構造の規則的なパターンである。ヒト細胞にはない。

自然免疫細胞は、各種のPRR(パターン認識レセプター)により、ヒト細胞にはないPAMP(病原体関連分子パターン)をもつ微生物を検知し得る。


大林「PRRがPAMPを検知して活性化して、そこから免疫応答のエフェクター機構色々動き出すんだよね。自然免疫細胞だけで鎮圧するならそこで解決、応答終了だけど」
本「適応免疫応答が発動する場合でも、自然免疫系は適応免疫系にギアがシフトするまでの間、病原体の数を減らす役割を担う」
大林「ギアがシフトとかカッコいい言い方するのぅ。大本命が参戦してくるまで敵を食い止める!みたいな感じか」

本「病気の原因となる微生物は、病原微生物pathogenic microorganism、また病原体pathogenと呼ばれる」
大林「体内に入ってくる外来微生物をすべて病原体と呼ぶわけじゃないのね」

本「それでは、病原体の種類侵入経路ごとに、感染を防ぐ即時自然免疫応答について説明します」
大林「イエエエイ!自然免疫の!かっこいいとこ!見てみたい!」
本「感染症の原因を5分類して述べよ」
大林「ヒェッ、ウイルス細菌真菌…」
本「原虫蠕虫。この2つは寄生虫とまとめてもOk」

原虫単細胞の微生物のこと。例、ゾウリムシ、アメーバ

蠕虫(ぜんちゅう):体が細長く蠕動により移動する虫(小動物)の総称。 例、ミミズ、回虫

細胞外の病原体について

本「多く細菌性病源体細胞の外で生息し増殖する。細胞外病原体について、自然免疫応答はどのようなものがある?」
大林「ファゴサイトーシス(食作用)!食細胞であるマクロファージと好中球が標的を貪食します!」
本「そう。細胞外の細菌は通常、貪食細胞による食作用の感受性が高い(≒食作用の有効性が高い)。しかし、」
大林「しかし?!」
本「ブドウ球菌属、肺炎球菌属の細菌はファゴサイトーシスに抵抗する多糖体の莢膜をもっている。さぁどうする?」
大林「補体が細菌に結合する!そして食細胞にはその補体を掴むレセプターがあるので貪食できます!」
本「その通り。補体は細菌のファゴサイトーシス感受性を高める
大林「あと、適応免疫が整えば、抗体と補体の合わせ技でさらにファゴサイトーシス感受性をアップできます!」

細胞内の病原体について

本「それでは次は細胞内の病原体について。ウイルスなど偏性細胞内寄生病原体は増殖するために細胞に入り込まなければならない」
大林「偏性細胞内寄生病原体?初めて聞いた呼び名だ……」

Wiki「偏性細胞内寄生体(obligate intracellular parasite)とは、別の生物の細胞内でのみ増殖可能で、それ自身が単独では増殖できない微生物のこと」

看護roo!「偏性細胞内寄生菌偏性細胞内寄生菌は寄生する細胞の外では増殖できない病原性細菌を指す。 代表的な病原性細菌にリケッチア、クラミジアなどが挙げられる。 これらの微生物は単独で人工的に培養することができず、生きた細胞を使用して、その細胞に寄生させて培養する必要がある」

MSD医学用語「偏性細胞内​寄生病原体である(すなわち,宿主細胞内でのみ増殖でき,疾患を引き起こすことができる)」


本「結核菌のように細胞の中でも外でも増殖できるものは通性細胞内寄生病原体と呼ぶ」
大林「へぇ~偏性と通性かぁ」

本「細胞内の病原体に対して自然免疫の対抗策は?一つは細胞に侵入する前に、抗菌ペプチドやファゴサイトーシスで破壊すること」
大林「一つ目が細胞に侵入する前なら、二つ目は細胞に侵入した後かな?そりゃあれでしょ、お茶の間の皆さんもご存知!ナチュラルキラー細胞(NK細胞)による細胞傷害!」

外毒素と内毒素について

本「多くの細胞外寄生細菌外毒素exotoxinエキソトキシンを分泌する。そして、外毒素に自然免疫系は弱い!」
大林「となると、適応免疫が必要?」
本「そう、適応免疫の中和抗体が必要になる」

大林「外毒素というからには内毒素もあるのかな?」
本「内毒素endotoxinエンドトキシンは、細菌から分泌されない構成因子のこと」
大林「分泌されない毒素?ないどくそ?内毒素…覚えやすいなwそれにしてもエンドトキシンて聞いたことがあるような」
本「エンドトキシンで重要なのはリポ多糖lipopoly-saccharide:LPS」
大林「リポ多糖もサッカリドも聞いたことある!」
本「グラム陰性細菌の外膜構成成分。サルモネラなどがもつ」
大林「ほぉ~」

本「ほとんどの病原微生物は自然免疫を制して増殖し続けることができる」
大林「残念なおしらせだ……」
本「ある病原体は免疫系で排除されることなく何年も生き残る」
大林「免疫応答の活躍どころか残念な話ばかりでは……」
本「でもほとんどの病原体は一般的に致死的なものではない。何千年もの間、ヒトをうまく利用するように進化してきたので」
大林「宿主をすぐ殺すのは悪手なんだよね」
本「ヒトは多くの微生物と共生するように適応し、微生物もまた……」
大林「新コロも早く弱毒化してほしい……せめて感染力と重症化率をインフルくらいに…」
本「にもかかわらず近年の鳥インフルエンザやコウモリのコ□ナウイルスによる重症急性呼吸器症候群 severe acute respiratory syndrome:SARSもある」
大林「うあああ……意外と弱点だらけだよね、免疫も」
本「そうね。例えばエイズでは1つの分子が標的になることで免疫が総崩れになる」
大林「ヒト免疫不全ウイルスはCD4を狙う……つまり、ヘルパーT細胞とマクロファージと樹状細胞が狙われる……!」

上皮からの微生物の侵入

本「上皮から侵入したほとんどの微生物は自然免疫系によって除去されている」
大林「知らない間に守られてた……って感じだ」
本「病原体の拡散への対抗策として、最初に炎症反応が起こることが多い」
大林「炎症反応……好中球が血管から感染組織へ呼ばれるんだよね」
本「それだけじゃない。下流の毛細血管内で血液を凝固させ、病原体を循環で拡散できないようにする
大林「炎症反応にそんな効果あったんだ!初めて聞いた!敵が拡散するの止めようとしてたんだ……!」

本「自然免疫の細胞応答は数日間機能する」
大林「その間に適応免疫の準備が進むわけか」

本「上皮細胞貪食細胞分泌する抗菌物質として、抗菌ペプチドがある。これらは最も古くからある感染防御の形態の1つ」
大林「昔からある武器か~」
本「上皮細胞は粘膜の体液内に分泌し、貪食細胞は組織内に分泌する」
大林「ここでいう貪食細胞は組織定住マクロファージのことかな」
本「重要な抗菌ペプチドは、ディフェンシンdefensin、カテリシジンcathelicidin、ヒスタミンhistatin」
大林「ディフェンシンとヒスタミンはよく聞く!どんな効果があるの」
本「ディフェンシン数分で、細菌や真菌の細胞膜、いくつかのウイルスの細胞膜エンベロープ破壊する」
大林「おお!すごい!」

今回はここまで!

免疫学4コマや、細胞の世界をファンタジー風にした漫画を描いています↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?