
めかしこむ。
もうすぐ29歳。三十路も間近な私だが、この歳になって、過去最高に自分をめかしこむようになった。
*めかしこむ=お洒落すること。
私は小学生の頃から、服によるお洒落は好きだった。今考えると誰が見ても自分のタイプに合っていない、カウボーイのような帽子や、ポケットいっぱいのぶっといパンツを着ていたりして、「お洒落である」とは言い難かったけれど。それでもずっとお洒落は大好きだった。
ただその一方で、メイクというものがどうしてもあまり好きになれなかった。それは漠然とした「自分を必要以上に盛ることへの抵抗」もある。
だがそれ以上に、大多数の意見として見かける「女子はメイクしないほうが良い」なんていう男性意見に同調していたのも大きい。私は男性の目を気にしていたのだ。
また、私の面立ちはどうにも幼く素朴で、少しでも似合わない色をつけてしまうと途端に「あら、お母さんのメイク用品で遊んじゃったの?」といった具合になってしまうことも、よりメイクに積極的になれない原因になっていた。
メイクはしてもほとんどベースメイクのみ。アイメイクなんて一切やらなかった。それが良いものだと思い込んでいた。どぎついメイクをしている女性たちに「ケバい」と冷ややかな目線を送っていたこともあると思う。
でも、ここ数年で私は自分に合うフルメイクを覚えはじめた。28年も生きてきて、メイクを始めてからでも10年は経っていて、それでも今やっとである。
すると、これがどうだろう。楽しいのだ。素っぴんの自分よりも、目が大きくパッチリと見える、可愛らしい自分を作れることが、楽しいのだ。自信にもなるのだ。
そこには一般的な男性の目線どころか、愛しい人の目線すら入ってこない。ただ、自分が楽しい気分になるため、自信を持つために、私はせっせとめかしこんでいる。
「メイクは人のためにするものでない。自分のためにするもの」
という概念を、この歳になってはじめてきちんと理解できたような気がする。
そして、自分が嫌だからではなく、他者を意識してメイクをしていない人がいるのなら、ぜひ一度ちゃんと自分に似合うメイクをしてほしいと思う。
伝えたい。めかしこむことは、楽しいよ、と。