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戦術家として振り返る青木シャオリン。蹴りをMMAに取り入れる優位性。

DREAM時代の問題作の一つに青木シャオリン戦がある。

寝技戦を期待されたにも関わらず、終始スタンドの試合をして、ありがたくも大ブーイングをいただいた試合です。いやあ。主催者にもめっちゃ怒られたけど、僕的には満足のいく試合だったし、ファイターとしても、戦術家としても自信がついた試合だったのだ。

この試合を説明するには、まずは対戦相手であるビトー“シャオリン”ヒベイロの説明をしなければならない。柔術世界選手権3連覇にして、修斗世界王者、ケージレージの世界王者も獲得していた世界トップグラップラーである。

ヨアキムハンセン、川尻達也、石田光洋に勝利していたし、敗戦のJZカルバンとの試合は投げ技決着でアクシデント的な要素もあっただけに、トップグラップラーとしての期待と地位は絶対的なものだった。

そこで組み技を中心に攻める特異なグラップラーである僕との組み合わせ。格闘技ファン注目のカードだったのだ。シャオリンの負けは打撃でのフィニッシュだったので、打撃がないとされている僕との組み合わせは純粋な組み技勝負になると考えられて、寝技ナンバーワン決定戦との見方が多かったように記憶している。

グラップラー対決はグラップリング勝負にはなりにくい

グラップリングを軸とする選手同士はグラップリング勝負にはなりにくい事実がある。PRIDEでミノタウロノゲイラとファブリシオがやったときもボクシング対決になったし、ストライカー同士の対決も見合いになったり、組み合いになったりするものなのである。

スポーツは戦術があるわけだし、騙し合いの要素が多分にあるから、面白いわけだ。単純な正面衝突もそれはそれで面白いけれど、工夫があるからスポーツは面白いと個人的には思っているのだ。

さてここで試合前に如何に戦術を練っていったのかを話していこうと思う。

最初から判定を視野に入れた戦術

最初から判定をを視野に入れて戦術を考えていた。
具対的にミドルキックで完封する試合をするところまでは考えてはいなかったのだが、スタンドでもグランドでもリスクを背負わずに1−0のゲームをしようと策を練ったのだ。

1−0のゲームをするのは点差が開かないゲームだけに、1つのダウンで試合をひっくり返されてしまうし、点差が開かないゲームだからこそのリスクは存在する。けれど、お互いに点数を取り合うゲームよりも勝利する確率は上がると考えて、1−0のゲームを仕掛けた。

結果的に1−0が2−0になり、3−0になった。結果論ではあるが、セーフティーリードを取れたところで更に戦況は有利に働いた。まさか僕の策にここまで乗ってくれるとは思わなかったし、蹴り続けてセーフティーリードをくれるとは思いもしなかったのである。策士として喜びを感じる瞬間だ。

この戦術を練り上げるにはいくつかのポイントがある。
それをここから丁寧に解説していこう。

蹴り>パンチが大前提にある

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