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【映画感想文/ネタバレあり】HELLO WORLD、思うさまに語ってやりましょう。【2019年9月】

これまでのあらすじ:
映画HELLO WORLD、あまりによかったので異例の前後編だよ!
一回寝落ちしたけど熱はまだまだ冷めない。いいものを観たからだ。いいものを食べたら身体はカッカするし、いい温泉に入ったらぽかぽかする。同じだ。いい映画を観たらずっとドキドキするんだ。
前編・ネタバレなしの布教用良さ語りはこっち。

もうみんなは映画観たよね?
ここからはネタバレありだ。手加減なしボカシなし。
思いつくまま”語ってやりましょう”(すでに泣いている)。

天からの羽・君からの栞

「天から落ちてくる八咫烏の羽」、つまりは「天からの導き」という象徴なんだけど、これが黒だったり金だったりする。

「確定した世界(黒)」からの福音がやってきて、物語が始まる。
「黒」は未来なんですよ。「白紙の未来」の反対だからね。
八咫烏の羽、黒が”現在”に混入するんです

そして物語が進んで、羽が金色になる。希望の象徴ですね。
そして「金」、直美が「ナオミに『駄目だこりゃ…』ってされた一つの象徴」でもあるんですよね。鉱物系を特にグッドデザインしていたけど、金は特に「やれやれ…」って顔をされてた。ダイジェストだけど。
金を以て、彼と共に鍛えた力でもって、ナオミを超える。現実を超える。まさに「次の世界」「新しい未来」への色。

そして「栞」。直美と一行さんを繋ぐ「差し込まれたもの」。
栞はある意味で、切っ掛けの象徴、やり直しの意味としてこれ以上ないキーアイテムだ。
栞という「やり直し」は、最後に白と黒の紙片になって散っていく。「中断点」は失われて、原初の混沌・モノクロになって、散っていく。やり直しは終わって、誰も知らない新しい世界が生まれていくことの象徴。

自己啓発本「決断力」

・誰かに決めてもらうな:先生の指示を超えていけ

・直観を信じろ:あの穴の先に世界がある?飛び込め!

・周りの評価を気にするな:自分がただの駒という事実を踏み越えて戦っていく

直美の持った最初の課題は、3ヵ月の中で克服されていくのだな…。

手紙、Wiz、少しずつ近づく距離。

住所をさらりと書く手際のよさと字の綺麗さで育ちが伝わるし、電話番号じゃねーんだ…という天然さでカワイイも伝わる。ウム…。
連絡ありがとうございました。も口頭で良いだろうにわざわざ達筆でね…。

そしてRuriのいるWiz最高。そりゃWizのアドレス交換したらニヤつくよ。だうんろーど、どうやってするのですか?的なやり取りがあったんだよ。最高。

ねじりパン

「捻じれパン」じゃなくて「ねじりパン」なんだよね。つまり、「世界は意図的に捻じ曲げられていく」という、彼らの暗躍を意味している。

やってやりましょう。

いいセリフだよねホント……。一行さんの「上手くいかないことはたくさんあるけど、諦めないしきっといつかうまくいく、成し遂げてみせる」という強い意志!美しい!『険しきに挑み、決して諦めない』小説から学んだのか、本の虫だったお爺さんから教わったのか……綺麗で品行方正な一行さんが言うにはちょっと蓮っ葉でギラっとした台詞が、絶妙にミスマッチでベストマッチ。

で、一行さんの「やってやりましょう」が先生の「お前なら出来る!自分を信じろ!」になって、直美の「まだまだイケますよ!この化け物を今すぐやっつけて!!」「大丈夫。やってやりましょう」になる。

強い意志が伝播する。愛と恋でひとは変わる。美しいなぁ!!

るーりー?るりりん?るりちぇりーな?

なんだっけ。詳しくは忘れたけど。勘解由小路さんがもう…とことん天使…最高。

直美と一行さんが近づいてるときに物陰にいつもいたり、おやおや?って感じで直美を煽ってたり、可愛くってかわいくって……いい…。

「るーりー!なんでこんなところにいるの!」って、アリスに着替えさせて、最後には直美のところに行かせたんだよね…。着替えようとしたところで「着替えるより先に堅書くんのところ!」って背中を押してくれたんだろうな……。

小説「勘解由小路if」が存在するらしいですよね。読んでないけどもう泣きそう。

私は、冒険小説が好きです。

冒険へのあこがれを語りながら、「」を映すんですよね。近くの薄ではなく、遠くの月を。険しきに挑み、その先の宇宙へだって。昼間の月のように朧気で頼りない夢であっても、決して諦めず。そういう…一行さんの心の強さが描かれるカットで、「雲が交わってズレていく」。世界を示すカットだ。

ていうか「月を映しながら『諦めない』」って”イチギョウルリ”の本質、最後の最後への伏線だ……なんて美しいんだ。

SFが、好きなんです。

「評価を気にしない」「自分で決断した」瞬間!いい…直美…きみはいい少年だ…。

「俺の言う通りすればいい、但し不測の事故から彼女は守れ」というのは、よくよく考えたら狂った物言いでな。不測のラブコメイベントにも対応しなきゃいけねーんだぜ先生!

