Midnight Hero ─あるいはクラブで酔いつぶれた俺が異世界に召喚されて救世主になる話
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Midnight Hero ─あるいはクラブで酔いつぶれた俺が異世界に召喚されて救世主になる話

〈エピローグ〉

「じゃあ、これでお別れだ」
三日三晩続いた宴は強烈な頭痛を置き土産に残して去った。二日酔いに始まったこの冒険が二日酔いで終わるのもまた道理。こちらの世界にいられるのももう僅かだ。
彼女は俺の言葉にそうね、と言って俯く。
夢から始まった夢のような日々は紛れもなくREALだったが、俺にとってのREALはここではない。帰らねばならない。そう、誰もが理解っていた。

だが辛気臭いのは性に合わない。だから別れの歌を歌う。歌、唄。否、詩。
─リリックを。俺自身による叙事詩〈Winning Rap〉を。

飲みすぎてゲロ吐くなんて日常 それでも生きようと必死よ
ガラガラのフロアで15分のライブ そんなときこそ際立つライム
手応えはないけど絶え間ない酒とマイメンが解決為せば成る
そんなサイクルで沸き起こる睡魔 今夜の寝床は便所の隅だ

目を覚ますと知らない天井 頭抑えて把握する現状
ふと見渡せば周りに祈祷師 あまりに非常識で非合理 脳裏に
浮かぶこれは幻覚か夢か それなら思い通りに No Limit
正直夢だと思いたいが 悪酔いでしっかり頭は痛いな

奇怪な格好のいたいけな姫が 世界を救えと嘯いて曰く
俺のラップの韻とフロウが 戦意上昇つまりバフ効果
その力使って民族浄化? 何言ってんのかわからないが
馬鹿騒ぎが取り柄の一介のラッパーが時代飛び越えフリースタイル

武器は押韻 やり口は強引 言葉のウェイトで異世界掃除
動員は増えたがオークとゴブリン 当然叩き込んでやる病院
踏み倒す韻 作詩家の行進 桃太郎みたく鬼倒す超人
刀身のように研ぎ澄ます脳筋 常識超える言葉の魔術師
誰にも縛られない自由が 狙いすました銀色の銃弾
剣と魔法はナシで蹴散らした軍団 見届けろ俺が本モンの勇者
見送れよ俺が本モンの勇者

物語はこうして終わる。だが生活は続く。次のライブでは仲間や観客に度肝を抜かせる。その時俺はきっとこの世界に思いを馳せる。

【続く】

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