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窓のお話。

前回の記事の中で、陰をつくるために、窓(開口部)の高さを変えるというお話しをしました。

今回は光や陰の取り方以外の視点で、窓を設計するときに、こんなことを考えています。というのをお話しできればと思います。

窓は、内部と外部の境界に設けるもので設計をする人の間では開口部という言葉を使います。

開口部という言葉は、窓以外にもう少し広い意味があり、内部や外部といった括りに関係なく、ある空間と空間をつなぐ境界にある開口のことを指します。つまり開口部には、窓だけではなく部屋と部屋の境界にあるドアなどのことも含まれることになります。開口部を設計するということは、空間と空間(内部-内部、内部-外部)の繋がり方や関係性がどうあるべきかを考えるということです。

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図の中で、空間Aと空間Bを開口部で、どのように繋げるのかということを考えます。例えば右図のように4つの例を挙げると・・・

建具: 壁で遮られていて、ドアのみで繋がっている場合です。空間は完全に分断されていて、奥の空間で何をしているかわからないし、人がいる気配すら感じないかもしれません。

開口壁 : 壁に穴が空いたような形で繋がっている場合です。空間は、ほとんど繋がっているので、視線も通るし行き来も自由です。フレームのように壁が残っていることで境界が存在することがなんとなく意識され、空間をゆるく分断することできます。

引戸 : 引戸で仕切られている場合です。完全に開いた状態では、図のように大きく繋がることができ、閉じれば空間を分断することが出来ます。使い方によって繋がりの度合いを調整することができます。

家具 : 開口部とは言えないかもしれませんが、家具によって遮られているという場合です。空間は繋がっているので、視線や気配を感じることが出来ますが、家具によって遮られることで行き来がしづらくなり、精神的な距離もつくることができます。家具の高さを変えることで、どの程度繋がるかといった操作もできるかと思います。

これ以外にも、カーテン、ガラスといったものを使うと、また違った空間の繋がり方が考えられるかと思います。このように開口部での繋げ方もざまざまにあり、空間の用途や使う人の関係性を考えながら、どう繋がるべきかを考えることが開口部を設計するということだと思います。


少し脱線してしまいましたが、窓の話に戻ります。

建築物は、外部に設ける開口部をつくることで外部と繋がり、様々な恩恵を受けることができます。暖かい太陽の光、気持ちのいい風、遠くまで広がる景色、緑のある風景、樹々の香りなど、開口部を通してざまざまな自然環境を取り込むことができます。

ただし、いいものだけではありません。都市の中で生きる私たちは、汚染空気、騒音、他人からの視線などできれば遮断しておきたいものまで開口部を通して、建築物の内部に引き込んでしまうことになります。

いいものも悪いものも開口部から入ってくるので、取り入れるものと拒否するものを考えながら、どこに開口部を設けるか慎重に検討して決めなければいけません。

上記の話は、外部環境に左右される部分が多いので、その度に周りを調査し設計に反映させていかなくてはいけません。今回は、そう言った話は置いておき、空間の開放感や広さの感じ方に関わる視線の抜けや長さということに焦点を絞って、窓の設計時に考えていることをイラストを交えて、いくつかお話したいと思います。


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■壁面の開口部の比率

当たり前の話ですが、壁面に対して、開口部の比率が大きければ大きいほど抜け感が増して、開放的な空間になります。図のように中途半端な小壁をなくすように窓を設ければスッキリとさせることもできます。


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■平面的な開口部の位置

四角い部屋があった時に、部屋の縦横の辺の長さよりも、対角線の方が長いです。正方形の場合、縦横の辺よりも対角線は1.4倍ほど長いので、その先に開口部を設けることで、外部へ繋がる長い視線と抜けをつくることができ、空間を広く感じることができます。


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■長い視線の先に開口部

平面的に長い視線をとるようにプランニングができれば、小さい家だったとしても広さを感じることができます。図はキッチン、ダイニング、リビングを連続した一体空間とした場合です。視線が止まることがないように長い視線の先には開口部を設けることで外部への抜けをもった開放的な空間を作ることができます。


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■平面的に開口部を設けづらい時は・・・

都市部に建っていて外部に対してなかなか開きづらい場合は、上部に向かって抜けをつくることで空を眺めることができるようになり、開放感のある空間となります。


空間の開放感や広さというのは、光の加減と視線の抜けや長さで感じ方が大きく変わってきます。物理的に広さが取れない場合は、開口部の配置を工夫することで、感覚的に空間を広げることが出来ます。



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気持ちよさは窓付近に生まれる

最後に、窓まわりに気持ちのいい空間をつくるアイデアです。窓の下枠の幅を少し広げることでベンチのような役割を持たせることで、窓付近に居場所を作ることができます。眺望のよい窓やテラスと組み合わせると、よい空間となりそうです。


以上、窓の設計時にはどんなことを考えているかというお話しでした。

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