「SFとは日常の先にあるもので、僕はエキストラだけど、素晴らしい世界が地続きにある」は、SF趣味者としては頷き続けるしかない。

本運び

勘解由小路さんが台車を引く直美の隣で応援しているの、可愛いけど切ない。

運び終わった後で勘解由小路さんが一行さんの手を取ってぶらーんぶらーんしてるの可愛いんだよな……一行さんされるがままかよ…!

本をグッドデザインする。

「自分で決断する」の極致。神としての自覚の第一歩。

ぐちゃぐちゃの本の中身を『手本』に沿って作り直す」ことはナオミの計画の縮図で、本質的な部分で彼らが同一人物であることをよく示していたと思う。

でもそんな小理屈じゃなく「ただ必死に彼女のために命を削る」のが共感を呼び、先生の協力に至るわけだね。ズレが大きくなろうが、知ったことか。

で、貸出カードの一番上!粋!!そういうとこだぞ直美ィ!!!

あと、必死に頑張って疲れ切った人がヒロインに倒れ掛かって寝ちゃうの大好き。セナお前のせいだぞ小早川お前!!!!セナ鈴!!!!

交際というモノは一人では出来ません。二人で、やっていきましょう。

はーーーーー!!!!!!!ぁかわいいーーーーーああぁぁ!!!!!!

「不思議の国のアリス」の衣装は一行瑠璃という存在の「伏線・示唆」っていうの、パンフレットに書いてあったんですけど、上映中はただただ「カワイイ……」「好き……」「恋の穴に”落ちた”直美を追いかけて一行さんも”落ちた”んだな……」って思ってたんですよね。

は~~~なるほどな~~~って。確かに入れ子の内側に果敢に飛び込むものだわ……。

衣替え

最初はぶかぶかで、冬服(役目)に着られるだけだった直美。

決戦の夏には、己にぴったりの夏服で挑む。

肉体の成長であり、精神の成長であり、使命と感情の同調なんだ。

金(Au)!

時間をかけて出せて喜んでるようじゃダメだ。即座に問いかけてすぐ出せないと!……ダメだこりゃ。

こういうさり気なく「修業はレベルアップしている!」って描写好き。

及第点だ/持たせるぞ!右30度!/影響なんて気にするな!思い切りやれ!!/……やったな。

努力を認める!戦場で煽る!指示も的確!そして……超必殺でフィニッシュだ!!

バディでのバトルが見事に結実した瞬間なんだよね。あ~~~もう純粋に自分と自分のバディミッションとか書きたい~~~!!

稲荷面

こわい。「首から上がない」ことは死者の暗喩として、記録の中の世界で「生命の理屈の外の番人」というわけだ。

不完全な神の使いは、不完全な神――直美とナオミ――を赦さない。生命のルールとも、クロニクル世界のルールとも違うシステムに従っている。

「生命」じゃない。そして神に従う聖なるキツネでもない。ただ「システム上の神」に従う「異形」。首がない、不格好な人形。

本気の稲荷面は「単眼」だ。キツネは獲物を狩るのに焦点を合わせやすいタイプの目の配置をしているが、それを放棄している。「とにかくすべてを食らって消す」。そういう怪物なのだ。

かごめかごめ

一行さんと直美を転移させる「管理者権限の好き勝手」の一端。

かごめかごめ、籠の中の鳥は、いついつ出やる。
夜明けの晩に、鶴と亀が滑った。
後ろの正面だぁれ。
京都クロニクルに囚われた二人の魂は、アルタラの外へ出ることは出来るのだろうか。
開闢の朝焼けが訪れて、悠久の歴史の記憶は崩壊した。
知っていると思っているそれは、もう知らないものだ。

つまり、これ「二人が外の世界に出た時、セカイは崩壊し、似てるけど全く違う世界が出来上がる」って意味じゃないかな。

そして、そのメロディも遊びもなく「ただ囲った」ことで、逆説的にその可能性を稲荷面が潰そうとしてる、とも言えますね。

ふるいにかけて、リカバリーしよう。

セカイが記録でしかないことが否応なくわかる瞬間。無慈悲!

