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【日記】何となく下書き

 なんだか続きを書けないので書いたところまで下書きをさらしてみる。タイトルもまだない。最後までかけないかもしれない。でもあげちゃう。


「三咲、卵は目玉、それともスクランブル?」
「え~とね、今日は目玉な気分」
「よし、わかった。」

 三咲はあくびをしながら父親の問いかけに答えた。今日は土曜の朝である。お互い学校も仕事もなくゆっくりできるので、余裕をもって食卓についた。
「はい、パパ。ジャム」
「ありがとう」
 二人はトーストを頬張りながら一週間の出来事を順繰りに話していく。三咲はこの時間をとても楽しみにしていた。同級生の友人たちは皆しめしあわせたようにいうのだ。「お父さん、きらい」、と。わからず屋で面白くもなく、頭も薄くなってきていると。そんな年頃の少女とは思えないほどに三咲は実の父親のことが好きだった。父親はいつまでも若々しく、会話も機知に富んでいた。この2年間二人で協力しあいながら暮らしてきたのだ。二人はかけがえのない唯一無二のパートナーだった。


 遠藤三咲は不思議な力をもっている。いつの頃からその能力に目覚めたのかはとうの本人にも分からないが、彼女はたびたび予知夢をみた。最初は朝の献立というぐらいの素朴なものであったが、それはだんだんと形を変え、今ではその日一日にどういったことがおこるのかあらかたの内容を夢にみることができるまでになった。
 
 彼女が幼い頃、小学校の低学年の頃くらいだろうか、三咲はその夢の内容を人によく話してうす気味悪がられたものである。そしてそれは実の母親に対しても同じであった。

 その日三咲は母親がドーナツをあげている最中、電話に出て火事をおこすという夢をみたのである。彼女はいった。「お母さん、ドーナツあげないで」、と。母親は三咲のいつもの病気が始まったといわんばかりに、この話に取り合おうとはしなかった。その日学校から帰った三咲が目にしたものは、白い粉の中でうずくまって泣いている母親だった。
 
 彼女は三咲の忠告をきくこともなくドーナツをあげ、その最中にかかったきた電話にでたのである。その時確かに火をとめ、とめたことを確認してからその場を離れたそうである。それでも残り火のような油がはねて引火したというのだ。運が悪いとしかいいようがない。幸い、近くを通りかかった男性が消火器片手に炎を沈下してくださったとのことだった。

 三咲は「お母さん大丈夫?」と当然のことながら声をかけた。そしてハッとした。自分の母親のまるで得体の知れないものをみるような冷たい眼差しに。

 その三ヶ月後である。両親が離婚したのは。理由は夫婦間の意見の不一致だったらしいが、三咲はあのドーナツ事件が最後の決めてとなったのだと感じていた。三咲が小学6年生のときのことである。

 父親はこの、三咲の能力に対してこういった。「みてしまうものは仕方がない。ただ、皆は三咲のような能力をもたないんだ。だから安易に人に話すことはやめた方がいいかもしれない。その能力はいつか大切な人ができたときのためにとっておきなさい」、と。
「大切な人?」
「この人のことを守りたいと思う日が三咲にも必ず来るから、その日まで待ちなさい」、と。

 父親の家は代々神主をつとめている。父のお兄さんが今は跡をついでいる。そのいわば神がかり的な能力が父親を通り越して三咲に受け継がれたのではないだろうかというのが父親の見解だった。

 能天気というかなんというか。それでも三咲の心を落ち着かせてくれる父親の配慮が彼女の心をどれだけ慰めたことか。
 
 父親はその離婚した時に三咲を連れ、東京の郊外に引っ越してきた。見知らぬ土地に引っ越してきた方が三咲の心の成長のためにはかえって都合がいいと考えたのである。三咲もこの提案にすぐに賛同した。そして心にある誓いをたてた。予知夢のことは父親以外の誰にも話さない、と。あのドーナツ事件が三咲の心に暗い影を落としていたのだった。


 

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