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[第15回]<物質と嗅覚とⅡ> ☆ウイスキーと科学と数字☆

こんばんは、A Whisky Studentでございます。
今回は[第7回]<物質と嗅覚と>の補足の話を書いていきます。

その第7回の記事では、匂い物質の物理化学的性質を利用して分離することで混合した香りの中で特定のキャラクターを知覚し易くなることを紹介しました。その中で紹介した方法[①グラスから距離をとる]ことで、軽くてフルーティなエステル系化合物の香りを嗅ぎ取りやすくなること
について、あまりにもサラッと書いていて細かいことが伝わらないことに気づいたので、写真も使用しながら少し詳しく解説します。

この方法は私が2015年にディー川上流部のワラント所有蒸溜所を訪問した際にツアーで学んだ方法をもとにしたものです。それまでなんとなく似たようなことをしてはいたのですが、明確に方法と狙う効果が定まったとともに、自分が学んできた物理化学の原理原則での論理的説明に繋がって物凄く腑に落ちたのが強く印象に残っています。
(たまたまツアー担当してくださったのがジョニーウォーカーのマネージャーの方でした、感謝!!)

[理論]
・アルコールは空気より重く、テイスティンググラスの中に溜まりやすい
・高分子量/高沸点の香り物質はグラスからは出て来づらい
・エステル系化合物は揮発性が高く軽く拡がりやすいものが多い→グラスから追い出し易い
・エステル系化合物の香りは、低濃度だと華やか/甘やか/フルーティに感じる
・エステル系化合物の香りは、高濃度だと溶剤系に振れて感じる
∴グラスからエステル系化合物を追い出して、グラスから離れて香りを嗅げば、華やか/甘やか/フルーティな香りを分離して知覚できる

[方法/手順]
⓪なるべく無風の場所を確保する
この方法は風に弱いので、冷房吹き出し口の直下やあいているドアや窓付近を避ける必要があります。

①グラスコンディショニング
グラスを倒して回し、内壁いっぱいにウイスキーを付着させます。
香りが立ち上りやすくするための準備です。
実はここを省略しても効果は得られますが、ここを丁寧にすることで
・集中力が高まり
・香りが立ち上るまでの時間も短くなり
ますので、丁寧にやる価値がありますよ。具体的なやり方はいろいろありますが、とりあえず2パターン紹介しますね。

パターン1:倒したグラスごと転がす

コロッとな
グラス内が少量の場合は倒したグラスごと転がすと楽です

パターン2:倒したグラスをテーブル等に載せてその場で回す

クルッとな
下の面の滑りが良いときは倒したグラスを載せてその場で回すのも楽です

②鼻から少し離れたところでグラスをスワリングする。
まず、顔(鼻)の位置を固定することが大切です。
これを強く意識しないと鼻がグラスに近づいてしまうのでね。
そして、顎の先端から前に拳一つ、下に拳一つの位置にグラスの先端が来るようにして、その位置でスワリングするのです。
なるべく一定のリズムで、なるべく速く。

顎の先端から前に拳一つ、下に拳一つの位置にグラスを配置

③顔を動かさずに同じ位置でスワリングを続けながら、立ち上ってくる香りを嗅ぐ
華やか/甘やか/フルーティな香りだけを拾えます!!
しかも、一度そういったキャラクターを拾うと、その一杯を飲み干すまでは普通にノージングしても華やか/甘やか/フルーティなキャラクターを拾い易くなります。
公式テイスティングノートで「トロピカル」「桃」「りんご」「フルーティ」などと書いていたのに拾えなかったとお嘆きの方には是非試して頂きたいところです。

以上です!!
やったことない人は是非やってみてください、きっと驚きますよ!!!

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