記録すること、作家ではないこと
A&ANSの矢田さんにお声掛けいただいて、12月15日に国立のカフェおきもとにて、映像作品の上映会を開催します。上映する作品は、キウイ農家の友人である阿部翔太郎が製作した『夫沢』と、ソフトウェアエンジニアである私が友人たちと製作した『松本家』です。夫沢は福島県双葉郡大熊町の地区名であり、松本家は福島県双葉郡葛尾村の家の名前です。それぞれ次のように紹介されています。
それぞれ地区あるいは家について記録した映像作品です。そして、ともに映像作家を全く志していない人たちによって制作された映像作品です。私たちの本業はキウイ農家とソフトウェアエンジニアであり、これまで映像制作を学んできたわけでも、これから映像作家になろうとしているわけでもありません。そのような二人が記録を残したいと思い、素人ながらに撮影編集した映像を上映します。
一生懸命に作りましたが、お世辞にも映像制作の技術は高くありません。少なくとも自分の作品は観ていて退屈になる部分もあるかもしれません。それでも、今回の上映をお誘いいただいたとき、自分たちの作品をぜひ上映したいと思いました。自己弁護のようですが、素人が生活の中で撮るセルフドキュメンタリーのような映像(場合によってはホームビデオでも良いかもしれない)には、それ特有の面白さがあると考えています。仮に映像としては退屈だったとしても、スクリーンには撮影者を取り巻く関係が現れてきます。編集者の思考が見えてきます。それゆえに、作家ではない人間が製作した記録映像を見ること、そして映像を観ながら製作者や観客と対話をすることは、とても面白がることができるのではないでしょうか。
今回、私自身も阿部くんの『夫沢』を観た上で、彼と対話をしたいと思っています。そのために、映像作品の上映時間と同じだけトークセッションの時間を用意していただきました。参加者の方々にも入ってもらって、色々な話をできたら嬉しいです。
私の尊敬する映像作家の1人である小森はるかさんは「自らが発信者になるのではなく、私が出会えた人たちと作品を見る人の『媒介役』になりたい」と自分自身のあり方について述べています。
阿部くんがどのように考えているかは当日ぜひ聞いてみたいですが、私は自分自身を「媒介役」だとは思っていません。今回上映する映像作品たちは、私たちが松本家の今を残したくて、あるいは松本家の歴史を知りたくて、調査・撮影・編集したものです。家が題材であるように、ホームビデオに近いものなのかもしれません。その上で、ホームビデオを出会った人たちと一緒に見ることがあっても楽しいと思っています。そうして、結果的に人や家や地域と観客を媒介できたらいいなと。それが作家ではない私が記録映像を作る現時点での姿勢です。
甘いと言われるかもしれません。何の意味があるんだと言われるかもしれません。それでも、映像に限らず、半分プライベートな記録が半分パブリックに開かれることには意味があると思っています。とはいえ、結構考えてきたつもりですが、その意味はまだ自分の中で上手く言葉にできていません。皆さんと半分プライベートな記録を持ち寄りながら、その意味を考えられると嬉しく思います。
ご興味ある方は、ぜひ12月15日に国立まで遊びに来てください。もしご興味あるけど来られない方がいらしたら、今後何かお声がけしたいので、ご連絡いただけると嬉しいです。当日を楽しみにしています。
日時:12月15日(日)14時ー17時
会場:カフェおきもと
〒185-0033 東京都国分寺市内藤 2-43-9
国立駅より徒歩8分 駐車場8台あり
HP https://www.cafeokimoto.com/
参加費:一般1500円、学生1000円(ワンドリンク込み)
*当日会場清算でお願いいたします。