潜在能力の鍛え方
大谷翔平のワールドシリーズ優勝の夢が叶った。そして優勝に酔いしれる中で直ぐに、チームメイトに対し、「あと9回やってやろうぜ!」と語ったそうだ。大谷翔平と言えば、10代の頃に書いた「人生設計ノート」に、ワールドシリーズ制覇は3度と書いていたから、後2回でも目標を達成するところだが、さらに大きな目標を掲げたところが面白い。この桁違いの目標を掲げることが、潜在能力を発揮するコツだそうだ。脳科学者として、日本のスポーツ界に数々の影響を与えた林成之教授によると、潜在能力を発揮する二大ポイントは、『普通、人間は桁違いのチャレンジをしようとしません。むしろ、難しいこと、面倒なことはできるだけ避けて、なんとかやり過ごしたいと考えます。これには脳科学的な理由があります。つまり、人間には自己保存の本能があり、自分を守るために目標を小さくしがちなのです。言い換えれば、失敗するのが嫌なので大きな目標をつくろうとしないのです。しかし、小さな目標ばかりを追いかけて成功しても、人並み以上の潜在能力は育ちません。
潜在能力を伸ばすには、二つの大きなポイントがあります。一つ目は今言った「桁違いの大きな目標を立てる」ことで、二つ目はそれを実現する「驚きの技術」を考えることです。誰もできないだろうと思うようなことを目標にし、誰も考えないような手法で達成していくことによって、桁違いの潜在能力が開花するのです。
ところが、普通は一つ目の桁違いの目標すら立てられません。失敗を恐れ、目の前の損得ばかり考えるので、大きな目標にまで考えが及ばないのです。ましてや、それを可能にする驚きの技術を考えることなど皆無だと思います。チャレンジする前から「そんなものはつくれるはずがない」と諦めてしまっているからです』(致知出版社発行、林成之著、運を強くする潜在能力の鍛え方より)
本文の中には、色々な「驚きの技術」が紹介されている。まず大谷翔平でいえば、理論的なスイングを作るために、バットを振る反対方向に右膝を入れて、ボールを打ちにくくしている。このように最初に構えてバットの初速が速くなって、腰でボールを打つことになっている。体軸が前に傾かないので、ホームランを打ちやすい「身切り」のスイングになっているそうだ。
2011年開催のサッカー女子ワールドカップで優勝した佐々木則夫監督には、大会に入る直前に相談を受けたので、「合宿などで話をするときには、必ず『そうだね』と言ってから話すといいですよ」、と教えてあげたそうだ。この「そうだね」は、お互いを肯定する言葉で、このような言葉は相手の脳に入りやすい。そして相手の脳に入るから、気持ちが一体化して、その後の話も聞きやすくなる。このことで、なでしこジャパンは、ボールを持ったら仲間がいないところへ迷わず蹴る、という常識破りのパス回しができたそうだ。女子カーリングチームにも同じことを教えてあげたそうだ。「そだねー」は、2018年の流行語大賞にもなった。
もう一つ注目したい脳の特徴があり、それを教えたのが、競泳の北島康介選手や、卓球の石川佳純選手や、テニスの錦織圭選手だそうだ。
それは「同期発火」だ。自分の脳が相手の発する情報に反応してシンクロするときに起こる。
試合の前には相手がどんなに強くても「今日は自分の日だ」と思いなさい。勝負になったら「勝つと思った方が勝つ」、逆に「勝てるかどうかわからない」と考えて闘っていたら確実に負ける、ということだそうだ。
我々も、大きな目標を立て、潜在能力を活かすべきことが分かる。確かに「桁違いの目標」を立てたら、「驚きの技術」が生まれそうだ。
税理士・中小企業診断士 安部春之