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なぜArmの買収が独占禁止法に反するかもしれないのか?

NvidiaによるArmの買収が巷を騒がせています。理由は独占禁止法に抵触する可能性があるからです。しかし、なぜ独禁法に引っかかるのでしょうか。その理由について調べてみると、Armのビジネスモデルや歴史などの理解が深まったので、記事にしていきたいと思います。

Armのビジネスモデル

独占禁止法の理由を説明するには、まずArmのビジネスモデルから説明する必要があります。

Armのビジネスは一言で言うと、半導体の設計です。その設計図を半導体の製造会社が利用を許可する際にライセンス料を、そして半導体を製造して出荷するたびにロイヤリティ(単価の数%)を徴収するビジネスモデルとなっています。

ということは、Armの顧客には様々な半導体製造企業がいることになります。ではNvidiaが買収すると、どうなるでしょうか。

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NvidiaはArmの一顧客であり、他の顧客とはライバル関係にあります。ということは、そのNvidiaが買収するということは、他のライバル企業が顧客になる、すなわち支配的な立場をとることになります。これが市場の独占になり得るというのが今回の論点のようです。今後この買収がどのように進展するかは分かりませんが、もし買収が成立した場合にNvidiaが大きな力を手にするのは明らかでしょう。

Armの歴史

今回の件は、半導体の設計のみを行い、ライセンスとロイヤリティで利益を出すArm特有の事情がありました。では、そのユニークなビジネスモデルはどのようにして形成されたのでしょう。

もともとArmはAcorn Computerからスピオンオフした会社でした。Acornは低コストのコンピュータを作るために、マイクロプロセッサの自社開発を奨励しました。これが後のArmとなります。

当初は製造を下請けに出すことも考えられました。しかし、それには下請けにお金を払ったり、製造したチップを営業やマーケティングする必要があります。Arm社は色々な可能性を考慮した結果、そのようなコストは避け、パートナーにライセンスを供与することを選び、現在に至ります。

その後、Arm社は自社の製品を幅広く市場に浸透させるために、マイクロプロセッサの柔軟性と標準性を高めました。これにより、各領域の水平統合を可能にし、世界標準を確立したようです。

まとめ

Armの強みは製造分野を手放し、純粋なチップの設計に専念した知的財産ビジネスにあります。この戦略により、圧倒的な市場シェアとイノベーションを成功させてきました。もし買収された場合は、半導体業界のスイスと称されるような、Armのポジショニングは失われてしまいます。その独立性こそがArmの優位性でもあったわけですが、今回の買収によってどのように変わっていくのでしょうか。今後の進展に期待したいと思います。

参考資料

ArmのIPビジネスが誕生した経緯

ソフトバンク傘下のアームが明かす、プロセッサ事業の歴史と次なるフロンティア

スマート社会実現に向けたArmの半導体IP戦略 - ネプコンジャパン2018

ライバルが一転「顧客」にーーNvidiaがArmを買収、ARMエコシステムの行方(前編)

Arm共同創業者が4.2兆円でのNVIDIAからの買収に反対、独立性確保のため「Save Arm」キャンペーンを開始



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