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『エスケープ・フロム・L.A.』愛すべきクソ映画に僕はまた出会ってしまった――今日の午後ロー感想(2022年7月1日)

(※トップ画像はテレビ東京「午後のロードショー」公式サイトから引用、キャプチャしたものです)

なんだかスゴイ映画を見てしまった。今もその衝撃の余韻に震えている……

フリーランスのライターです、と言えば聞こえはいいかもしれないが、独立して3週間ほど。仕事なんてそう都合よくあるはずもなく、昼間はだいたいテレビ東京『午後のロードショー』を見ている。

本当は食っていくためにバイトなりしなきゃいけないんだけど、ほら、今すごい暑いし、まだ慌てる時間じゃないと自分に言い訳しつつ、今日も午後ローで現実逃避だ。

午後ローのいいところは、これまで自分が興味なかったor知らなかったけど「実はとんでもない名(迷)作」と出会えること。7月1日もまさにソレだった。

『エスケープ・フロム・L.A.』

数多くのカルト的名作を送り出したジョン・カーペンター監督の近未来SF映画で、主演は『バックドラフト』や『ワイルド・スピード』シリーズでもおなじみの実力派俳優カート・ラッセルだ(個人的には『トゥームストーン』が好きです)。

大地震による地殻変動で米国本土から分離されてしまい、孤島となったロサンゼルス。終身大統領が誕生した新生アメリカ政府に背く者たちを追放する流刑の地となっていた。そんな無法地帯LAにある日、国家機密の破壊兵器が大統領の娘によって持ち込まれ、アメリカ転覆を狙うテロリストのボスの手に渡ってしまう。この危機を阻止すべくLAに送り込まれたのが、かつての軍の英雄であり、今ではアウトローの伝説となっていた“スネーク・プレスキン”だった――

とまあ、大まかなストーリーはこんなところだけど、注目したいのは主人公のスネーク。長髪、無精ひげ、左目には眼帯、寡黙に己の目的を遂行するハードボイルドだ。そして、その風貌、名前からも分かる通り、あの名作ゲーム『メタルギアソリッド』シリーズの主人公ソリッド・スネークのモデルにもなったキャラクターなんだそうだ。

そうした前情報をちょっと仕入れつつ見た本作品。だが、物語が進むにつれて、うん? ちょっとこれはおかしいぞ……と思うような場面が多々、現れた。

このスネーク、“軍の英雄”“アウトローの伝説”という割には、敵の罠によく落ちるし、よく騙されるし、よく捕まるし、なんだったら自分のドジでよくピンチに陥る。

なにせ政府の要人と対峙する冒頭場面からして
「盗まれた国家機密を取り返しに行ってくれ。命令に従わなければ致死性のウイルスをお前に打ち込む」
「俺がそんなものを易々と打たれると思うか?」
「実はもう打った」
「何!?(ついさっきすれ違いざまに女に引っかかれた場面を思い出して)あの時か……チクショウ!(と叫びながら相手に襲い掛かるが空振り)」
「残念。私のこの体はホログラムだ」
「何!?」

続く場面でも
「さあ、潜水艇だ。これでLAに行け」
「そうか、分かった(と言いながら政府の要人に向かって銃を乱射)」
「残念。私のこの体はホログラムだ」
「何!?」

と、こんな調子ですからね。そして、最新鋭の一人乗り潜水艇でLAに到着したのも束の間、自分の無茶な運転のせいで潜水艇が海底に沈んでしまいLAから帰る手段を早々に失っちゃうんだから、ここまで来るともはや微笑ましい。いや、むしろ可愛い。

まあ、たとえ敵に捕まったとしても、そこから機転をきかせて上手いこと脱出しちゃうから、そこは伝説の男の面目躍如。だけど、前述のようにすぐにまた捕まる、また逃げる、今度は敵地に乗り込む、またピンチになるという、まさにジェットコースターのような展開。しかも、脱出する、逃げる、敵地に乗り込む手段もバスケだったりサーフィンだったりハンググライダーだったりと、まともじゃない。そう、まともじゃないから、次は何が来るんだ?と目が釘付けになってしまうのだ。

そして、“まともじゃない”と言えば、もう一点。

場面のところどころでCGを使っているのですが、これはもうCGというよりも「合成」である。ほんと、雑なクソコラかと思えるような合成シーンの数々が次から次と来るもんだから、ストーリー展開も含めて「やっぱ、勢いって大事だよなぁ」と、妙に唸らされてしまうのだ。

CGに関して言えば1996年の映画なので仕方ない点はあるにせよ、このストーリーの勢いと雑コラ感はそう、大好きな『シャークネード』シリーズを僕に思い起こさせた。

ただ、シャークネードは“狙ったB級感”が前提としてあって、そうした雑さを分かったうえでコメディを楽しむ作品だと思うが、この『エスケープ・フロム・L.A.』は大マジメに作ったSF映画。なにせカート・ラッセルだけじゃなく、個性派として名高いスティーブ・ブシェミも重要なキャラクターとして登場するなど、出演陣も豪華ですからね。それなのに、この隠しきれないB級感はいったい何なのだろうか――

これが巨匠ジョン・カーペンター監督の作品、まさにB級映画としての“役者”が違うというわけか。

そして、冒頭の騙され続けたホログラムが実は重要な伏線になっており、「アメリカンスピリット」のタバコをふかしながら決めた最後のセリフも完璧。

「やっと人間に戻れたぜ……」

僕が胸の中でひそかに温めている「死ぬまでに一度は言ってみたいセリフ」リストにランクインしたのは言うまでもないでしょう。

いやあ、午後ローってホント、いいもんですねぇ。愛すべきクソ映画(最上級の誉め言葉)にまた出会えました。

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