物語の主人公であっても、一瞬は神の手であっても、その恋焦がれた人であっても、セカイにとっては優先度が低い。「僕はエキストラ」ということを突き付けてくるシーン…。

記録の中に生きている直美と一行さんを知っているナオミが、それでも処理を実行するのが「もう戻れないし、戻らない」強さを感じていい。

あちらとこちらの境目

映像やばい!色彩感覚!!「2001年宇宙の旅」みたいなパワーがあった。

考察するには少しどころじゃなく材料が足りないけど、つまりは「精神=膨大なデータすら正しく在り続けられない危険領域」ということだ。

そんなところに捨て身のアクセスしてるんだから、そりゃ左下半身不随にもなるよな。

お前は彼女が欲しい!/あなたは彼女が欲しい?

同じフレーズが違う意味になる演出、地球人全員が愛してやまない。(主語が適正サイズ)

未来のナオミの「お前はガールフレンドが欲しいんだろ?手伝ってやるよ」と、カラスの「あなたは一行瑠璃さんが大切でしょう?欲しいんでしょう?あなたの恋情愛情は本物だって、知ってますよ」を同じフレーズで語るの、上手いよな~~好き。

あなたの3ヵ月の頑張りを見続けてきた、ただの烏です。

こんなの釘宮ボイスで言われた日には死ぬ。死ぬに死ねない。生きる。

無言のグー。

神じゃなく、ひとりの男として一人の男を殴る。素晴らしい。

「左手で殴る」んじゃなくて「烏を外した右手で殴る」んですよね。
貴方と握手をした右手で、あなたを殴る。あなたを信じたのと同じ純真さで、裏切った貴方を裁く。直美は真っ直ぐ。

貴方は私を愛してくれていたのですね。……ありがとうございます、さようなら。

ひとりのひとを応援して生きてるオタクとして、あのナオミに感情移入するなという方が無理。

純粋で危険で必死で独りよがりな愛を、それでも受け止めた上で、きっぱり切り捨ててくれる一行さん…

愛って、とってもきれいだけどとっても恐ろしいものだと思うんですよ。圧倒的で絶対的なパワー。「根源的な本能」でありながら「超越的な理性」でもある。そういう混沌は時に暴走してしまう。その果てが今回の「先生」だ。独りよがりな「愛」は、目覚めたイチギョウルリに否定される……けれど、彼が純粋な「イチギョウルリを助けたい」という気持ちに立ち返ったとき、彼の愛は認められたんだな……。

前編でも書いたように、彼は「世界よりも愛を選んだ」。
何を捨ててでもイチギョウルリを取り戻そうとしたけれど、一行さんを包む世界……子供・直美とか、高校時代の平穏とか……までも振り払って、全てを踏みにじるような「反則技」は、もはや普通の愛ではなかった。ナオミは一行さんじゃなくてイチギョウさんを観てるんだから、目覚めた一行さんの魂はナオミを受け入れなかった
ナオミは直美に殴られて、自分の行いを見直した。そして根源の願い、「一行さん/イチギョウさんが笑顔であること」を求めて……彼は走った。純粋に、ただ純粋に彼女の幸福を求めた。一途な想い、純粋な想いが「直美」へと回帰して、本当の「俺と僕の一人で二人のバディ」になる!

その果てに……「愛してくれたのはありがとう。だけど、私は貴方のイチギョウルリではない」と……拒絶されて……「無力な僕」になってしまうんだな……。

ちゃんと引導を渡してくれるの、いい……。ごめんなさいとは言わない、凛とした別れ……感謝を遺す愛おしい別れ。

乗れ!/グッドデザインで、俺を。

だけど「無力な僕」が最後の手段として「グッドデザインで俺を」と言った時、直美は「自分を信じている!」って言うんだよな。

自分の存在がゆらぎ、最後の望みを失った状態で、未だ諦めない直美。
初めて出会ったときは、ナオミだけが願望を持ち、直美は揺らいで流された。

師を超えるのが弟子の仕事で、大人になっていくのが子供の輝き。そして自分と自分。構図の逆転!成長が目に見えるのいいよね…。

「世界よりも愛を選び、愛よりも世界を選んだ自分の欲よりも、直美と一行さんの愛を選んだ」ナオミの決断。
「幸せになれ、俺は幸せだ」、つまりは「あとはお前がやれ」と、ノートを以て道を示して操った大人が、握手と共に本当に対等な立場として、改めて最後の、心の底からの「先生」としての言葉を遺していく。
磔(っていうか串刺し)にされた罪人は、それでも未来に、自分以外に希望を託す。

すべては直美のために。すべては一行さんの笑顔のために。
ナオミが純粋な欲望に立ち返った、集大成ですよ。

あの一言に至るまでの物語なんだよな。

しあわせだって、胸を張って言える人生、やってやりたいですね。

日本語では『開闢』って言うんだよ。

千古教授の大人っぷり。

千古先生は途方もない計画と夢に立ち向かうために、あえて少年ぶっているけど、ちゃんと大人なんだよね。パンフレットが言うところの「大人になるにあたって捨てたモノ・得てしまったモノ」を認識して、再獲得なり拒絶なりしている。だから大人も子供もできる。そんないかれたオヤジをできるのは? 子安武人だよ!!

