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【読了】「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略

著者:佐々木 康裕氏

ずっと積読してしまっていて、やっと手を伸ばしてGW前に読むことができた1冊。NEWS PICKSが発行している書籍だけあって、既成概念のブレイクスルーから、本の装丁のような色鮮やかなD2Cの世界で「いま起きている」ブームのあらましが読める。きっとNEWS PICKS会員のひとは好きなはず。ぼくもそうだから……。

■D2C(Direct to Consumer)は決して単なる中抜きではない。
・顧客との関係性
・ものづくりのプロセス
・ブランディングのあり方
・プロダクトの売り方
において、これまでのビジネスモデルとは一線を画すパラダイムシフトが起きており、D2Cの定義と伝統的なブランドのちがいは以下のように説明されている。

■D2Cの定義
出発点:デジタルネイティブ
チャネル:直接販売、直接コミュニケーション
価格帯:安価
成長速度:指数関数的成長
提供価値:ライフスタイル(世界観)
ターゲット:ミレニアル世代以下
顧客の位置づけ:コミュニティであり仲間
■伝統的なブランド
出発点:メーカーとして誕生
チャネル:小売経由で間接販売、広告代理店経由で間接コミュニケーション
価格帯:中間コスト込みのため高い
成長速度:堅実な成長
提供価値:プロダクト(機能)
ターゲット:X世代以上
顧客の位置づけ:お客様

■「ものづくり屋」ではなく「テック企業」
D2Cの本題とは逸れるけれども、指数関数的な成長をしている流行りのユニコーン企業という括りで考えたときに、象徴的なエピソードがあった。
それは2018年の夏にウーバーイーツの配達員登録を行った際のこと。ウーバーイーツの配達員は雇用契約ではなく、自身が個人事業主として委託契約するのだけれども、フードデリバリーサービスではなくてテクノロジーの会社だよ、といった内容だった。テクノロジーでプラットフォームを提供する会社だから、サービスではなく、マッチングシステムを担う会社。とにもかくにもその時は時代の先端を走ってるのはテック企業なんだ!と思わされた。

さて、本題へ。
事例で取り上げられている主にアメリカのD2C企業は、テクノロジーの活用が半端ない。直接顧客のデータを取得することができるから、データサイエンティストがたくさんいて、高速でPDCAを回すことが可能になっている。世界観を売りにしているというのは抽象的な印象を与えるけれども、それを裏付けるデータに基づく分析があるのは言わずもがな。また、世界観を表現するにあたって、あらゆるデザインがその構成要素となっている。

■世界観を売るということ(プロダクト→世界観へ)

世界観とは「ユニークで心に刺さる、ブランドの見た目、語り口、振る舞い、佇まいについての基本方針とその実装」のこと。

ブランドのたとえ話でよくあるのが、ブランドは○○といえば△△で想起されるもの(△△)とされているけど、それと同じで△△たらしめる要素の集合が世界観をつくるのだと思う。アメリカのメガネ、スーツケース、マットレスなど多岐にわたる事例紹介の中にあった日本企業が目を引いた。

それが「北欧、暮らしの道具店」だ。
北欧デザインの生活雑貨や家具を扱うECなのだけれど、ブランドコンセプトを表現したドラマがあったり(なんと映画化まで!)、社員がポッドキャスト配信していたり、いろんな読み物コンテンツがあったりしてとにかく世界観を発信しまくっている。映像で効率よく情報とイメージを伝達できるのと、ポッドキャストによる圧倒的な距離感の近さ。

■D2Cのフレームワーク

<スマートフォン時代の4A>
認知→態度→行動→再行動

<コトラー氏が提唱した5A>
認知→訴求→調査→行動→推奨

<4Pから4Eへ>
Product → Experience(体験)
Price → Exchange(交換)
Promotion → Evangelism(伝道)
Place → Every Place(あらゆる場所)

顧客との関係性が変わったことで、4Aはいかにロイヤルカスタマーとして継続的に購入してもらうかが重要な指標だったけれど、5Aでは推奨してもらうことの重要性を説いている。4EでいえばPromotion→Evangelism(伝道)がそれにあたる。
また、顧客との関係性の変化のひとつに、インターネットが登場したことで情報の主語が企業から顧客になったことも挙げられる。今では当たり前のように価格コムで比較し、Amazonのレビューをチェックして購入の判断を下すが、企業発信の情報が主語ではなくなって、顧客の声が集合体となって購買判断に影響を及ぼしている。

■ビジネスモデルのカタチ(D2Cの3類型)
締めくくりにD2Cの類型を整理してみる。

1.売り切り型
 製造原価を上回り、一定の粗利を確保する金額で販売。
2.サブスクリプション型
 一定の顧客コスト(CPA)をかけた後にサブスクリプションで長期間にわたって回収。解約率を低く抑え、LTVの最大化を図ることが重要。長期間にわたってキャッシュ・ネガティブになる傾向あり。
3.SaaS+a Box型
 一定の顧客獲得コスト(CPA)をかけた後、ハードウェア販売で一気にキャッシュ・ポジティブに。その後もサブスクリプションで長期間にわたって課金を継続。ハードウェアと併用すると解約率が低く収まる傾向。

ここでの注目はSaaS+a Box型で事業展開しているPeloton。オンラインエクササイズのデバイスが搭載されたエアロバイクを購入して、その後はサブスクリプションで月々のエクササイズ会員契約がつづくといった仕組みで個人的にとても興味深い。

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