見出し画像

【短編小説】ゲーム狂い

「アキラ、いいかげんゲームはやめて食事になさい」

「今いいところだから。あぁー、母さんが声かけるから負けちゃったじゃん。あーあ」

 アキラはゲームのコントローラーを放り出してこれみよがしのため息をついてみせた。アキラは今、パズルゲームにはまっていて今日も対戦相手を探してはゲームに挑んでいた。ゲームは一日二時間までと母親から決められているにも関わらず、もうゆうに三時間は経過している。アキラの頭の中はいつもゲームのことでいっぱいだった。どうやったら落ちてくるパズルをうまく組み立てられるか、相手を早くやっつけられるか、新記録を樹立するまでにはどれだけ腕を磨けばいいのか、それらのことで思考は占められていた。だからご飯を食べている時にもお風呂に入っている時にも、自動的に上からパズルが落ちてきてアキラはそれらをイメージの中で組み立てるのだった。

「アキラ、お母さん明日用事で隣町まで出かけてくるから留守番お願いね。くれぐれもゲームをやりすぎないようにね。」

「分かったよ。ゲームは一日二時間までだろ。大丈夫だよ。」

「くれぐれも戸締りには気を付けること。知らない人が来たらでなくていいからね。」

「分かった。分かった。」

 アキラは面倒くさそうに返事をした。内心アキラの心は喜びの感情でいっぱいだった。これで明日は思い切りゲームができる。いつも空想の中で試していたあの技法を実際の画面で試すことができるのだ。

 そうして迎えた翌日、アキラは万全の準備をしてテレビ画面に向かった。ポテチとコーラをスタンバイしていざゲームスタート。と思ったところにインターホンが鳴った。

「ちっ、誰だよ。いいところに」

 アキラは思わず舌打ちをしたが、母の忠告通りここは居留守をつかうことにした。アキラが無視を決め込んでいると、次に電話がなった。こちらも無視を決め込む。しまいには二階でどしんと物音がした。アキラは構わずゲームに集中することにした。ゲームを始めて4時間あまりがたった頃だろうか、さすがに目が疲れてきてアキラは休息をとることにした。ここでアキラはあの物音を思い出し、二階にあがった。そこでアキラがみたものはぐちゃぐちゃに荒らされた部屋の数々であった。空き巣にはいられたのだ。どうしよう。母親に怒られるとアキラはとっさに考えた。もうじき母親の帰ってくる時間である。

 果たして帰ってきた母親に対してアキラはこう説明した。

「ゲームをやっていたら、物音がするものだから二階に行ってみたんだ。そこで空き巣に会ったのだけど、どちらも急いでいたから言ってやったんだ。要件をすませてさっさとお引き取り下さいって」

 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?