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蒼の彼方のフォーリズム 鳶沢みさき小説(更新終了)

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蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - 著者 渡辺僚一 原作 sprite 蒼の彼方のフォーリズム 鳶沢みさきシナリオをみさき視点で描いた小説で…
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2024年2月の記事一覧

蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - #49

 何度も練習してきたんだ。しっかり、押さえる! 背中に回られたりなんてしない!  顔が近い。必死な顔してる。あたしもそういう顔してるんだよね。 「くっ!」  明日香と衝突して、衝撃が走り抜ける。  時間は? 試合はまだ続く。終わるな! という気持ちと、終われ! という気持ちがあたしの中で交差する。心も体も持たないからもう終わって欲しい。だけど、試合がずっと続けばいいような気もする。  届くわけないとわかっている。でも、届くかもしれないから明日香に向かって腕を伸ばす。どうして手

蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - #48

11 あたしと明日香は休みなく動き続けている。蜂と蜂が戦ったらこんな風になるかもなって、頭の隅で考える。近づいて絡み合うように飛び続ける。針を刺す機会を探す。  あたしは肩を斜め下に落とすフェイント。明日香が引っかかって、下向きに移動しようとするのに合わせて上昇。  やった!  脇を抜けて、斜め上から背中にタッチしようとした瞬間、また明日香が消えた。これは見えた! 縦の動きのエアキックターンで上へと逃げたんだ。 「まだまだ!」  あたしはすぐに明日香を追う。  一瞬の加速だ

蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - #47

10 スタート位置のファーストブイで、明日香があたしを待っていた。 「やーやー明日香。元気にやってる?」 「はい! 元気にやってます!」  明日香は嬉しそうに微笑む。 「んじゃ〜。元気にやろうか?」 「ですね。よろしくお願いします!」 「こちらこそ」  あたしはスタート位置について静止する。真っすぐ前を向く。心臓が早鐘を打ってる。呼吸が乱れそうだったので、口を真一文字に結んで耐える。  緊張する。  気を抜いたら、飼い主に強烈に怒られた犬みたいにしっぽを股の間に入れて震えち

蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - #46

8 ──試合は19対0で終わった。  覆面選手が必死に泣くのをこらえている。 「うぐっ……うううっ……………」  ボイスチェンジャーは切れちゃってるけど、そのことを指摘する人はいない。  やりすぎたとは思うけど、手を抜きたくなかった。そんなことしたら、覆面選手を傷つけることになるんじゃないかって思ったのだ。  部長が、ぽんぽん、とみなもちゃんの肩を叩く。 「泣けるくらい悔しいってことは、まだまだ成長できるってことだぜ、みなもちゃん」 「みなもじゃないもん!」  うっかり口を