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「ほめる」について考えた -主にほめる側の視点で

先日(2022年7月23日)、ダイナミクス・オブ・ダイアログ主催のオンライン哲学対話「ほめるってどういうこと?」に参加しました。参加後にいろいろ考えたことをまとめます。

「ほめる」の定義

いろいろ話を伺って、私は「ほめる」とは「感情をもって相手を良く評価する」ことかなと思いました。
「ほめる」は、いちばん重要な点は「評価する」ことかと思います。ただし単なる評価でなく「良く評価する」、しかも「感情をもって」評価する。

対義語として「けなす」という言葉がありますが、これは「悪く評価する」にあたると思います。「けなす」というと、ただ「悪く評価する」のではなく、どこか悪意をもち「だからお前はダメなんだ」と言われているような気がしませんか。それを裏返したのが「ほめる」であって、単に冷静に「よかった」「高評価」と言うのではなく、「すごいッ!」「よかったよ~」といった感情を含んだのが「ほめる」ことだと思います。

また、立派な建物を見て「いやぁすごい建物ですねえ」とほめた場合、それは建物自体にほめているのでなく、その所有者などの人(相手)に対してほめていますよね。だから人に対して(相手に対して)することも「ほめる」の定義の一部かなと思います。
というと「愛犬をほめる とか よく育った樹木をほめる とかいうこともあるので、人に限らないのでは?」と言われそうですが、それはモノや生物を擬人化して言っているに過ぎず、あくまで相手は人だと考えてよいのではないでしょうか。
「でも よい景色だねえ って言うよ?」確かに。でもほめているわけではないですよね。

上から目線の「ほめる」

定義を確認しましたので、具体的に「ほめる」を考えてみましょう。

まず、「上から目線」でほめるのと、大谷選手のように(「下から目線」で)ほめるのとはどう違うのでしょう。「上から目線」でほめると相手を不快にさせてしまうから下からが望ましい、と言えるでしょうか。
私は「上から」「下から」はあまり関係ないかと思います。

「上から目線でほめる」の例として、昔ながらの典型的な父親が子どもに対して「よくやった」などという場合がありますね。一方で、やはり昔ながらの典型的な母親が「よくやったねぇ」という場合と比べると、同じ上から目線でも印象は異なるのではないでしょうか。
こう考えると、「上から」というよりむしろ評価の高い低いで変わってくるように思います。
「いや、母親は子どもの目線に合わせているから「上から目線」ではないんだ」と言われるかもしれません。そうかもしれませんが、私は「上から」「下から」よりも評価の高低で考える方がよいのではと考えます。

大谷選手の場合でも、ほとんどの人は尊敬を込めて「すごいねぇ」とため息交じりにほめるかと思いますが、野球に全く関心のない私にとっては、何がすごいのか説明されてもわからないと思います。そんな私がほめたところで感情すらこもらないでしょう。「下から」ならよいとは一概にいえません。

ところで「上から」「下から」ではなく「横から目線でほめる」は可能でしょうか。
結論をいうと可能で、いわゆる「ライバル」がそうかなと思います。同等の相手でも「敵ながらあっぱれ!」という場合と「その程度か」という場合とで「ほめる」も変わるかと思います。

このように、「ほめる」において「上から」「下から」「横から」は関係なく、評価の高低、即ちすごくほめるかちょっとだけほめるかの違い、といえるのではないでしょうか。

「けなす」ことができない

次に、ワークショップなどで「ほめる」ことばかりをやっていると今度は「けなす」ことができなくなったのはなぜだろう、という話がありました。私は経験こそありませんが、想像はできます。いったいなぜでしょう。

考えましたが、「けなす」ことができなくなるということは、「ほめる」ことができなくなるのと同じではないかと思いました。
仕事で余裕がなくなってイライラしているとき、「自分はこんなに頑張っているのに誰もわかってくれない」と思ったことはないでしょうか。自分があらゆる面で被害者だと感じるときには、人をほめることなんてできないと思います。その逆に、自分より皆の方が優れてみえる、自分は常に劣等者だと感じるときには、人をけなすなんてできない、イコールほめることしかできなくなるのではないでしょうか。

「ほめる」と「ほめられる」

さて、「ほめる」は一方通行ではありません。定義で確認しましたが、「感情をもって相手を良く評価する」、つまり相手がいて初めて「ほめる」は成立します。
オンラインでも、「ほめる側の視点が多くて、ほめられる側の視点は抜けがちだよね」という意見が多くありました。相手をほめたはいいけれど、全然嬉しそうじゃない、逆に怒らせてしまった、という経験は誰しもあるのではないでしょうか。

ここで「ほめる」「ほめられる」の関係を整理しましょう。
・ほめる → 嬉しい(ほめる側→ほめられる側) ⇒ 「ほめる」の成功
・ほめる → 嬉しくない(ほめる側→ほめられる側) ⇒ 「ほめる」の失敗
ここでは、ほめられて嬉しいとき「ほめる」は成功し、逆にほめられても嬉しくないとき「ほめる」は失敗した、ということにしましょう。

誰しも、ほめたら相手に喜んでもらいたいですよね。ではピュアにほめれば喜んでもらえるのでしょうか。

話が長くなったので、今回はここまでとします。
「ほめる」って奥が深いですね。いつか改めてこの続きを考えたいなと思います。


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