そんな彼が、いわば「もう一つの世界」の暴走、自分が生んだ子世界の叛逆を受け入れて、自由にした。新たな世界が産まれることを許容した。懐がでっかい……。

ここより住みやすい世界だといいねぇ。

誰も知らない、新しい世界です。

まさにHELLO WORLD、過去と未来が交錯した先に生まれた世界!新たな世界の開闢。

神の権限を喪った直美と、イチギョウルリと一行瑠璃が重なり合った一行瑠璃。歪な二人が、これから幸せになってくれるのだろう――希望をもってお終い。


映倫


やって、やりました。

映倫挟んでからラストシーン、見事。

結局、本当の世界(月面から作った世界(カタガキナオミの世界(堅書直美の世界)))って入れ子構造だったんだね。

だから「カタガキナオミの世界」にも稲荷面は現れた。堅書直美の世界の稲荷面は、世界の枠を飛び出して「実質的に同じ世界」で暴れてたわけだ。

時間の流れとしては「月面で事故?→高校時代を共に過ごした京都のデータがある→京都の過去データに干渉(一行烏が侵入)→カタガキナオミ、堅書直美の世界へ→本編」かなぁ?やばいなこれ。

細かいSF的な考証はもう少ししっかり考えたいところだけど、今はとにかく「やって、やりました」が全てなんですよ。万感の「やってやりました」。

一行さんがどんな思いでひたすらに険しきに挑み、決してあきらめなかったのか。思いを馳せて果てがない。
自分一人で解決しようとしたカタガキナオミと違って、一行さんは千古研究チーム全員を味方にしてる。あんなに、人付き合いが難儀だった彼女が!こんな私情だけの研究を認められるように!(まぁ一つの臨床実験、先例的実験として許されたのかもしれないけど)
一行さん頑張ったな…「やると決めたからには」だよな…。

一方的な献身を、だけど双方向的にやってる。愛と呼ばすに何と呼ぶの?
そんなものを魅せられたら言う言葉はたったひとつだ。

しあわせに…なれよ。

EDで。/パンフレットで。/これからのこと。

エンディングでなんかさ…プレゼント交換してなかった?その辺もうちょっと詳しく聞かせてくれない?

あとパンフレットによると「尺の都合で泣く泣くカットした『一行さんのお誕生日会』」があるらしいけど、それは円盤特典になったりするんですか?

ねぇ!!もっと錦高校でふわっふわあまっまのラブコメを見せてよ!!!
カタガキナオミ&イチギョウルリ&千古研究室でワイワイするやつもくれ!!全部ください!!

おわりに

世界よりも愛を選び、世界よりも愛を選んだ自分よりも大切な愛、大切な人を選ぶ」そんな純粋な愛の物語だった。

どんな困難だろうが踏み越える。無理なんかじゃあない。無理だろうがやる。やると決めたからには、やってやりましょう」そんな冒険の物語だった。

世界は世界の延長線。技術は日々進歩して、セカイは日々アップデートされて、変化して変質して変容して、その素晴らしい何かのなかに、僕はいる。エキストラだとしても、エキストラじゃないとしても」そんなSFの物語だった。

人は愚かと呼ぶかもしれない。妄執と呼ぶかもしれない。盲信と呼ぶかもしれない。蛮勇と呼ぶかもしれない。自己満足と呼ぶかもしれない。

だけど、愛は全てに勝つんだよ。決意は全てを乗り越えるんだよ。希望は全てを照らすんだよ。

新しい世界を見せてくれる。この強い気持ちは。

新しい世界を見せてくれる。新しい世界へと、今の世界を引っ繰り返してくれる。この、大切な気持ちは。

願わくば、僕もそういう世界に触れていたいし、そういう世界を描いていたい。僕の中の精一杯の愛と、決意と、希望で、みなさんに新しい世界を魅せられたらなぁ、「俺」に新しい世界を魅せ付けられたらなぁ、ってね。

ありがとう!HELLO WORLD!



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