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【ポストコロナ中国の「いま」から予想する日本の「近未来」Vol.1】中国旅行業界はいま、どんなこと起きているのか

こんにちは。訪日トラベル系スタートアップと、日中ツーリズムビジネス協会を経営してます、ENtranceの王です。

5月22日、待望の中国の全人代が開幕されました。

不思議かもしれないが、中国企業の経営者たちは実は、毎年、国家最重要会議であるこの全人代に待ちに待っています。なぜかというと、政府が公表する経済成長目標と各種指標をなしには、自社の事業計画を立られないんわけだ。そして、全人代で定められた経済成長戦略は、日本経済、特にインバウンド市場にも影響を与えるので、いつもウォッチしています。

結果、今年はコロナの影響で、いつもと違って、経済成長率目標を提示せずに、「6つの安定」と「6つの確保」を提唱した、という民間の予想を裏切った「保守的」戦略が立てられた印象となった。(※「6つの安定」の中に、「国民の期待の安定」という項目も入っているということは、政府が民間企業の経営への関与やメディア統制を、さらに強化するんじゃないかなとみてる。)

他にも、政治問題、社会課題の議題が様々あるけど、自分は政治と経済の専門家ではないので、これ以上の解説と深掘りはしないが、ほかの専門領域の方の解説を期待しています。

0. シリーズNoteをはじめます

中国は世界より一歩早く、急速な経済回復に入ったとあちこちで聞きますが、自分も発信しているものの、そのほとんどが断片的な情報でした。

「中国は本当に収束したのか?」「中国の回復状況からみて日本はどうなると思う?」「Withコロナで中国で誕生した面白いサービスがない?」と、周りの友人から色な質問が日々来ているのもあり、これから、自分の備忘録も兼ねて、少しずつ、ポストコロナ中国のリアルの「いま」を、整理して発信しようと決めました。(続けられるかどうかめちゃ不安です笑)

皆さんにとって分かりやすいように、なるべく事例を交えながら、客観的に、体系的に伝えていきたいと思います。

中国のITテクノロジーサービスやデジタルマーケティングの事例も後々整理していこうと思いますが、Vol.1では、まず、中国のいまのコロナの状況、そして、旅行業界の変化や最新トレンド、旅行者のBeforeとAfterの行動変化などの全体動向を、少しマクロな目線から、俯瞰してまとめてみました。

かなり長文となりますが、少しでも観光業界の皆さんのご参考になれれば嬉しいです。また、Vol.1Noteは5月まで無料公開します。6月以降は一部公開に変更しようと思います。

さて、本題に入りたいと思います。

Q1. 中国は、本当にコロナが収束したのか?

結論から言うと、収束の定義によります。ポストコロナ時代に入ったかもしれないが、100%収束はまだ言えません。

感染者数などの最新情報を取りまとめてくれている「丁香医生(DingxiangDoctor)」のデータみると、5月22日時点で確認できている「感染者数」は全部で139名で、そのうち、吉林省、内モングル、上海だけはまだ2桁

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全人代で期待されていた「コロナ終息宣言」もなかったんのは、いま中国では、コロナ第2波をかなり警戒しているからです。

日本ではあまり注目されてないけど、中国吉林省では、先週クラスター発生のため、吉林省舒蘭市は18日より、厳格な封鎖措置、つまり「ロックダウン」をはじめました。これによって、1億人が移動が制限されているわけです。

なので、中国全土で一概に言えなく、地域によっては、収束の状況がかなり異なります。

Q2. GWを機に、中国旅行市場はどのぐらい回復したのか? 

中国国家文化旅行部(日本観光庁同等)の発表によると、5月1日-5月5日部今年のゴールデンウィーク期間中、中国国内旅行市場は、1.15億人の売上総額475.6億元(約7700億円程度)と、急速回復した兆しがありました。

この数字は、何を意味しているのか?

