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【読了】恐れながら社長マーケティングの本当の話をします。

著者:小霜和也氏

小霜さんの本、これで手にするのは4冊目なのだけれど、毎回のことながら経験に基づく具体的な事例やメソッド、知識の深さ、仕事に対する想いなど広告業界のみならず広義にクリエイティブに携わる人、携わりたい人にとって非常に価値のある一冊だと感じた。ちょいちょい挟まれる極めて個人的な三国志やアニメのマニアックなネタ、心の叫び?も読んでいて楽しいエッセンス。

■現場レベルの仕事でも持っておきたいマーケティングの視点

そもそもマーケティングとは……
「顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセス」
端的にいうと、「マーケティング=価値の創造」であって、
「生活者の中に商品やサービスへの価値を生み出すために、商品開発から販売現場まで設計・管理すること」

だそうで、なんとなくマーケティングという言葉のイメージが製品開発(マーケットインやプロダクトアウト)にあたってのプロセスだと捉えていただけに、実際の販売現場や統合的に管理することまで対象として捉える必要があり、それはつまり、製品のプロモーションをするにおいても抑えておかなければならないということ。プランナーの携わる領域で、プレゼン資料の冒頭で抑えておくべきものと考えがちになってしまっていたので、もっと俯瞰して考えよう。

■デジタル中心の広告はミドル・ファネルを常に考える
AIDMAやAISASといった言葉は一般的に使われているけれど、現代はAIDMA→AISASに変化したわけではなくて、共存していると捉えるのが良い。つい先日コンビニでヘルシア緑茶を買った時も、店頭でたまたま目に入って脂肪を燃焼する〜のCMを思い出して、(ダイエット中だからということも相まって)購入したわけで、シェアどころかサーチもしていなかった。ということでマスとネットが共存している中で、重要なのがミドル・ファネルになってくるよ、と本書は続く。

<図は載せられないので、文章の引用>
TVCMを企画してからWEBをどうするか、ではなく、ミドル・ファネルを先に企画して、その中の代表をTVCMにする。
トップ・ファネルの役割は「いかに広く認知してもらうか」:TVCM
ミドル・ファネルの役割は「いかに自分にとって価値があると理解してもらうか」:WEBCM
ボトム・ファネルの役割は「刈り取り」:リスティング、リタゲバナー

ミドル・ファネル(自分ごと化)から企画制作するうえでのポイント
①ターゲットのクラスターで分ける
②商品の差別性で分ける(機能的価値を訴求することと解釈)

デジタル中心の仕事柄、フル・ファネル(全てを網羅する領域)に食い込んで行くのはあまり現実的ではないけれど、案件によってはミドル・ファネルとボトム・ファネルの要点を抑えたコミュニケーションプランを設計し、適切なKPIの設定ができれば十分に効果が見込める施策にすることができるはず。そしてWEBCMに限らずWEBでなにかやるにあたってはコンテンツ×メディアの最適化を図ることを念頭に置いておく。どうしてもスポットで捉えてしまいがちだけれど、マーケティングの視点で大局観を絶えず持ち合わせよう。

■クリエイティブでいうところの付加価値とは何か

回り道コラム④より
クリエイティブはいくらでもサボれる仕事です。1つの企画を出すのに1分しかかけなかったとしても、「1週間かけた」と言われたらそれを信じるしかありません。「これでいいや」と思ったらそこで試合終了です。どこまで考えればいいかは自分で決めるしかなく、ゴールのテープもない。自分が納得できるかという戦いです。

これでいいや=試合終了というのは、仕事をするうえで広く言えることであるものの、クリエイティブはアウトプットからの逆算というのが、物量がなければできないわけで、プロとしての自覚を持つためにも強く意識しておこう。
言い出したらキリがないんだけど、どこを目指して自分が納得できるまで戦いを続けていくか、という視点が重要で、それが付加価値につながる。言われたこと(与件)に対してのコミットはもちろんだけれど、良い意味で期待を裏切るところまで昇華させたアウトプットを出せるかが大事。

■ミッション・ビジョン・バリューとカスタマーサクセス
自分のキャリア形成でも考えなければならないことなのだけれど、会社という組織に属することで、まずは与えられたミッションを全うする。OKRでも、MBOでも自分のミッションをすり合わせなければ始まらないかなぁ。
そして情勢に合わせて変化に対応しつつ、目指すべき場所を掲げるためにビジョンを掲げること。自分は中長期的にどうなっていたいか?ちゃんと言えるようする。
目指すべきビジョンへの到達、与えられたミッションを達成するための武器となるのがバリューになり、個人のキャリアでいうなればこれまでの経験やスキルがそれに当たる。
これら一連の会社としてのアイデンティティを動的に作ることがCI作業になる。

本書ではその後、ビジネスモデルの活路に触れていて、そこで登場するのがサブスクリプションモデルとそれを支えるCS(カスタマーサクセス)。ここでいうCSは顧客満足度ではなく、顧客の成功であることが大変重要。
サブスクリプションのモデルでロイヤルカスタマーを獲得するためには、顧客の成功へのコミット、エフォートレスな体験、社会課題の解決までが求められている。

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