見出し画像

三菱電機の中期経営計画の紐解き6

前回の記事はこちら。


三菱電機の中期経営計画はこちら。


続きを書いていきます。

P13)5. 成長牽引事業群 交通システム事業
「走る」「止まる」「制御する」を1社で実現できる製品・システム群 の強みを活かした、鉄道システムの効率性・安全性の向上

解説なし。

P13)5. 成長牽引事業群 交通システム事業
鉄道車両のエネルギー効率とブレーキ時の 回生電力量の向上と有効活用
■無線技術を応用した列車制御(CBTC)による 安全・効率的な列車運行
■車両電機品のライフサイクル全体の管理による
各機器の稼働率向上への貢献
・運転士と指令所間で、列車の運行情報や機器の稼働状態を 見える化し、故障対応の迅速化を実現するシステムを市場投入 ・現地拠点を活用した更新・保守・アフターサービス事業の展開

解説
比較的イメージしやすいのではないでしょうか?CBTCだけ解説しておきます。

無線で電車を制御するシステムです。なんか今時はそんなの当たり前そうなイメージですが違うのです。旧来の鉄道システムは区間で分けているイメージです。先頭を行く電車がある区間で緊急停止すると、後ろを走る電車はその区間の手前の区間で停止させる、といったイメージです。要するに大雑把な区割りで電車の運行システムは管理されているのです。CBTCは電車から無線が飛んでいてお互いの距離が分かり合えます。なので、先頭の電車が止まった場合、後続の電車は先頭の電車から一定距離手前で止まります。区間に制約はされません。なので刻々と変化する鉄道のダイヤや運行管理において、より細かに柔軟に対応ができるということです。

なお、交通システム事業の事業規模は2000億円くらい。国内の割合が結構高いですね。

P14)5. 成長牽引事業群  ビルシステム事業
安全性と信頼性の高い製品力・フィールド技術力による新設〜保守〜リニューアルまでのトータルサポート
■豊富な実績に基づく安全性・信頼性の提供、 各製品の小型・軽量化による省エネ性の実現
■ビル全体の省エネと運用コストの低減 ・ZEBの設計支援から運用開始後の省エネ支援サービスまでをワンストップで提供し、ビルの付加価値向上をサポート
■リニューアル時のエレベーター停止時間最小化 ・工事期間中のエレベーター連続休止期間のゼロ日化を実現 するリニューアル新商品を提供(対象:約9万台:2020年度)
■プレミアムな保守サービスの提供

解説
部分的に解説していきますね。

ZEBの設計支援から運用開始後の省エネ支援サービスまでをワンストップで提供し、ビルの付加価値向上をサポート

さらっと書いてますが、さすが三菱電機という感じです。

メーカーというのはその名の通り製品を売りたい会社です。それ以外は本当は責任を負いたくありません。つまり使い方とかあれこれ説明したくないのです。ラジコンをイメージしてください。私がモーターだけを売っている会社だとすると、お客であるラジコン会社には、「単三電池を使ってください」としか、言いたくないのです。これを「単二は使えますか?」「単二だと効率落ちますか?」といった質問が来る場合、「壊れることはないけど、あとはそちらで検証してね」と言いたいのです。つまりラジコン全体の設計については関与したがらないのが一般的です。

なので、ZEBという分野では、例えば三菱電気として照明器具を売りたいとは思いますが、設計の支援なんか本来はしたくないのです。それは上記の通りビルの設計全体の責任を負いたくないのです。メーカーなので、ビル設計全体のノウハウや知識や人的リソースが足りないことがあるからです。しかし、三菱電機はそこをしっかり設計からカバーすると言っており、実現すれば顧客にとって利便性は高まります。

リニューアル時のエレベーター停止時間最小化 ・工事期間中のエレベーター連続休止期間のゼロ日化を実現 するリニューアル新商品を提供(対象:約9万台:2020年度)

この文言の魅力的な部分は「約9万台」ですね。リニューアル用商品を提供するとあり、そして対象台数がわかっているという話。これ、当たり前のように思うかもしれませんが、当たり前ではありません。

リニューアルはアフターサービスと地続きです。新規で納入して、アフターサービスして、限界がきたらリニューアル、という流れです。だから過去の納入数や納入場所をきちんと把握してアフターサービスが継続されていれば、対象台数が今回のように明確にできます。

新製品ではこうはいきません。目標台数は掲げますが本当に達成できるかは誰にもわかりません。しかし、現在三菱電機のエレベーターを使用して、アフターサービスも受けていたとしたら、リニューアル時も三菱電機になりやすいのはわかるかと思います。こうやって9万台と読める事業はメーカー的には堅実でうらやましい。

刹那的に新製品ばかり売っていて、アフターサービスもせず放っておくと、このリニューアルを取りこぼすのです。

今日はここまでです。

ということで、また。


現在サポートは受け付けておりません。