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成れの果て

 昔、付き合っていた女と此処の対岸に来た。此の辺りは大都会の成れの果てだ。此処がなくては都市は成り立たない。此処のような場所があって都市が在るんだ、って話をした。なんとなくそれは眠らない街のようで、少し期待感があり、そして何処か悲しげな近未来のよう。僕らが望んだ未来はこんなだったのだろうか、と。
 多くの言葉を交わした。沢山の愛を約束した。夢のような時間だった。そしていつしか海の藻屑となった。
 若かった愛。愚かだったあの頃。街だけが変わり続けてこの成れの果て。時は戻らない。ただ、波の音と共に陽は傾いていく。

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