GWの推移だけで比ベると、つまり昨年比の5割〜6割に戻ったということです。

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 ただ、旅行業界全体は、正常水準に回復するまでは、まだ時間かかるはずだ。

旅行業界と言っても、色々なプレヤーが存在する。

交通事業者(飛行機、新幹線、バス、タクシー)、宿泊事業者(ホテル、リゾート、民泊)、娯楽レジャー施設(テーマパーク、公園、ミュージアム)、旅行会社・OTAなど、実は、それぞれの業種では、回復状況が違っている

中国旅行誌TravelDailyは、この前「Meituan」の民泊予約データに基づいて、独自に分析した。それによると、「清明節」前後には、民泊業界の予約数はすでに2019年12月の予約数の6割-7割程度に戻ったとのことです。

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また、先日、Trip.comさんが発表された「メーデートラベルトレンドレポート」によると、GW期間中に、予約数が昨年水準を上回った唯一の「商品」は、レンタカーのようだ。FIT客のほとんどは、ドライブ旅行を選択しているからだ

一方、自然公園、テーマパーク、そして博物舘や美術館などは、いち早く営業再開しているものの、「入場率を5割まで」、「健康コードチェック」や「事前予約・実名登録制」などの入場制限の措置を取りながら、運営している状況ので、正常水準にはまだ戻っていない。

このように、コロナ明けたら、「密を避けるためのデジタル対策」はスタンダードになっていました。日本もきっと同じような対策求められると思います。

多くのトラベル業界のリーダーが同じことを言ってますが、コロナが明けても、私たちが当たり前に生きていた世界、そして、トラベル業界の常識が大きく変わる、と私も強く思っています。

Q3.  中国政府は、旅行業界に対してどんな政策を取っているのか

日本と違って、中国の企業の経済活動に対して、政府がよく「指導意見」を発表するんだ。いま現在、中国文化旅行部(日本の観光庁同等)が旅行業界に対して提示している「指導意見(政策)」としては、まとめると主に3点あります。

1.「早期復興」

一刻も早く経済を復興させるため、中国政府は、観光地や商業・娯楽施設の早期の営業再開を要請しながら後押ししている。また、地域によっては、一部の事業者に対して、「期間限定の割引キャンペーン実施せよ」までと指導意見を出している。


2.「安全第一」

早期の復興を目指しながらも、コロナ第2波を防ぐために、観光事業者に対して、「抗疫指南」に基づいた運営統制を要請している。そのため、前述のように、「実名での事前予約」「入場率5割制限」 「健康コードの義務化」など徹底している。

※健康コードとはスマホ画面上で表示するQRコードで、持ち主の新型コロナウイルスの感染リスクを示すものだ。新型コロナ対策が進む中で中国各地の様々な施設や公共交通機関で健康コードを確認することが当たり前になり、「デジタル通行手形」として機能している。(記事抜粋)

 また、施設によってはマスクないと入れないなど様々な安全措置が取っている。

3.「省内旅行推奨」

個人の移動制限(出張や親族訪問、観光など)が解除されたものの、旅行会社によるツアー企画と催行は、「省内旅行(同県内での観光)」までを推奨するということです。どんなものかというと、イメージとしては、東京にある旅行会社に、東京住民向けに、「東京雲取山日帰り登山ツアーや、上野博物館半日ガイドツアー」などの都内限定商品の提供を提唱している、という感じですね。

このように、少し矛盾しているかもしれないが、色々と考慮した上で政府が出した折衷案です。日本の自治体や地域事業者の皆さんにとっても参考になれるかと。

Q4. 旅行業界の企業は、いまどんな取り組みしているのか。

前述のように、5月現在、特定の交通事業者、宿泊事業者の回復が一番速く正常化しつつ、テーマパーク・レジャー施設業界はまだ5割まで程度と述べましたが、一方で、伝統的な旅行会社は、国内旅行も海外旅行も商品企画と販売がまだできない状況にあります。

1、どんな商品(WHAT)を販売しているのか

いくつのかの旅行会社経営者にヒアリングした内容を少し紹介します。いま現在では、業務全体5%~10%しか回復できていないのが実況だ。

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