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1日10分の免疫学(38)免疫記憶①

第11章  免疫記憶とワクチン


本「記憶細胞memory cellと呼ばれる長期生存B細胞やT細胞があれば、その病原体の侵入に非常に迅速かつ強力な二次免疫応答secondary immune responseで対抗し、ヒトに危害を及ぼす前に感染を終息させられる」
大林「これこそがまさに『免疫』……二度目の疫を免れる!」

◆ポイント
免疫の記憶を保持できる細胞は、T細胞とB細胞
<名前の由来メモ>
胸腺Thymusで分化するので細胞。
鳥のファブリキウス嚢Bursa of Fabriciusで見つかり、ヒトでは骨髄Bone marrowで作られるので細胞。

本「まず、免疫記憶の作られ方発動方法について。一度侵入してきた病原体が再び侵入してくる可能性は高い」
大林「なるほど。また来るだろう敵に備えて免疫記憶を保持することで、最初の免疫応答(一次免疫応答)より迅速で強力な二次免疫応答で反応することができる。効率が良い!」

本「一次免疫応答によって感染が終息すると、高親和性の病原体特異抗体の量が上昇する」
大林「えぇと、その病原体にカスタマイズされたより効率のいい抗体が……感染が終息したのに上昇するの?なんで?あ、次に備えてか!」
本「数ヶ月間は高レベルに維持される」
大林「へぇ……感染が収束したら、エフェクターT細胞は活動終了だけど、B細胞の最終形態である形質細胞しばらく抗体を出し続けて警戒してるってことかな?」
本「この抗体による防御免疫protective immunityにより、第二波第三波を未然に鎮圧している」
大林「知らずに守られていた……」

本「一次免疫応答の形質細胞のほとんどは短命で、特異的抗体の量は一年間にわたり徐々に減り、最終的には骨髄で長期生存する形質細胞により、低レベルで安定的に維持される」
大林「おー、骨髄組が細々とキープしてくれるのか」
本「長期生存する形質細胞は、骨髄間質細胞とその間質細胞が分泌するIL-6により維持される。また、形質細胞は、間質細胞との接触で生存シグナルを受けとる」
IL:インターロイキン。サイトカインの一種で、発見順でナンバリングされている。
サイトカイン:細胞間で相互作用を及ぼす物質。

大林「間質細胞から離れたら短期で死んでしまうの……?」

本は答えないが、多分そういうことなのだろう。

本「記憶細胞がいると、二度目の侵入に対する応答が強力なのは何故かわかる?」
大林「えーと、準備が整ってるから!早くたくさん出撃できる!」
本「惜しい。病原特異的記憶細胞はナイーブ細胞より遥かに多く、早く活性化される。また、記憶B細胞はクラススイッチ等も済ませていて、一次免疫応答の抗体より優れた結合能と輸送能をもつ」
大林「へえ……記憶細胞の方がナイーブ細胞より多い……あ、そうか、特定の抗原が侵入してきたとき、それに特異的なナイーブ細胞よりも、特異的な抗原に出会って活性化して増殖した記憶細胞の方が多いのは当たり前か!」

別の本「抗原提示細胞が提示する抗原で活性化するT細胞全体の0.001~0.0001%」※P40に記載の情報
大林「一種類の病原体が侵入してきた場合に、出番が来るナイーブT細胞は全体の0.001~0.0001%ってことですな。それと比較したら、すでに活性化して増殖してる病原特異的記憶細胞の方が多いわけだ」


本「3回目の感染のときは、より優れた三次抗体反応で対処される」
大林「どんどん強くなる?!四次応答とか?!」
本「同じ病原体の連続感染により、適応免疫と免疫記憶の防御能はより研ぎ澄まされる。三次、四次とあるが、通常はまとめて二次免疫応答と呼ぶ。ちなみに免疫記憶応答は、以前は既往応答anamnestic responseと呼ばれていた」
大林「へ~、既往歴に似てますな」

今回はここまで!

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