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世界の歴史シリーズ:アメリカ合衆国 ─ 多民族社会の光と影 〜失われたサラダ・ボウルとしての未来〜

 人種のサラダボウルというのは、かの大国アメリカを象徴する代名詞のひとつであった。
 トマト、レタス、キュウリにオニオン。様々な種類の野菜が混ざりあい、それぞれの持ち味を活かしながらサラダというひとつの料理として存在するというそれは、文化的多元主義の象徴にして合衆国を表すキーワードとして知られている。
 実際、人口の多数を占めるのは白人ではあったが、ネイティブ・アメリカン、黒人、ヒスパニック、アジアンと、多民族国家としてのアメリカは未だ健在である。
 一方、人種間の差別や争いは絶えず、近年は自文化中心主義・排外主義を唱える論者やナショナリズムを掲げる政治家の煽動により、摩擦はより大きく、断絶はより深くなってきていた。

 しかし、この社会情勢に異を唱え、涙を流さんとするものがいた。
 ご存知、自称アルファ・ケンタウリ星人その人である。
 2020年、ケンタウルス座α星から来たと喧伝した異星人は、当時単一民族の割合が1番多い国であった日本を『面白みがない』の一言で焼き尽くした後、合衆国大統領に人種の多様性を維持するよう要請した。

 どこでどう何を間違ったか甚だ検討もつかないが、『人種のサラダボウル』をそのままの意味で、つまり"様々な種類の食材が混じり合う宇宙で評判のカラフルな映えメシ"として捉えた宇宙人は4.3光年の距離を近所に出来た話題のカフェに行く気軽さで来訪し地球を支配した。
 そのリーダー格は、より多数の移民を迎え多くの人種が平和に健やかに暮らすことができる環境を整えるようアメリカに求め、現水準を下回ったなら直ちに大陸を消し飛ばすと言った。
 しかしそれが『食通』としての美味いものを最高の状態で食いたいという純粋な欲求から来た命令であり、彼らが満足した瞬間にアメリカの人口はゼロになることが明白であったため、怪しまれないように多民族共生社会を推し進めつつも比率を調整する大使が選定された。
 そう、私である。

【続く】

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