自分ってなんもないな
今年から家具職人として京都で働いている。
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僕は人混みが苦手だ。
京都に引っ越すことが決まった時ももちろんその不安が頭の40%を占拠していた。
ところが東京に比べたら全然道は流れてるし、電車も空いている。もちろん休日の街中や観光名所付近は混んでいるけど、近づかなければいいだけのことだ。京都は混んでるところにわざわざ行かなくても十分暮らしていける。ちなみに僕が住んでいるのは京都市といっても一番上の山の方だ。
京都に来て新鮮に感じたのは、田舎と都会の距離感だ。都会なんて言うと田舎者丸出しなんだが、今住んでいるところは夜になるとウシガエルが鳴いているような自然豊かな場所なのに、車で30分も走ればアップルストアがある。衝撃だった。
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僕は大学を卒業後、地元の新潟にあるデザイン事務所に就職した。(就職したというより拾ってもらったという方が正しい)
仕事自体は全て初めての経験で常に新鮮な気持ちで取り組むことができた。
仕事を始めて一年が経とうとしていた頃、デザイナーという仕事についてある疑念に取り憑かれた。
「僕は一体誰のためにデザインしているのだろう。」
そんなこんなで一年半でデザイン事務所を退職した。要は性格的にデザイナーに向いていなかった。デザインするのは好きだ。だけど仕事となるとまた話は別だった。
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退職する一ヶ月前
僕は生まれて初めて自分のこれからについて真剣に考えた。あぁ、これが考えるってことかと再認識したくらいだ。
人生の分岐点。
まるで人生の分かれ道に立たされている気分だった。
分かれ道といっても道なんかない。暗闇だ。無数の可能性が広がっているだけで選択肢などない。
ひとつ言っておくと、やりたいことはいくらであったので八方塞がりみたいな状態でもなかったし、絶望的状況でもなかった。むしろ少しワクワクしていた。
料理もいいなぁ。写真もいいなぁ。
基本的に何かを作ること自体が好きなので、やりたいことが多すぎて困った。
これまでも将来のこと考える時間はいくらでもあった。考えるたびにこの悩ましい選択に行き詰まる。
そんな僕がデザイナーになろうと決めたのは、なんとなく自分がやりたいこと全てに関われるんじゃないかというなんとも欲望的な理由からだ。つまり打開策であり、自分の中での落とし所だった。
こんななんとも甘い選択してきた僕だったが、二十数年間生きてきてようやく「その選択は現実的であるかどうか」というフィルターを通すようになった。
さらに高校生の頃とは違い大学卒業し社会に出たことで、経験という判断材料を手に入れていた。
さまざまな側面から複合的に思考し、あらゆる可能性を検討した。
考えていた時間は一晩やそこらだが、僕なりに一つの答えを導き出した。
「家具職人になろう」
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改めて自分には何ができるのか考えてみた。
自分にあるスキルといえば、IllustratorとPhotoshopが一通り扱えること。3DCADの知識があることくらい。
しかし、いくらIllustratorとPhotoshopが使えても、膨大な3DCADの知識があっても実物の製品は作れないことにはもう気付いていた。
あれ、自分ってなんもないな。
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家業の兼ね合い/大学でやっていたこと/無心になってできること/手に職をつけたい/自分の為であり人に喜んでもらえることがしたい...etc
こんな感じの複数の要素を検討し、現実と照らし合わせながら答えを導き出した。
言うまでもなくまだまだやりたいことは山ほどある。
あくまで家具職人として技術を自分のものにして、それをベースに様々分野に領域を広げていこうと考えている。
この自問自答から一年半が経ち僕はは京都でようやくスタート切ることができた。
この自分で導き出した答えは今はまだ正解なのか不正解なのかは分からない。
ただこれからの自分の努力次第で正解にも不正解にもなることを僕は確信している。
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工房準備中 @craftsmans_harbor
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