新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

政治学者が内田樹「コロナ後の世界」にマジ切れしてるので聞いてくれ: 内田樹が煽る4つのデマ

Prologue フランスの政治学者からの電話

内田樹氏の論考「コロナ後の世界」がバズっている。

私の感想は、さすが著作も多いし、読みやすくてわかりやすい文章だなあ(ところで、わかりやすい言葉と構造で世界を一面的に語ることに警鐘を鳴らしていたのは誰だったかなあ……)くらいだった。

画像1

その日の昼間、台所でスパゲティーをゆでているときに、電話がかかってきた。
慌ててコンロの火を止め、電話に出ると、永沢さんだった。
永沢さんは大学の寮の先輩にあたる。昔からよくお世話になっていた。今はフランスの大学院で政治学の研究をやっていると聞く。コロナで外出禁止令が出ているから、論文を読んで書いての毎日らしい。

久しぶりに話した永沢は激昂していた。
内田樹が、事実の中にうまく嘘を隠して、読者を騙そうとしていることにブチ切れていた。丁寧なトーンで危機を指摘しながら、ありもしない不安を煽ろうとしていることにマジ切れしていた。

そして、日本人の多くが、内田樹の言葉に頷かされていることに、胸を痛めていた。

僕は以下に要約する。
学者としての彼が露わにした怒りと、抱えこんだ悲しみについて、僕が代わりに記しておく。
彼の心は今それどころではないだろうから。

永沢さんの感じている・考えていることすべてを捉えるのは僕には難しい。僕らの共通の友人が自殺した時だって、彼はいたって冷静に見えた。
だから以下に記すのは、あくまで、僕が理解できた範囲での要約になる。

彼は電話口で、だいたい次のように語った。

0. 内田樹が発信する4つのフェイク

アラン、内田樹のあの文章は、悪い意味で、よくできている(注: アランというのは僕のことだ)。
ファクト(事実)の中にうまくフェイク(意図的な嘘)をはさみこんで、バレないように、読者を刺激している。彼には大衆を煽って、国をヤバい方向に持っていく才能がある。デマゴーグの才能があるなら政治家になった方が良い。
だいたいブログのタイトルが「内田樹の研究室」ってなんだよ、内田樹は博士号さえ持ってないんだぜ。「俺はこう思う!」って勘だけで「研究」ができるわけないんだよ。まあ、処女作の『ためらいの倫理学』あたりは、勘が冴え渡ってて、悪くはなかったけどな。

内田はこう言ってる。

安倍政権においては、主観的願望が客観的情勢判断を代行する。「そうであって欲しい」という祈願が自動的に「そうである」という事実として物質化する。安倍首相個人においては、それは日常的な現実なんだと思います。

皮肉だよ。祈願を物質化させてるのは内田の方だ。あの文章はな、コロナ後の世界は様変わりするとしたら、それは安倍政権とトランプのせいであってほしい」という内田の祈願(妄想)が、自動的に「コロナ後の世界は様変わりする。主に、安倍政権とトランプのせいで!」という事実として物質化したものだ。あそこに挟まれたイデオロギー、お前にわかるように言うなら「中立的に・客観的に語ってるように見えるけど、実際はめちゃくちゃ偏っている思想、誤った前提」を見抜けなければ、まんまと俺たちの民主主義は崩壊させられてしまう。「民主主義の危機」を煽る内田樹は、存在しない不安を掻き立てて、人々を思考停止させ、安倍政権にすべての咎を負わせようとしている。

画像3

具体的に行こう。内田樹は少なくとも4つのフェイクを意図的に発信している。これがまた、事実(ファクト)とセットで語られているからもっともらしいんだ。

1. 「国際協力体制は中国が指導する」はデマ。

引用:
> もちろん中国も国益優先です。でも、トランプは秋の大統領選までのことしか考えていないけれど、習近平はこれから5年先10年先の地政学的地位を見越して行動している。短期的には「持ち出し」でも、長期的にはこの出費は回収できると見越して支援に動いた。この視野の広さの差がはっきりした。コロナ禍への対応を通じて、中国は国際社会を支える能力も意志もあることを明示し、アメリカは国際社会のリーダーシップを事実上放棄した。コロナ禍との戦いはこれから後も場合によっては1年以上続くかも知れませんが、アメリカがどこかで軌道修正をしないと、これ以後の国際協力体制は中国が指導することになりかねない。

