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ナイジェリアの「食」市場: 急成長2億人市場の最新フードビジネス

ナイジェリアの巨大な急成長市場

過去の記事でもナイジェリアの市場の大きさは書いておりますが、今回はその中でも食産業について書いてみたいと思います。現在人口2億人でアフリカ最大の国となっているナイジェリア。人口は今後も増加が予想されており、2050年には手前には3.5億人に達し、アメリカを抜いて世界でも人口第三位の国となることが予想されています。また前回の記事でも書きましたが、富裕層も他のアフリカの国に比較すると多く、今後世界で一番富裕層が増える国ともいわれています。人口の多さと豊かになっていく人々を背景に巨大市場となり今後も成長が予想される「食」にフォーカスし、最大都市のラゴスを中心に最新のフードビジネスのトレンドをお伝えできればと思います。

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もはやナイジェリアの国民食となっているインドネシア発の即席めんIndomie(インドミ―)

インドネシアの巨大コングロマリット企業のSalim(サリム)グループの即席めんブランドであるIndomie(インドミ―)はナイジェリアで国民食と言っていいほど人々の生活を支えるものになっています。ナイジェリアでは1980年後半頃からシンガポール系のTolaram (トララム)Groupがナイジェリアへの輸入を始め、徐々に人気商品となり、1995年には現地で工場も設立されました。現在ナイジェリアの即席めん市場は年間25億食近くと言われており、世界でも11番目に大きな市場と言われています。国内には10以上の即席めんブランドがありますが、Indomieは圧倒的な支持を受けています。1パック(1食)10-15円ほどで販売されており、年齢、所得層、宗教などに関わらず幅広い層に人気があります。
 今一緒に働いているナイジェリア人の同僚(30代女性)はイギリスで昨年第一子の出産をしたのですが、段ボール数箱にindomieを詰めてナイジェリアから持っていったという話を聞き驚きました。小さい頃からよく食べており、今でも週に2-3回は必ず食べるということでした。スープと一緒か焼きそばのように汁なしかなど、レシピも多く存在し、各家ごとに独自のIndomieの食べ方があるようで、人々の生活に深く結びついていると言えます。
家庭料理として人気のIndomieですが、ラゴス市内には現在3店舗ほど「Indomie café」というファストフードレストランもあり、様々な調理方法でindomieを提供するフラッグシップストアとなっています。

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おなじみのグローバルファストフードブランドも進出している

 またラゴスのファストフードは、日本でもおなじみのグローバルブランドが数多く存在します。KFC、 クリスピークリームドーナツ、ドミノピザ、コールドストーンなどがモールや市内の中心街の路面店で存在します。イギリスやアメリカなどの海外の大学などで教育を受けた高所得者層の若い世代などがトレンドセッターとなり、低価格で手軽におしゃれに食べられるブランドとして認知されています。ナイジェリアは2025年頃には1人あたりGDPが3,000ドルを超えると予想されています。別記事にもあるとおり、3,000ドルは「外食元年」とも呼ぶことができます。 最近、日本のマクドナルドが1971年の銀座の日本1号店出店から50周年ということで、宮崎美子さんを起用した新しいCMが話題になりましたがまさに日本が3,000ドルを突破したのもその頃になります。

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フードデリバリービジネスもラゴスを中心に普及が始まる

 これらのグローバルなファストフードだけでなく、ローカルの老舗レストランのメニューも家で楽しむ、フードデリバリービジネスも徐々にですが一般的になっています。アフリカのAmazonと呼ばれるJumiaはJumia Foodというフードデリバリービジネスを展開しており、ラゴスでは200を超えるレストランのメニューの注文がスマートフォンで可能です。Jumia Food以外にもライドシェアサービスを世界展開しているエストニア発のスタートアップBoltがBolt Foodをローンチしたり、ナイジェリアの複数のローカルスタートアップが始めたりと多くのプレーヤーが出てきています。
 私自身もJumia Foodは3年ほど前に初めてナイジェリアに来た時からよく利用しています。当時は、注文してから1-2時間かかるのは当たり前ですし、デリバリーを行うドライバーから場所がわからないなど注文を受け取るまでに5-6回電話のやりとりが必要でストレスのかかるものでした。それでも市内のレストランに行くと移動で渋滞、注文してから30分以上待たされることもあるので、それであれば居心地の良い家で仕事や好きなことを過ごして1-2時間でも待とうともサービスを根気強く使っていました。しかし、新型コロナもあり、フードデリバリービジネスが注目されるなかで少しずつカスタマーエクスペリエンスも改善している感覚があります。まだすべての注文に適用されていませんが、ドライバーの位置情報をGPSでリアルタイムに表示したり、できるだけ電話を少なくしてテキストメッセージでドライバーとやりとりができるようになったりしています。今後も複数の競合企業の間で健全な競争が進めば、我々ユーザー側にとってより快適なサービスになると期待しています。

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ラゴスには1人100ドルを超えるような高級レストランが多数、オーナーは実はナイジェリア人よりも●●人のオーナーが多い

 ラゴスでは平均予算が1人100ドル以上の、海外在住経験のある高所得者層をターゲットにした高級なレストランも数多く存在します。日本食も海外にあるようなフュージョン系の寿司などを出す高級レストランが複数存在します。ロンドンやニューヨークで味わった高級レストランの経験をラゴスでもしたいと週末などを中心に賑わっています。現地のスタートアップの起業家や投資会社で働く人などと面談をする際に、自己紹介で私の名前”Nobu”を伝えると、ニューヨークで成功し、世界各都市に店舗を持つ寿司レストラン”Nobu”を思い出して比較的簡単に名前を覚えてもらえます。これはルワンダや他のアフリカの国では滅多にないことです。上記のような高級レストランに行く人々は日本酒や日本のウイスキーにもなじみがあり、人気があります。ラゴス市内の高級スーパーや海外の生活雑貨をそろえるセレクトショップなどにも日本の酒類は取り扱いがあります。 
 またこれらの高級レストランは、オーナーは意外にもナイジェリア人ではなくレバノン系移民の方が圧倒的に多いのも特徴的です。日常会話で新しく開店した高級レストランの話題になると、「やっぱりオーナーはレバノン系?」というのが定番の質問になっています。ナイジェリア人の顧客層からしても、オーナーがレバノン人であればスタッフのトレーニングやオペレーションなどがよくできているという安心感があるということです。

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日本食ビジネスに勝機はあるか?

 最後に日本食ビジネスの可能性についてですが、市場自体は上記の通りポテンシャルが高いと思っています。また先進国の在住経験がある富裕層が一定数いるというのも他のアフリカの国々と比較してマーケティングやブランディング等で開拓がしやすい側面もあるかと思います。ただやはり、そうはいってもナイジェリア。どの産業にも言えることですが、ビジネス環境は不確定要素が多く、いきなり日本の企業が進出してもオペレーションの部分では難しい部分もあるというのが実情かと思います。ナイジェリア国内で実績のあるパートナーを見つけて協働することでお互いの得意分野に注力して事業の価値を大きくしていくポイントとなるかもしれません。

文章:AAIC 一宮 (AAICナイジェリア法人代表)

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