[読了]テレーズ・デスケルヴ

つい先日、モーリヤックの著書「テレーズ・デスケルヴ」を読み終わった。実は私はこの手の女性特有の苦悩を綴った作品が得意ではない。ではなぜこの本を手に入れたのかというと、授業の課題本だったからだ。その授業が始まるまではこの本に興味もなかったし、存在すら知らなかった。その授業では皆で輪読して、授業毎に感想を述べるというもので、今までそういうことをしたことがなかった私にとってはとても新鮮だった。今でも覚えているのは、テレーズが現代に生きていたらもう少し苦悩せず生きられたのではないか、とリアクションペーパーにコメントしたところ、いやそうではない、テレーズの孤独はそこにあるのではないと反論が返ってきたことだ。結構驚いたので覚えている。
そんなことはさておき、本の感想を述べたいと思う。実はその授業は2年前くらいで、約2年もの間読みかけで積読し、熟成していたため、結構思いは詰まっている。まず、田舎って怖いということ。都会に慣れている自分にとって、通りかかる人全てが知り合いで、行動を監視されている社会は恐怖だ。都会に住んでいると人が多くて疲れるなあとばかり思っていたので、都会に住めば隠れられるという考えは一切なかった。精神が疲弊すると自然に帰りたい…緑あふれる場所へ隠居したい…という思考によく至ってしまうのだが、世界はそう甘くないのだなと実感した。
あと男と女の思考の対比が怖いくらいリアルだ。テレーズの夫のベルナールは単純で自己の利益ばかり追求して仕事に奔走し他人を思いやらない。一方テレーズは賢いが孤独で家に篭りがちで夫に理解を求めるものの、繊細さを理解されず、極端な行動に走りがちだ。そして他人の気持ちを推しはかりすぎる。合理化する男と繊細で共感を求める女、このすれ違いが読み進めるにつれエスカレートしていき、背筋がぞくっと冷える思いがした。結婚といと魂を分かり合える人ができたという救いのようなものがある種存在するように思えていたが、結婚は墓場という言葉はマジなのかもしれない…と思ってちょっと悲しくなった。好き=結婚とか安易に思うもんじゃないですね…。
あと思ったのが、言葉遣いがとても美しい。遠藤周作の役だったので、結構誤訳はあるものの、詩的な言葉が多い。例えばテレーズが自殺を試みる場面で「この光をどうして諦められよう」という一文がある。この一文を読んだ時、美しい…!と感動した。またテレーズの発言で「無駄だった私の人生、空虚だった私の人生、果てしなく孤独だったし、運命には出口がなかった!」運命には出口がなかった…!?初めて聞いた…そんなことあるんだ…と衝撃だった。運命って出口みたいな勝手に導かれるものというイメージだったので、自分で作り上げてしまう運命もあるのだなと、捉え方の違いに驚いた。また「苦しみが自分の関心ごとになりー驚いたことにはー彼女のこの世の生きる支えになっていたからである」この文を見てめちゃくちゃ共感した。いや、バッドエンド好き内向人間あるある!苦しいけどそれが糧でアイデンティティになってるやつね!と心の中で深くうなづいたものである。
他にも色々あるけど感想をあげ出すとキリがないのでここまでにしておく。結構読んでると暗くなる感じはあるが、名著だし、読んで後悔のない本なのでオススメ。ぜひ読んでみてください。