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「75年目の初対面」

***この記事は、aba代表の宇井が個人的に書き綴っていたものを加筆修正し転記したものです。***


初任者研修時代に、講師の方々の現場体験をいくつか伺った。

今日はその中から、衝撃的だった話を紹介したい。

「訪問介護でお会いした、75年歳のAさん。

彼女にとって、私は初めて見た他人でした。

彼女は、75年間、家族以外の人間を見た事がなかったのです。

小児まひを持って生まれたAさんは、生まれてからずっと、家族に介護されながら生きてこられていました。

母親が生きているときは母親に、母親がいなくなってからは兄弟に介護されながら。

その兄弟たちも、80歳近くなり老老介護となったため、私はAさん宅に訪問することとなりました。

目をぱちくりとし、舐め回すように私を見ていました。

学校にも行かず、生きてきたこれまでずっと、この家から出た事はなかったのだから。

Aさんが生まれたのは、障害者が生まれたら、隠すのが当たり前だった時代。

未だ法整備は完了していないが、窓から外をみることしかできない一生にはさせまいと、心底誓いました。」

今、こうやって文章を書いていても鳥肌が立つ。

75年という間、自分以外の人間は家族しか出会ったことがなく、

あとはテレビやラジオごしに他人と接する日々。

75歳の初対面は、彼女の世界をカラフルにしたに違いない。

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