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灰色、グレー、Grey


考えや気分の変化って、急に起こることだなぁとしみじみ思えてくるのですが、最近、自分の中で大きな変化があったので書いてみようと思います。


私はたぶん、色を意識したり、色に影響を受けることが多い類と思うのですが、それは父が昔気質の絵描きとデザイナーの二足の草鞋で確かに生きて稼働していた時期が少なからずあって、すごい膨大な色や太さの種類のペンや大量の油絵具、色見本帳(懐かしすぎる、切れ目があって回数券みたいになってて子ども目線ではきれいでうっとりしたり、切り取り蒐集したい対象がすぎて、いつも父の仕事場の机の横で、くれくれお化けになって駄々を捏ねていた三十年前くらいの記憶がよみがえってきた…)に自ずと囲まれて暮らしていた時期があるからだとは思えるのです。

いつしか迫りたちはだかる貧困の壁、人としての自信を人が失う過程にのみこまれ、住処やアトリエの片隅で大量の色見本帳の束や絵の具の塊が、やがて埃をかぶり化石となってゆくのを横目に育ちました。


今まではどうやら、グレー、灰色にネガティブな印象を持ちすぎていたようです。

絵や色を使って何かを書く時も、洋服や持ち物にも選ばない色で、何なら最初に選択肢から消える色。物心ついてからは、貌つきや存在が華やかではない自己認識があるからか、灰色を身につけようものなら同化してしまうからダメよ…との思いもあるし、苦手な色でもあった。tシャツやパーカーの人気色だとは思っているけれど、高校生の頃、公開された映画のタイアップか何かで、ラフォーレ原宿に入っているようなブランドの服が欲しい時代もあって、アルバイトの賃金で買ったパーカーの後にも先にもグレーカラーの持ち物は選んだ記憶がない。(たぶんそれも第一希望は黒だったけど、売り切れで直ぐに購入したかったから妥協した記憶がある)

更には、こどもの頃から慌てん坊ゆえの汗かきで、グレーの服=汗染みみせつけカラーと自分の中では決め込むきらいもあったので、本当に避けて通ったのだ。

段々と、その傾向が変わってきたのが昨年あたりから。

出張、巡業先でふらり立ち寄る服屋さんに置いてあるような手間隙をかけて染めた靴下や巻物、これまた手間がかかってそうな革細工の数々を手にとってみるとなんとも言えないよさがある。

ねずみ色と言うと、学生の頃にバイトで入館した某百貨店の地下にある巨大ごみ置き場で目にした軽く百匹以上はいたのではとその時の光景を思い出すだけで卒倒しそうな、その赤い目を鋭く光らせながらごみに群がりごみを啄んでいた生き物を連想してしまうけど、にび色と書かれた札をみたりすると同じ色のことでもだいぶ印象が違う感じがした。

そして昨年、さがしていた財布バッグを熱海で見つけ、数色の中から選ぶ際に、薄いにび色が一番しっくりきて購入したのを機に、わたしの長年の灰色苦手意識はだいぶ薄まりはじめたようなのです。

極めつけは、今年に入ってからは点けるのも稀で何故かぼんやりみていたマツコデラックスが出ているテレビの件。

歌舞伎町の話題があがり、密着されているカメラマンが昔にくらべると歌舞伎町でおもしろいと思う光景に出くわさないみたいなことを喋っていて、たぶんマツコさんだった気はするけど誰かが、'白黒つけず灰色のままでいいこともあるわよね…'みたいに呟いていて、本当にその通りだよ!と心底、そのテレビ取材と映像に重ねあわせて思ったのでした。

そんなことを思ったからなのか、この一ヵ月位は段々と、グレーこそラッキーカラーなのではと思い始めるようになり、無印良品でもグレーと付くものを避けていたのが嘘のように、バスタオルや靴下、下着、スラックスなどすべてグレー責め。(しかも今までは気にも留めていなかったけど、グレーはライト、ダーク、普通と色のトーンも多くて取捨選択、毎日何かを選ぶの大好き選手権な自分にはもってこいな色なのかも知れません…)

洋服も急にグレー系が増えて参りました。

そうなると、これからの季節に心配はひとつだけあります。

そうです…私が灰色の服で、盛大に汗染みを作りながら何やらニコニコ又はむっつりしていたら…寛大な心でそっとしてやってくださいましね。


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