書評02 芥川龍之介「蜘蛛の糸」
序.
「蜘蛛の糸」は1918年7月、児童向け文芸雑誌『赤い鳥』に発表された、芥川龍之介にとって初の児童文学作品である。そのような経緯を踏まえても、この作品が子どもたちに向けた寓話的内容を含んでいることは明らかであるが、本稿においてはあえてそのようなバックグラウンドを一旦切り離し<物語自体>を読み解いていきたい。芥川龍之介及び『赤い鳥』の編集に携わった人々の意図は積極的には汲まずに、現存する史料との因果関係は一旦伏せた上で、<物語>に、テキストのみに焦点を絞って解釈を進めたい