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三菱電機の中期経営計画の紐解き3

前回はこちら。

三菱電機の中期経営計画はこちら。

続きを書いていきます。


P7)3. 業績見通し(セグメント別)

解説
前回の続きですね。今度はセグメント別の数字です。あ〜めんどくさいと言いたくなりませんか?僕は思います。P2を見てみましょう。ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティの4分野に注力するとありますね。会計上はきれいに4つにはわかれないとうことです。セグメント別というもう少し具体的な分かれ方をしていますね。


P8)4. もう一段高いレベルの成長
2019年度は、家庭電器における欧州・米国等での投資成果の刈取りや、重電システムにおけるプロジェクト管理強化他による収益性改善等は進捗したものの、需要回復の遅れ等で産業メカトロニクスは売上・利益とも当初想定を下回る状況。2020年度以降の成長持続と収益力強化に向けて引き続き取り組む。

解説
前ページの続きが書かれています。産業メカトロニクス部門は利益率13%目標となっていますね。利益がある程度取れる事業体のようです。ここの需要回復が遅れているとなると、売上の総額を他の事業体でカバーできたとしても、利益のリカバリーが難しいのが辛いところですね。そんなことが読み取れればOKだと思います。


P9)4. もう一段高いレベルの成長
2020年度以降の成長持続に向け、投資成果を最大化する

解説
今度はどんなことに投資をしたかが書かれています。言葉の説明をしていきます。

HVDC(高電圧直流送電)

こちらの資料に詳細がありました。直流で電気を送るのは欧州や中国で特に需要があるようでして、シーメンスやGE(要は三菱電機の競合)が取り組んでいるようです。ざっくりいうと、風力発電みたいのがどんどん普及するのはいいだけど、発電場所がへんぴなところなので使いたい場所まで遠いという課題があるようです。特にヨーロッパではこれが顕著なようです。それで、直流での送電は送電のロスが少なく長距離での送電に有利なので、注力事業となっているわけですね。

粒子線治療システム事業譲渡
医療システムですね。非注力案件なのでやめたわけです。選択と集中をしているということです。

昇降機
知っている人はわかると思いますが、念のため。エレベーターのことです。

ZEB
これもトレンドワードです。Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略です。あまりに長くなるので自力で調べてください。簡単にいうとすごく省エネしていて、事実上エネルギーの使用がゼロのビルです。

空調冷熱
エアコンのことですね。自宅用のルームエアコン以外のことも指す言葉です。冷熱という言い方は産業用の空調(商業施設などにある空調)も含んだニュアンスだということを表現してます。

 DMP社

自動車の位置精度やマッピングの会社です。

Ingersoll Rand社
北米での空調工事や省エネソリューションを得意とする会社です。例えば高層ビルの空調を行うと思うと、空調機器を設置する数や工事の工数もたくさん必要です。省エネをしようと思うとかなり高度なノウハウも必要になります。要するに空調機器の単品売りだけではなかなか差別化できないので、一般的に使われる言葉としては設置まで行うエンジニアリング、そしてソフト系の付加価値としてソリューションを提案するためにこういう会社を買収するのはよくある事例です。

特にある国を攻略したい場合は、以前からその国に根付いている会社を買取り現地のニーズに合った製品づくり〜エンジニアリング〜ソリューションを一体化して売り込んでいきます。

FA
ファクトリーオートメーションの略です。工場の自動化ですね。アームのロボットとかを工場に入れて無人で物を生産するようなイメージです。

Realtime Robotics社
モーション・プランニング技術の開発を行うスタートアップ企業と書かれています。モーション・プランニング技術ってわかりますかね。

一般的にFAは、人がやってきた作業をロボットに置き換えます。ロボットにはアームとコントローラの2つに機能が分かれます。アームの部分が人の手、コントローラーが人の目や脳の部分のイメージです。

人に作業をして欲しいことを教える場合、言葉と実際にやって見せて教えますね。「このAの箱に入っているネジをBの箱に移してください」と、実際にやりながら教えるわけです。従来、アームに教える場合にはこのコントローラー部分にかなり詳しく動作を教えてあげる必要がありました(プログラミングやティーチングと呼びます)。AからBに移動させるという場合、他に人がいたら避けることとか、ぶつかりそうなものがあったらどかしてから移動することとか、人間なら当たり前に想定してくれることを機械は想定しません。なので、そういういろんな条件をプログラミングする必要がありました。

このモーション・プランニングは人間に教える感覚に近い状態で、アームロボットに覚えさえせることができるコントローラーのことを言います。AからBに移動する、とだけ教えればAIなどの技術によって、周囲の状況をロボット自身が把握して人に教えるのに近いような理解をしてくれるわけです。

三菱電機はこのアームの部分は得意でしたし、従来のプログラミングやティーチングは別に他社と変わらないレベルにあったと思います。しかし、こうした新しいコントローラーの会社が業界をディスラプトしてこないように、早めに手を打ってるわけです。アームの業界を守るためコントローラー技術も抱える戦略です。

これも日本メーカーではよくある戦略です。ハードは得意だけど、新興企業の新しいソフトが脅威になりそうな状態。脅威になるソフト側はスピードの速いスタートアップを取り込んで対処するわけです。

ICONICS社
アメリカの製造現場のシステム監視とプロセス制御を行う会社です。SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition、シーケンサ等のFA機器との組合せでプラント等の監視制御やデータ収集を実現するSW)メーカーとあります。

シーケンサは三菱はトップシェアの製品で、工場のロボットや機械を制御する機器のことを言います。先程のAからBに移動するときにどれくらいの距離にどれくらいのスピードで動かす・・みたいな細かい制御をするための産業用のコンピューターみたいなイメージです。SWはスイッチです。

ASTES4社
板金レーザー加工自動仕分け装置メーカーとありますね。板金レーザー加工装置自体は三菱が得意な製品です。その後の工程を自動化する装置を作っている会社を買ったわけです。

これもよくある買収のパターンですね。自社製品の前後に使われる部分の会社を買い、トータルでの提案力を上げていくということです。且つ、自動化する会社ということですからソフト的な要素もやっぱり絡んでくる部分です。

サーボ
これまた超絶大雑把にいうと、正確に動かす仕組み、ということです。サーボモーターなんて言葉がよく出てきます。これは正確に動かせるモーターというイメージです。例えば、工場でAからBまで動かすようプログラミングしたとしても、モーターの精度がいい加減だと、Bより先まで行ってしまう、Bの手前で止まってしまうということがおきえます。このあたりを正確に数値として制御できるのがサーボという仕組みです。アームロボットをやってるような三菱にとっては大切なベース技術です。

Akribis Systems社
リニアステージ等を製造するFA機器メーカーとあります。リニアステージはロボット側ではなく、下を流れるベルトコンベア側のイメージです。シャーといってシャーと帰ってきたりするやつです(説明雑すぎますね)。

これもFA機器のラインナップ拡充のために行われたものと思われます。

1枚のスライドで一回分を超えちゃいました。続きは次回です。

この1枚の資料だけでも大切な情報がぎっしり詰まっているということだけでも理解してもらえたらと思います。

傾向は読み取れましたでしょうか?国内投資はみごとにハードに関するものが多いですね。国内の元々自社にあるハードの技術をさらに磨きをかけていくということです。そして、海外はどうでしょうか?ソフト系の会社を買ったり投資しています。スピード感を大切にしながらソフトが脅威にならないようにしているわけですね。典型的な日本メーカーの投資の仕方と考えられます。

今回は長くなっちゃいましたね。

ということで、また。

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