松本薬夏

俳人。 俳誌「撥条」代表、ゆうぎり句会主催。公益社団法人俳人協会会員。 大阪の下町で俳…

松本薬夏

俳人。 俳誌「撥条」代表、ゆうぎり句会主催。公益社団法人俳人協会会員。 大阪の下町で俳句を詠みお酒を呑んでいるだけの女です。 通販→ https://yakkam.booth.pm/ URLまとめ→ https://lit.link/yacca

マガジン

  • 薬夏と小雪の書評空間

    小雪さんと松本薬夏による読書記録、合同企画。読んで、考えて、言葉を綴って。

  • 酩酊日記

    酔いどれ薬夏の冒険。

  • 纏わる微熱

    ── 女流俳人の足音を追って ※『火星』にて連載していた随筆の加筆修正版及び続編です。続編を掲載して下さる紙媒体を探しています。

最近の記事

無点句という学びの種、俳句のえにし

 一昨日は久しぶりにオンラインゆうぎり句会を開催した。いつも時間が足りなくなるので少数精鋭、参加者は四人のみ。選評からはもう一人、句友が加わってくれた。  相変わらず私の句にはあまり点が入らなかった。しかし「句会などではさほど点が入らず、一読よく分からなかったり具体的な景が見えなかったりするけれど、繰り返し読んでいる内に次第と視えてくるものがある」句を作りたいという野望を密かに抱いている私にとっては点数など割とどうでも良いのであった。負け惜しみでもなんでもなく。そんなことより

    • 狼煙を何度でもあげるのだ

       昨年末に体調を崩し、それ以来少しマシになっては「復活の狼煙‪……!」と気合いを入れ、するとエネルギー切れを起こして再度崩れ落ち、静養するしかなく、そして若干動けるようになって来たらまた「今度こそ復活の狼煙‪……!」と意気込んで、予想通り改めてぶっ倒れ、という日々を過ごしたこの約半年。最早ネタか?といったザマである。  しかしぶっ倒れておったと言えどその間に多少動きもあり、『俳句界』2月号(文學の森)に新作10句を掲載していただきました。ありがたやありがたや。  また、詳細は

      ¥100
      • 寝息

         句を作って、調べ物をして、執筆作業をして。その間にもCの寝息が聴こえる。途中、突然不可思議な音が混ざったりする彼女の寝息はなんだか面白い。そして、優しい。  作業BGMというものが世の中には存在するけれど、私にとってCの寝息はそういった類のものでもあるのかもしれない。寝息が、響く命の音が、安寧をもたらすのだ。穏やかな心地を抱き、のんびりと自分のペースで作業に取り組むことが出来る。  人の気配を多少感じられる方が作業に集中しやすい、という方は多い。小さな喫茶店や大学の研究室

        • はつなつ

           目が覚めた瞬間から、なんだか少し空気が冷たくて、軽度の倒錯を覚えてしまいそうだった。  ここのところずっと体調が悪く、全てのお仕事・作業を一旦お待ちいただいているような状態だ。原因は明白で、季節のせい。初夏のせい。初夏の、記憶のせい。  Twitterでも何度もお伝えしたことがあるのでご存知の方も多いだろうと思うけれど、わたしは学生の頃、首絞め通り魔に遭い殺害されかけた。詳細は省くが、それ以来極度の睡眠障害を患っている。また、この季節、初夏という緩やかに気温が上がりゆく時

        無点句という学びの種、俳句のえにし

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          2本
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          2本

        記事

          わたしストレージ

           昨日はCがお休みだったので二人でだらだら、のんびり。低気圧爆弾が酷かったため、丁度良かった。あんな日に無理矢理予定を詰め込んでも、結局上手く動けないことをもう知っている。  だからこそ、無理せずに生きる。  出来ることだけをする。  「無理せずに生きること」と「楽をして生きること」は全く異なる。  はたから見ればその境界は非常に曖昧だ。自分自身のことであっても、「それって楽をしているだけなんじゃないの?」「自分を甘やかしているだけなんじゃないの?」と思ってしまうときもある

          わたしストレージ

          境界、物欲、明日は句会。

           朝七時頃、一度目が覚める。すこぶる気怠い。ひとまず起き上がり、ウィルキンソンの炭酸水を一口、二口と。特に理由はないが、近頃はミネラルウォーターやお茶の代わりに炭酸水を飲むことが多い。  しかし眠気は拭えずに、再び布団の中へ。現実と、微睡みと、夢と。それらを往復する時間。  自分が今どこに居るのか分からなくなることがある。現実と微睡みの、微睡みと夢の、あるいは現実と夢の境界はいつだって曖昧だ。  そんな世界を、生きている。  午前十時過ぎ、ようやく起床。ハンドドリップで淹れた

          境界、物欲、明日は句会。

          表現と受け取り手と昔の男

           なんてテーマの謎スペースを開いてしまったのだけれども、まあ途中日本酒も入っていたので許して。枯葉マナコと組んだらこうなるんですよ。うん。  今週の! Yakka.

