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盆栽で風情を楽しむ ~盆栽士の岸本千絵さんが、今のインテリアに取り入れやすい夏の盆栽を提案します。

盆栽は引き算の美

 盆栽の「盆」は「鉢」を意味します。「裁」が「植物」。鉢の中で自然を模倣したような風景を描く。だから実は鉢も重要。むかしは床の間などに飾っていましたが、現代の家には床の間はありませんよね。私は今のインテリアにも合う鉢が欲しくて、作家さんや窯元さんに頼んでオリジナルのものを作ってもらいます。
 観葉植物や園芸などはどんどん大きくしましょう、いっぱい花を咲かせましょう、実をつけましょうというものだけど、盆栽はそれらとは違って“引き算”。生け花と一緒です。2~3年に1回ほど植え替えをしますが、大体は同じ鉢に戻します。そうやって手入れをして、幹を太らせて枝数を多くして大木感を出していくんです。このミニマム感というか、コンパクトに美しさを出すというのが、今の住宅環境にも合っているのではないでしょうか。

ミズトクサ。鉢と同色の皿に水を張り、テイカカズラの 花を浮かべてひと工夫。涼しい空間を演出できる
合歓木(ネムノキ)。梅雨が明けるころから羽のような ふんわりとした花をつける。夕暮れに咲く姿が華麗

いざ盆栽を育ててみる

 盆栽を育てるのは屋外。水やりは乾いたらたっぷりと、が植物を育てる基本ですが、鉢が小さいぶん普通の鉢植えよりも乾きやすいので気を使います。人と同じで、いきなりうまく育てようとせず、成長を見ながら、水を欲しがっているな、暑いんだなとか、だんだんと会話をしていけるようになればいいと思います。
 たまには間違うこともあるし、生き物だから寿命で枯れることもあるけれど、それでも翌年に花が咲いたらとてもうれしい! ご褒美みたいなものです。そうやって植物と春夏秋冬を楽しんでみてください。
 私が盆栽を始めたきっかけは、自分の家に飾りたかったから。その頃は今のようにおしゃれな盆栽のお店もないし、ネットもない時代。そもそも私は、観葉植物すら枯らしていたんです(笑)。それでも、盆栽を見たときに、これを家に飾ったらかっこいい!と思いました。その後、盆栽教室に通い、自分でも伝統的な盆栽を勉強しました。すると、伝統的な盆栽ができないと、モダンなかっこいい盆栽もできないことが分かってきたんです。
 本当はただ飾りたかっただけなのに、盆栽にはまればはまるほど、ものすごく奥深くて、今でも日々勉強しています。盆栽を始めたいなと思ったら、ネットや本で調べるという手もありますが、盆栽教室に行くのもおすすめです。

六角堂柳。ヤナギといえば垂れた枝が風に揺れる姿 が思い浮かぶ。小さな鉢で「風」「涼」を表現
百日紅(サルスベリ)。7~9月に淡いピンクの花をつける。 寺社に植えられることが多く古都の夏を彩る花とされる

話・写真:岸本千絵さん(きしもと・ちえ)
日本園芸協会盆栽士。琳葉(りんは)盆栽主宰。現代のインテリアに合うモダン盆栽」を創作、生活に取り入れ日本の四季を楽しむライフスタイルを提案している。各地で盆栽教室を開催中。http://rinhabonsai.com/


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