【テレ東】知らない人んち第一話「光る点、ひとつ」
こちらの企画への投稿です
がらり。和室の戸が無作法に開かれる。『自分たちの家』なのだから当然と言えば当然だが。
「ひゃい!」
「きいろさん、ご飯ですよ」
「……ご飯?」
きいろを呼んだのはキャンだった。きいろが思わずスマホを確認すると、15時を過ぎたあたり。強いて言えば昼食だろうか。
違和感はあった。が、バイトをクビになり昨日の晩から何も食べていないきいろは、15時も10時も5時も空腹だ。一般的昼食から3時間遅かろうが、一般的夕食より4時間早かろうが、誤差の範疇。きいろは促されるまま部屋を出た。勿論、録画は続行している。
ダイニングでは、既にジェミとアクが食卓に就いていた。ちょうど準備が整ったところといった具合で、二人を急かす様子はない。
が、きいろをじろりと見、その上で二人で意味深なアイコンタクトをしている。アクとジェミの間で、何かの同意、あるいは最終確認が取れたらしい。
食卓には、豪勢な食事が並んでいる。きいろが来てからでは用意の出来ないような、手の込んだものもある。……まるで、もともとこの日が何らかの特別な日であるようだ。
「すごい、豪華な……本当にいいんですか!?その、なにか、特別な日……だったんじゃ」
「えぇ、まぁ……特別な日よ。だから、きいろさんとも一緒にお祝いしたいの。いいでしょう?」
「先ほども言ったでしょう? お客さんなんですから、気兼ねなくもてなされてください」
「ありがとうございますぅぅぅ……!!」
スマホのカメラに向かって号泣するきいろ。
彼女を見る三人の視線は、どこか冷静で、冷徹だ。
「さ、冷めないうちに食べましょう」
☆ ☆ ★ ☆
あんなにあったご馳走も、食べ進めれば消えるもの。空腹の極致だったきいろと、意外と大食いのアクが同時に最後のひとくちを嚥下し、無事完食と相成った。
キャンはもうドリンクを片手にまったりモード。ジェミに至っては、しばらく前に席を立っていた。暗室ですることがあるのだと言う。
「ごちそうさまでした……。いやほんと、ありがとうございます。ホントは私が出前を取るはずで」
「いいんですよ、きいろさん。だって……」
気の抜けた様子で言うキャン。その彼女を、アクがじろりと睨む。
その意味を理解し、びくりとしたキャンは言葉を切って、すぐに言い直した。
「ううん、ミニー。だって私たち、もう一緒に暮らす星の子じゃない」
「……え?」
部屋中に架けられたいくつもの星座図で、黄色の星、ふたご座<ジェミニ>のポルックスが輝いている。
冬の空は、もうすでに暗くなりつつあった。
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