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メーカーはどんなSaaSを欲しているか(1)

今日は、メーカーが望んでいるSaaSについての考えを説明します。

Enterpriseに所属する僕らはSaaSユーザーの一つです。

ぶっちゃけて言えば自分たちのバーゲニングパワーをどう使うか?SaaS提供会社の中からどういったところと組めるのか?そういうことが重要な観点だと思っています。

なお、本記事について、「PaaS、IaaSの領域でやるべき!」とか「SIerとの絡みも考えたら?」と言われれば、「確かにそうなんだけどさ」・・です(会社システムを変えれるだけの権限と技量があれば最初から苦労はしないのです)。

新ポートフォリオ

さて、まず僕たちもSaaS提供会社さん(以下ソフト会社)や業界のことを理解しないといけません。もっと言うと、彼らの身になって考えてみないといけません。と言うことで、SaaSを提供するつもりでポートフォリオのマトリクスを作成!

ばくっと説明まします。

まず大前提として、どんな会社も収益を最大化することは重要な経営課題です。社会課題を解決するという大義や、いつ収益化するかも重要ですが、一旦置いておいて、最終的に収益を最大化するということをここでは至上命題とします。

その時の公式はこうです。

[ 高単価 ] × [ 沢山の販売量 ]  = 『 収益最大化 』

高い値段のものが沢山売れれば、沢山の利益を生み出すという単純な式です。さてこの式を表に落とし込みます。

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表1

表1では、縦軸に単価、横軸に販売量を取りました。

ここで2つの拡大解釈をしておきます。単価が高い=利益率も高い(可能性が高い)としておきます。それと、単価が高い=複雑さも高い=高機能やカスタマイズ化、としておきます(*そうならない場合もあるかもしれませんが、今回は上記を前提とします)。

そしてこの表を斜めに割ります。オレンジがSMBです。つまり中小企業や個人事業主(以下、中小企業)といったイメージです。では、上の紫は何か?

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表2

表2に書きました。

お察しの通り、紫がEnterpriseです。つまりいわゆる大企業のイメージです。

今回のポイントはこの斜めの線ですが・・・

この斜めの線はSaaS提供する側の目線です。SaaSをどのユーザー向けに売っていくかを分割したものです。この表の肝となる部分です。でも、あとで詳しく説明します。先に表の概要を説明してしまいますね。

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表3

表3をご覧ください。

左下のグレーの部分は「手を出さない領域」です。単価も安いし、販売量も少ないので事業として成り立ちにくい領域です。そして・・・

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表4

表4です。

右上が収益最大化の領域です。単価も高いし販売量もある。文句なしの領域です。

今のBtoB SaaS市場

おそらく王道はオレンジSMB領域から入っていくのだと推測しています。特にスタートアップの会社さんの場合はその方向にあると分析します。その理由、というかストーリーはこうだと思います。

資本が少ない段階では機能を沢山は詰め込めない。

まずはアジャイル開発で最低限の機能を載せてローンチ。

機能が少ないがその分単価も安いのでSMBユーザー増大。

ユーザーからインサイトを得る。反映して機能を拡張。

ユーザーが喜ぶ

その分だけ単価を高くする、又は有料オプション化。

収益最大化!

典型的なアジャイル開発の成功例はこのようなストーリだと思います。これはBtoCでは事例が多くあると思います。そして、BtoBならSMBに転用しやすいストーリーです。表に落とし込むと以下の通りです。

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表5

表5の右側オレンジ矢印が成功のルートです。SMBユーザーを沢山集めることから始まり、その後、機能拡張で単価を上げる。これがソフトウェア開発の王道かもしれません。ただし・・・ここで僕は思うのです。「もう1本別のルートがあるじゃん」と。

Enterpriseでの収益最大化のルートは・・・?

そうです、Enterpriseでの収益最大化のルートです。

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表6

表6にはEnterprise向けサービスでの収益最大化ルートを示しています。左上から右にまっすぐ伸びるルートです。最初から単価は高いのですが販売量は少ないです。確かに、この領域の収益最大化の話が世の中に沢山転がっているのかどうか微妙です。このルートを採用しずらい問題点は、以下の通りだと考えています。

ズバリEnterpriseとの様々な違い、に起因していると想像しております。ソフト会社(特にスタートアップ会社)との違いは以下です(*以下の表は、上が「ソフト会社」 / 下が「Enterprise」)。 

1)パートナーシップ選択肢としての違い
 大手と組んだら一蓮托生になる
 相手は選択肢の一つで比較案や代替案が可能
2)考え方の違い
 アジャイルや一定のリスクテイク
 品質基準・社内規約・契約形態などが複雑
3)資源の違い(時間と資金の違い)
 投資回収が遅れるのでペースが合わない
 人・金・時間があり判断は慎重
4)目標の違い
 転用して販売量増大につなげたい
 独自カスタマイズで自社最適化優先

巨大SaaSの動き

例えば巨大なマーケットシェアや資本力を背景にできる巨大SaaSだと、このEnterpriseの領域も狙うでしょうし収益化するまでに辛抱することも可能かもしれません。巨大SaaSであれば様々な交渉余地も生まれます。一生懸命カスタマイズするもよし、「業界スタンダードは我々だ」と主張してある程度の内容Enterprise側に呑ませることもできるかもしれません。

まぁ、この辺りは、働き方改革リーダーなのかイノベーションなんちゃら室なのか、わかりませんが、だいたいどこぞのEnterpriseさんでも取り組みがなされてるかと考えてます。

本題ですが

ディスラプターを目指す僕としては、もう少し野心的な観点が好きです。

・例えばSMB向けの成長限界により事業見直しが必要な会社

・いきなりEnterpriseでもドーンと来いというタフな会社

この辺りを継続して調査していく予定です。というか調査をしてるんですが、またいろんな分類が出てくるんです〜。次回では、そのあたりのさらに細かな分類を考えたいと思います。

ということで、また。

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