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VPPとは何か(1)「これまでの電力」

今回はバーチャルパワープラント(略してVPP。仮想発電所のこと)についてやっていこうと思います。まずは最新の記事から。

テスラがエアコン事業にも参入するそうです。なかなか衝撃的なニュースですが、VPPを学ぶとEVとエアコンの接点が何となく見えてきますので、また後半で解説します。

それ以外にも以下のような記事が出ていました。にわかにVPPの動きが加速してきているように感じます。

国内では東芝が再生ネルギーやVPPの事業強化を推し進めています。これらの動きはいったいなんなのでしょうか?

なんとくなく皆さんもVPPという言葉自体は聞いたことがあるかもしれません。

僕も言葉を聞いたことはあり何となくの中身も知ってはいますが、ここらできちんと整理をしようと思っていました。ところが、ザクッとシンプルに整理されている本もあまり見つけられなかったので、自分なりに整理を行いたいと思います。

そもそもVPPとは何か?その前にこれまではどうなってるか?

まずは、これまでの電力事情を整理しないといけません。いきなりVPPから入るとパニックになります(僕がそうでした・・・)。

まず現在の電力事情についてザクっと理解する必要があることをまとめます。

①まず電気は「作る」「送る」「売る」「使う」の4つに分類される。

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■覚えておきたい用語と概要
「作る」ことを発電と言います。「送る」ことを送電と言います。「売る」は小売電気事業者と呼びます。私たちが電力料金を支払っている会社です。「使う」量のことを需要と呼び、「使う」人や会社のことを需要家と呼びます。なお需要の反対、つまり電気を渡すことは供給と言います。


②電気は基本的に貯められない前提で仕組みが作られている(いた)。

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■覚えておきたい用語と概要
電気は貯められませんでした。なので、「作る」と「使う」の位置が遠い場合、「送る」距離も当然ながら長くなります。そのため送電ロス(送電中に発電した量100%では届かないこと)が、どうしても発生してしまいます。もったいないですがしかたありません。

それと供給と需要のバランスがぴったりでないと大変です。供給量が多すぎてはもったいないし、供給量が少ないと電気が行き渡りません。このバランスが崩れた差分のことをインバランスと呼びます。インバランスを抑制するために、電力会社はバランシンググループ(BG)と呼ぶグループを作っています。このグループ内で各電力会社はそれぞれ事前計画を作成します。(これくらいあれば足りるはずだからこれくら発電します・・・という計画書です)。この事業計画と実績に差が出ないようにグループ内でチェックさせてきました。差分が多い会社はグループにペナルティを払う仕組みです。

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このインバランスのチェックですが、実際にチェックをやっているのは「送る」の事業をやっている人たちです。一般送配電事業者と呼びます。一般送配電事業者は発電所の発電計画量および需要家の需要計画、またそれぞれの実績を突き合わせて、差分がないかをチェックしています。


③「作る」方法は大きな発電所と小さい再生エネルギー発電の2つの方法。

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■覚えておきたい用語と概要
従来の大手電力会社がやってきた大規模な発電所(火力・水力・原子力など)のことを大規模電源と呼びます。この大規模電源は専門用語として電源Iと呼びます。従来我々が想像する電力であり、電力のベースになる部分です。

そして、再生可能エネルギーを使用した中規模〜小規模の発電方法を分散型電源と呼ぶことがあります。


④「送る」電線のメンテナンスが必要でメンテ費は大手電力会社が負担してきた

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■覚えておきたい用語と概要
これまでの大手電力会社は「発電」「送電」「売電(小売電気事業者)」という全ての要素を一手に担ってきました。当然ながら送電網のメンテも電力会社が行ってきたのです。


⑤「使う」人たちの使いたいタイミングが同じで、使う量の増減が激しい。

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■覚えておきたい用語と概要
例えば、夏場のお昼の時間は誰しもが冷房をいれたいはずです。冬場の夜は暖房を入れている人が多いです。一方で春の日中は特にエアコンをつけない場合も多いですね。このように需要は大体同じタイミングでやってきます。
電力を行き渡らせるには、この需要量がピークになる時の総量を発電できるキャパを持っておく必要がありました。そしてこうした需要と供給の量が変化する中で、丁度よく受給をバランスさせることをデマンドレスポンス(DR)と言います。


⑥「作る」「送る」の組み合わせで日本全国の「使う」をバランスする仕組み。

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■覚えておきたい用語と解説
東日本は電力の周波数が50Hzで、西日本が60Hzです。周波数がよくわからない人もとりあえず二種類の電力があって、東と西で違うモノだと思ってください。こうした違いがあったり、エリアごとに電力会社が管轄する仕組みであったので、基本的にはエリア内は所管する電力会社が電力を自前で賄います。
しかし、実際には過不足分を融通するため、周波数を変更する設備などを使いながら別のエリアに電力を供給したりします。これを系統連携とよびます。同一エリア内が1系統というイメージです。別々の系統が連携すると系統連携と呼びます。


いかがでしたでしょうか?VPPに入れませんでしたが今日はここまでです。今回はこれまでの電力システムをざっくり解説しました。次回からVPPを理解するための直近の電力事情の動向をさらに詳しく見ていきます。

ということでまた。


*昇格試験シリーズの続編は、本シリーズ終了後に再開します。

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