上伊那ぼたんを今のうちに読んでおこうという話

1月20日に単行本1巻が発売する『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』を、百合と酒の視点から紹介し、興味を持ってもらえたらいいなという思い。

本作は「塀」氏による漫画である。上記リンクからお読みいただいたら、この先を読む必要は無いので、是非漫画を読んでいただきたい。


百合漫画として

さて、単行本の1巻発売を20日に控え、それを過ぎると序盤と最新話以外は読めなくなることがアナウンスされているので、今この瞬間が一番手軽に楽しめるラストチャンスと言っても過言ではない。

この作品は、百合的に言えば、「酒を覚えたての女子大生が、酔いに任せたり任せなかったりしながら年上女に迫る」話だ。そのふたりを中心としながら、周辺の女性たちとの関係がなかなか面白い。

何より、お酒初心者の「上伊那ぼたん」と、お酒に詳しいがとある理由でひとりで飲みたがる寮長「いぶき」との間に持つ関係が良い。お互いに近づくスピードが回によって違い、またぼたんだけからの矢印でもないのが良い。特に9話はそれまでの集大成となっている。10話以降の周囲の関係がどうなるか楽しみでならない。

また、小さな秘密の共有は、百合を引き立てる最上のエッセンスのひとつだ。それは彼女たちの秘密をのぞき見る読者にとっても同じである。お酒によって秘密が僅かに紐解かれ、知るべき人のもとへ届く。それを見守る読者もどこか共犯者じみた心持ちになる。これによって、読者は次元を越えて、上伊那ぼたんの世界の一部に自然と溶け込めているのでは、と個人的に思っている。

お酒の役割

登場人物たちは基本的に同じ学生寮の住人でありながら、スポットされるつながりはお酒によっている。なんとなくイメージされる「女子大生だから」的なものは、彼女たちの若さやコミュニティが生み出す強い関係に基づく。なのでこれは確かに「お酒によって生まれる、女子大生たちのドラマ」だと言える。

物語の内容については、是非読んで新鮮な気持ちで受け止めてほしいので、ここでは詳細を省くが、そのキーとなるお酒方面から少し話していきたい。

彼女たちが9.5話までに飲んでいたお酒は、「ハイボール、ロゼワイン、日本酒、スパークリングワイン(白)、地ビール、芋焼酎、アブサン、IPA、ホッピー、モヒート」とバラエティに富んでいる。それ以外にも色々なお酒の瓶が作中に見え、知っているラベルが出てくると楽しくなる。

彼女たちは基本的にお酒に詳しいわけではないので(寮長を除く)、飲むもの選ぶものが、いかにも「お酒を知らない感じ」がするのも個人的に良いポイントだと思う。その割にカクテルではなく、単品で出てくるのもいい。なぜなら彼女たちはほぼバーなどで飲まず、寮や観光地でお酒を手にするからだ。そこもまた、「場」よりも「酒」を中心にした物語になっているように感じられる。

寮長からは、聞いたこともない銘柄を差し出され、他の子たちからはカジュアルな「らしい」ラインナップを見る。そのあたりのバランスも、物語の現実感を引き立てている要因ではないだろうか。

百合と酒のマリアージュ

それが結果的に、百合の実在性を高めているように感じる。
「今この瞬間も、彼女たちはお酒を飲んで、上伊那ぼたんにそれっぽいことを言われてどぎまぎしているのではないか」と思わせるだけの説得力が、この漫画にはあるのだ。

古びた木造の寮に住む女子大生たちが地に足をつけている一端を、様々なお酒が担っている、と言っても過言では無いはずだ。

従って、読者と作中の世界をつなぐ役割を、お酒が担ってるとも言える。
彼女たちがお酒を飲む時、また読者も同じものを飲み、そこに上伊那ぼたんを見いだすのだ。
酒を触媒として、上伊那ぼたんは現実になる。


さて、拙文で果たして効果があるかはわからないが、今一度リンクを張って締めとしたい。

なお1巻の発売は1月21日なので、書店特典を考慮しつつ、店頭、通販、電子書籍等好みの媒体で手に取るのをオススメしたい。

まとめ

酒を覚えたての女子大生が、酔いに任せたり任せなかったりしながら年上女に迫る」「お酒によって生まれる、女子大生たちのドラマ」が本作であり、作中に登場するお酒を(飲める体質の方、年齢に達している場合に限る)片手に読めば、「今この瞬間も、彼女たちはお酒を飲んで、上伊那ぼたんにそれっぽいことを言われてどぎまぎしている」姿を目の前に描き出すことができる、百合好きのみならず、お酒が好きな方にもオススメできる素晴らしい漫画であると思う。

お酒は好きだが百合は詳しくない(そして抵抗感もない)人や、百合は好きだけどお酒は詳しくない(だが興味はある)人にとって、それぞれの世界へと誘う道しるべにもなるだろう。

まだ20日になっていないのならば、今すぐwebで全話を読み、過ぎていた場合は、コミックスを手にして読んでいただきたい。
願わくば、上伊那ぼたんが長く続く作品となりますように。



おまけ

作中で彼女たちが飲むお酒を、一応リストアップしておく。すべて、(おそらく)(多分)と頭につくと思っていただきたい。(自信が無い)

1話
・イチローズモルトのハイボール

2話
・秩父ワイン 巨峰 ロゼ

3話
・秩父錦 純米大吟醸(日本酒)

4話
・謎の白のスパークリングワイン
 「白ワイン スパークリング」でイメググってそれっぽいラベルの『ロジャーグラートカヴァ・グラン・キュヴェジョセップ・ヴァイス』かな?と思ってみたり…

5話
・秩父麦酒 ペールエール華熊(エールビール)

6話
・六代目百合(焼酎)
 秩父の酒屋にて

7話
・アブサン エメロード
https://www.absinthes.com/en/absinthe-emeraude-p2323
名前でぐぐっても出てこないこっちの方だと思う

8話
・ブリュードッグ パンクIPA
 我らがブリュードッグのIPAを瓶で(缶もある)(パンクIPA以外にもたくさん種類がある)
 まさしくグレープフルーツの爽やかな香りと軽い口当たりで無限に飲める
 実際のところ苦みはそれほど感じない……と思った
 苦み的なものが全部爽やかさに繋がるエールビール(個人の感想)

9.5話
・伯楽星(日本酒)
・ホッピー(焼酎と混ぜて飲むもの)
・モヒート(ラム酒をベースにしたカクテル)


個人的に一番手軽に入手可能なのはパンクIPAだと思う。最近は一般的なスーパーにもクラフトビール、海外ビールコーナーがある場合もあり、そこにだいたい置いてあると思われる。
ツイッターに上伊那ぼたんといってパンクIPA等の写真を上げるのが流行ってるようなので、もし手に取る機会があれば、つぶやいてみるのもいいのではないだろうか。

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