          表現と受け取り手と昔の男

          6秒を超えて残ってしまう

          ・人の感情は6秒以内がピークらしい、という話  どこでそんな情報を仕入れたのかは既に覚えていないのだけれども、人間の感情というものは6秒がピークで、そのあとは薄れていくものだ! という主張を聞いた。いや、読んだ? 何かの書籍に書いてあった気がしないでもない。  まあそれは良いとして、じゃあその「6秒」って数字は一体どこから出て来たんだ……お前は一体何者だ……と思い、調べてみた。  人の感情は6秒説、元々はアンガーマネジメントという心理トレーニング法における話らしい。心理学に基

          6秒を超えて残ってしまう

          帰還

          ・フラッシュバック期間の話  今日から七月、一年の折り返し、と考えると本当に早いもので、今年前半はどうやって過ごして来ただろう、ちゃんと生きて来られたかな、などと思い返したは良いが結論としては「めっちゃへばっていたな……」だった。Twitterでも少し書いたけれども、PTSDのフラッシュバック、発作が例年以上に酷かった。(聞いていて気持ちの良い内容ではないと思うので詳細は割愛。気になる方は過去ツイを見るか、私に直接質問してください。)  フラッシュバックが酷かった間、お布団に

          書評02 芥川龍之介「蜘蛛の糸」

          序.  「蜘蛛の糸」は1918年7月、児童向け文芸雑誌『赤い鳥』に発表された、芥川龍之介にとって初の児童文学作品である。そのような経緯を踏まえても、この作品が子どもたちに向けた寓話的内容を含んでいることは明らかであるが、本稿においてはあえてそのようなバックグラウンドを一旦切り離し<物語自体>を読み解いていきたい。芥川龍之介及び『赤い鳥』の編集に携わった人々の意図は積極的には汲まずに、現存する史料との因果関係は一旦伏せた上で、<物語>に、テキストのみに焦点を絞って解釈を進めたい

          書評02 芥川龍之介「蜘蛛の糸」

          2018年 俳句四季新人賞最終候補作

           2018年度「俳句四季新人賞」最終候補に残していただいた句群、30句です。よろしければ、眠れぬ夜のお供にでも。   結末の夜              松本 薬夏   

          ¥200

          2018年 俳句四季新人賞最終候補作

          ¥200

          書評01 江戸川乱歩「押絵と旅する男」

          序.複数の枠、語りの場  まず最初に、物語の構造について確認しておきたい。「押絵と旅する男」は典型的な枠物語であり、しかも二重の枠によって物語が囲まれている。その二重の枠とは ①「私」が物語る枠 ②「私」がかつて出会った「老人」が物語る枠 の二つであり、 A.「私」から読者への呼びかけ・語り ……枠① B.「私」と「老人」の話 ……枠①の内部 C.「老人」から「私」への語り ……枠② D.「老人」の若かりしの頃の話・「老人」の兄の話 ……枠②の内部 という構造をなし

          書評01 江戸川乱歩「押絵と旅する男」

          ゆうぎり句会 注意事項

           今後も句会を続けていくために、いくつか注意事項を述べさせていただきます。  参加者の皆様、また、参加を検討されている皆様は、少し長くなってしまいますがお付き合いいただければ幸いです。 ・時間について  交通機関の遅延等不測の事態に巻き込まれることもあり得るので、投句締切までにご連絡をいただけた場合に限り、他の参加者の皆様の承諾を得られれば10分程度なら到着をお待ちすることも可能です。  ですが、既に会場に居らっしゃる場合は『時間厳守』を心がけてください。 「それでは◯分間

          ゆうぎり句会 注意事項

          「青春ごっこがしたいなら他に行け」── 俳人、飛行機乗りを想う。

           とりわけ舞台観劇に赴く機会が多いと言うわけではないけれど、それでもお芝居を観ることは好きだ。映画やドラマとはまた違った、生々しい呼吸が聴こえてくる。役者さんの声、肉体の動き、それらひとつひとつに対する劇場内の空気の動き、観客の反応。そういったもの全てが寄り添いあって、時には衝突して、作品を完成させる。  と、なんだか前置きが長くなってしまったけれど、今回ここに書き残すことはある作品に対する感想だ。とても個人的な意見に過ぎない上に、その作品はもう七年ほど前に公開されたものな

          「青春ごっこがしたいなら他に行け」── 俳人、飛行機乗りを想う。

          纏わる微熱 ‪──女流の足音を追って  第二回‬‬‬

           女流俳人に関する文章を書いてみよう──そのように考えたとき、最初に脳裏をよぎった俳人は鈴木真砂女だった。    死なうかと囁かれしは螢の夜  句集『都鳥』に収録された一句である。真砂女の代表句でもあり、様々な俳論にて引用されることも多いので、俳句を学ぶ者でこの句を知らないという方は居ないのではないだろうか。わたし自身も初学の頃にこの句と出会い、衝撃を受けたことを覚えている。写生を心掛けるべし、自分の気持ちを言葉にするのはぐっと我慢して物に託すべし。どのような指南書であっ

          纏わる微熱 ‪──女流の足音を追って  第二回‬‬‬

          纏わる微熱 ──女流の足音を追って  第一回

           ある夜のこと、睡魔を逃したわたしは特に目的も持たずにぼんやりとパソコンを開いた。ゆらゆらと揺蕩うように様々なウェブサイトを閲覧したのち、辿り着いたのは某ウェブショップ、主に書籍を扱っているサイトだった。暇なときややるべきことが上手く進まず行き詰まってしまったとき、わたしはそのサイトをよく閲覧する。購入するか否かに関わらず、様々な書籍の情報を見ているだけで心踊るのだ。  そんな折にふと視線の止まった一冊の、俳句に関する書籍。それが谷村鯛夢氏『胸に突き刺さる恋の句 女性俳人 百

          纏わる微熱 ──女流の足音を追って  第一回