中国は地政学的な拡大を試みている、そして中国はコロナを機に覇権を握る、と内田樹は言う。
前半がファクト、後半がフェイクだ。

確かに、中国は地政学的な拡大を試みている。しかしな、そんなことは国際社会の全員がわかってる。全員が警戒してるんだ。中国の台頭を許すことは、国際的な民主主義体制を瓦解させることと同義だからな。じゃあ一体誰が、マスクを売ってくれた程度で、中国に「地政学的な覇権」を許す?「いま頼りになるのは中国だけだ」と語ったイタリア人の知り合いがひとりいたのは結構だが、民主主義はひとりの声で決まるわけじゃない。(だいたいそんな奴本当にいたのか?ひょっとしてリベラル界隈の「お友だち」か?)

しかし「地政学」って言うワードチョイスがいいね。高尚かつグローバルだね。あのな、中国の拡大志向とアメリカの自国重視志向は、コロナ前からずっとなんだよ。コロナを機に国際政治が始まったと思ってないか?あのな、お前が思うもう少し前から国際政治はあるんだよ、内田。

2. 「説得力のあるメッセージを発信するリーダーを模範とすべき」はデマ。

引用:
> 安倍首相は官僚の書いた作文を読み上げることしかできない。自分の言葉で、現状を説明し、方針を語り、国民に協力を求めるということができない。
> ドイツのメルケル首相やイギリスのボリス・ジョンソン首相やニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事はまことに説得力のあるメッセージを発信しました。それには比すべくもない。

欧米のリーダーは演説が上手い、そして演説が上手いとリーダーは模範、と内田樹は言う。
前半がファクト、後半がフェイクだ。

イギリス・ドイツ・ニューヨーク、確かに彼らの演説は上手い。エネルギーを感じる。かといって参考事例にすべきかどうかは別だ。どの国・地域も、日本より、桁違いに悲惨な状態にある。リーダーの仕事は人々にそれっぽいスピーチをすることじゃない(大衆にすり寄ってTwitterをすることでもない)。リーダーの仕事は結果を出すことだ。イギリス・ドイツ・ニューヨーク、どこかひとつでも、感染を食い止めるのに日本より成功した国があるか?

画像2

それともあれか?内田樹はまさか、海外の政治家たちが、話す内容を自分で考えてると思ってるのか?「安倍首相は官僚の書いた作文を読み上げることしかできない。自分の言葉で、現状を説明し、方針を語り、国民に協力を求めるということができない。」って言うけど、あのな、メルケルもボリス・ジョンソンも、話の内容はスピーチライターが考えてるの。良いスピーチを考えてるのは政治家じゃないの。国民に語りかけているような気がした?うん、それは文章を読むのが上手いのと、演出が上手いだけだな。よし内田、お前がそこまで「上手なお話」ができるやつにリーダーをさせたいんなら、ボディランゲージの得意だったちょび髭でも呼んでくるか??

とはいえ気持ちはわかるよ。あまりに滑舌が悪いリーダーの言うことに耳を傾けようとは思えないもんな、ほら内田、お前は昔からすぐ人を印象で判断する奴だったから。

3. 「政治家や役人は感染症用の医療準備を無駄だと思って、カットした」はデマ。

引用:
> 「医療資源の効率的な活用」とか「病床稼働率の向上」とかいうことを医療の最優先課題だと思っている政治家や役人は感染症用の医療準備を無駄だと思って、カットします。そして、何年かに一度パンデミックが起きて、ばたばた人が死ぬのを見て、「どうして備えがないんだ?」とびっくりする。

リスクヘッジは大事である、そして政治家や役人は感染症用の医療準備を無駄だと思ってカットした、と内田樹は言う。
前半がファクト、後半がフェイクだ。

リスクヘッジは極めて大事だ、余裕があれば色々な備えができるのは当然である。しかし我々は覚えているだろうか、「無駄」の削減を行ったのはどの政権?民主党政権だ。民主党政権を選んだのは誰?国民だ。おめでとう!民主主義は機能している!医療準備を「無駄」だというジャッジを下したのは我々国民だ。政治家と官僚はその鏡にすぎない。政治家や官僚を叩くのが楽しいのはわかるが、内田が責任を問うべきは国民じゃないか?

