非常時のネーミング 其の2~筋肉バカにもNCAA

かつてある議員が会見で
「政治家はもっと平易な言葉で国民に語りかけるべきだ。最近の政治家はとかくテクニカルタームが多すぎる」
などと言っていました。
 生前の母はそれを見て
「てくにかる…ってなんだっぺ?」とひとこと。
 箱を開けるための鍵がまた箱に入れられてた状態でしょうか?


 ネーミングの女王といえば東京都知事に再選されてしまった小池百合子さんです。

「東京アラート」「東京版CDC」「“爆速”デジタル化」「グレーター東京」「サステナブル・リカバリー」「東京版ハイライン」「フレイル対策の推進」「ソーシャルファーム推進」「ワイズ・スペンディングの徹底」

 彼女は有事下のリーダーといえますが、ヨコモジ多めの新語クラスターを見ていると、むしろ問題を解かないと爆発してしまう爆弾の前に座らされた気分になります。
 「東京版」って東京都知事だからでしょうが、「日本版」としてやらないとまたタテ割りになってしまうのではと心配になります。
 
ともあれ「東京版」「日本版」といっておけば元が存在するからわかりやすいでしょ?と、一応は配慮しているもりでしょうか。元については各自ググれとうわけでしょうが「ネット見ろ!」のアンジャッシュ渡部と同じやり口です(苦笑)
 だったら「グレーター東京」も日本版「グレーター・ロンドン」といえばよかったのに。

 日本版~が度々、提唱されるのは日本では「縦割り」に象徴されるように組織の類がことごとくダメダメだからでしょう。
 「日本版」が期待された組織で思い浮かぶのは日大アメフト部のタックル騒動でスポットがあてられた「日本版NCAA」の創設構想。
 あの事件もある意味、有事だったわけですが、どうなっているのか調べたてみたらユニバスという組織ができていたようです。

“日本版NCAA”とはほど遠い大学スポーツ統括新組織「ユニバス」の実態

ちなみにNCAAというのはアメリカの大学体育協会です。

 とりあえずビジネス化という視点で批判されているようですが、個人的にはそれより気になっていたことがあります。
「筋肉バカ問題」です。
その答えらしきものがありました。

日本版NCAAは大学スポーツを変える?「UNIVAS」発足1年目の成果と課題。
――鎌田会長の学生時代は、運動部ではない学生にも大学スポーツへの参加意識がありましたか。
 昔は今よりもはるかに、大学スポーツが盛り上がっていたと感じます。当時はどの学部にもレギュラー選手がいて、「英語の授業を一緒に受けている彼が出る試合なら、見に行ってみるか」というように運動部に所属する学生と一般学生との接点が多くありました。だからこそUNIVASでは、競技と学業を頑張っている選手を表彰することで~


 依然として「文武両道」は特殊な例という扱いのようです。(アスリートは授業には出ない前提)
 NCAAルールではそもそも学業をおろそかにさせないシステムになっているのでそもそも「文武両道」などという発想がないのです。
 日本の筋肉バカシステムが
「ボクはプレイすることしかできないので…」
などという不気味な常套句を生み出したのでしょう。
 海の向こうでは、日本のそこらへんのローテーションピッチャーよりよほど「高額な肩」の現役クォーターバックがハリケーン被害への救援物資の積み下ろしを現場で手伝ったりしていました。
 日本のガラパゴスなスターシステムは
いまだいる4万人の被災避難民を無視して「五輪自国開催」にうかれるアスリートや、
 世界中のアスリートから「練習もままならないので中止すべき」と声があがっても
「そもそもスポーツは不平等なもの」と開催強行を熱烈支持する高校教師メダリストや国民栄誉賞アスリートを生み出してしまいました。(有名人教育者の考えは次代へと継承されていくのでしょうか)

 大学時代、ある教授が
「おれはちゃんと出席しないやつは野球部だろうと単位はやらん」と口癖のように言っていて「スポーツ選手は広告塔」という日本の常識に洗脳されていた私は単純に非道いと思ってしまったのですが、授業にもちゃんと出させて、ビジネスでも莫大な収益をあげているNCAAとどちらが正しいのかは自明というものです。

 NCAAといえば、日本がバカなのか、はたまた向こうがビジネス上手なのか、1980年代にはNCAAスポーツドリンという横文字かぶれにもほどがある製品が売り出されていました。向こうのカレッジスポーツの先進性にこの時に気づいていたのであればよかったのですが、興味があったのはロゴだけだったようです。

 このCMコピーを書いたのが、あの糸井重里氏だというのはなにか日本の歩んできた道を象徴するようです。
 かつてはEテレでMCもつとめたことのある文化人タレントだったこのお方はバブル全盛のころ、天気予報のコーナーだけのためにハワイに行ったと自慢げに話しておられましたが、常識的な感覚の共演者が「なんでそんなことをしたのか」と問うと
「だってお金があったんだもん」という●●みたいなお答え。
 一回のドライブをやめるだけで、一世帯の1年分のレジ袋分の石油が節約できるといいますから、このハワイへの移動でどれだけの石油が…。
 山瀬まみさんもバブル期の思い出として、ロケどころかスタジオですみそうなCMをわざわざオーストラリアまで行って撮ったと告白していましたが、彼女の場合は糸井氏と違いちゃんとバカげていたことには気づかれていたようです。

 糸井氏はいまも活躍しておられますが、よくも悪くも日本の価値観を作られた方かもしれません。そもそも80年代はコピーライターなどの広告マンが憧れの職業でした。

 はからずも「逆説的」にコトバの持つパワーを裏付けたカタチですね。つまりネーミングの意義も証明されまたカタチです。これから逆襲がはじまります。

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