ところで内田は立憲民主党の公式パートナーだったよな?立憲民主の政治家はどうだ?民主党政権時代によく見た面々が揃ってる気がするが……。でもお前に金を払ってパートナーになってもらってるってことは、彼らは「無駄」にお金を払うにようになったんだな、今は。良かったじゃないか。

4. 「わずかな国富を少数の支配階層が排他的に独占する」はデマ。

引用:
> 階層の二極化が進行すれば、さらに後進国化すると思います。ネポティズム(縁故主義)がはびこり、わずかな国富を少数の支配階層が排他的に独占するという、これまで開発独裁国や、後進国でしか見られなかったような政体になるだろうと思います。森友問題、加計問題、桜を見る会などの露骨なネポティズム事例を見ると、これは安倍政権の本質だと思います。独裁者とその一族が権力と国富を独占し、そのおこぼれに与ろうとする人々がそのまわりに群がる。そういう近代以前への退行が日本ではすでに始まっている。

経済的に大きな影響がある、そして自立した資本家は滅び、途上国のように少数の支配階級が富を独占する、と内田樹は言う。
前半がファクト、後半がフェイクだ。

当然、コロナの影響は今後経済に拡大していく。彼はその結果として、支配階級である大企業だけが残り、自立した資本家である小さな企業が滅ぶことで、日本の中産階級がいなくなってしまうと主張している。では実際、適当なホラを吹くのではなく数字を見てみると、大企業や中企業はどれくらいの規模なのだろうか、経産省によれば。大・中企業の雇用者は3500万人程度で、小企業の雇用者は1000万人程度だ。つまり、日本の中産階級は彼の唱える自立した資本家ではなく、大・中企業の安定した雇用によって支えられている。内田は文士であり活動家なので(柔道家でもあるんだっけ?)企業勤めの人たちとは接する機会もないんだろうが、コロナの影響で日本が独裁国家になるというのは、明らかな極論だよ。この国の中産階級を支えてるのは大企業なんだ。

しかし「階層」を持ち出すのはいいよ、内田。バカはすぐ階層の闘争で義憤に駆られてRTしちゃうからな。なあ、日本人を一番馬鹿にしてるのはお前なんだなって、お前の言葉遣いを見てると、そう思うよ。お前は昔からそういうところがあった。言葉巧みに、人を気持ちよくさせるのが得意だった。才能がこういう風に活用されるのは、残念だよ。

Epilogue 政治ポルノとしての内田樹

内田のついている嘘の中で何よりも一番ひどいのはこれだ。「新型コロナウイルスがもたらす変化によって、民主主義は死にかねない」。違う。そりゃ、憲法をめぐる問題は確かに残るが、何よりも、お前みたいなアマチュアの妄想したフェイクニュースに感銘を受けて、ありもしない未来像を描いて、極端な思想を抱いた人間の群れが、民主主義を殺すんだ。内田、聞いてるか?お前が好きなレヴィナスの言葉で借りれば、内田樹の主張する正しさの「全体性」が主体を奪い、尖兵たる保健隊が、他者へ暴力を振るうことを許容させるのだ。わかるか?ちょっと難しすぎたかな?

アラン、俺の言ってることは間違ってるかい?内田樹は聴きやすいフェイクを垂れ流すデマゴーグじゃないかい?学者を自称するなら、虚実ない交ぜにして人々の不安を煽るより、現実世界を良くするための研究を行うべきじゃないのか?俺みたいに引きこもれとは言わないさ。でもいくら何でも、今の内田は、ただ「安倍叩き」がしたい人たちにとって都合の良いアイドルになりすぎた。あんなもの政治ポルノだ。なあ、あいつはいつからああなっちまったんだ。俺たちはどうしてこうなっちまったんだ?

僕は電話を切った。

鍋の中のスパゲティーを味見すると、張られたばかりのスタインウェイの弦のように、アルデンテだった。
やれやれ、と僕は思った。

参考書籍

サポートのお願い、注意

実在の人物に配慮して、名称や表現を一部変更しています。

今回いただいたサポートは全て永沢氏に渡します。永沢氏は外出禁止令の出たフランスで、じっと引きこもって論文を読んだり書いたりしています(どこかの自称・文学者がブログに適当な記事を垂れ流しているのとは違って)。彼を応援する気持ちのある方、サポートお待ちしています。

TwitterのRT/フォローもお待ちしてます!


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

アフターコロナをやっていくのに使わせていただきます。ありがとうございます。

Thank you! よろしければサポートお願いします。
41
ライター。執筆とか書評とかリサーチとか。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。