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蒼の彼方のフォーリズム 鳶沢みさき小説(更新終了)

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蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - 著者 渡辺僚一 原作 sprite 蒼の彼方のフォーリズム 鳶沢みさきシナリオをみさき視点で描いた小説で…
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2024年1月の記事一覧

蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - #45

6 「うひ〜、なんとか勝ったー!」 「よくやった。偉かったぞ!」  晶也は部長が乗り移ったみたいに、力を込めていった。 「乾さん怖かった! 圧迫感が凄すぎた。同じ人間とは思えなかったよー」 「その相手に善処しますって答えるのも凄いけどな」 「あ、聞いてたの? 覆面選手との会話の癖がしみついてた」 「で、どうする? その時は真正面からやるか?」 「真正面から……うん。無理。その時が来たらまた一緒に作戦を考えよう」  真っ正面からぶつかる、というのはあたしのやり方じゃないと思う

蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - #44

5 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」  何が起こっているのか理解してない人が見たら、疲れる要素がどこにあるのか? って考えるかもね。でも、凄い疲れるんですよ。だって、隙を作らないように集中しなきゃいけないし、乾さんがあたしの想像を超える動きをするかもしれない。ずーっと気を張ったままなのだ。  心も体も繊細なガラス細工になっちゃったような気がする。ふーっと息を吹きかけられただけでボロボロに壊れてしまいそう。あとどれだけこんな時間が続くんだろう? 「晶也、時間は!?」 「

蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - #43

4 乾さんがセカンドブイにタッチして1点を奪ったあとに、あたしはセカンドラインの中央辺りに到達する。  スピーダーらしく、猛スピードでラインに沿って真っすぐに飛んできた。 「みさき! 乾の頭を押さえろ!」 「わかってる!」  あたしは乾さんの頭を押さえる場所に入る。  乾さんは速い。だけど、あたしは乾さんよりも速い部長を相手に、スピーダーの頭を押さえる練習を続けてきたんだ。それに、白瀬さんには全国大会での乾さんの動画を見せてもらった。乾さんの飛び方は、その時と同じ。タイミン

蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - #42

3 開会式が終わり、白瀬さんのブースの側で作戦会議。  部長はぶんぶんと両手を振り回して叫ぶ。 「鳶沢ッ! リラックスしつつ気合を入れて、集中力を高めて全力で根性を見せろよ!」 「あたしにいろいろ望みすぎです!」  白瀬さんはぽんぽんとあたしの肩を叩く。 「はははは、いいじゃないか。そのくらいやってもいい相手だよ。まー、僕から言えるのは練習通りにやればいいってことだ」 「……そのつもりですけど。練習通りにやれば勝てますかね?」 「勝つも負けるも時の運って言うよね? 運で勝敗

蒼の彼方のフォーリズム - Fly me to your sky - #41

2 「一回戦で乾とはな! 予想をはるかに超える幸運だ」  部長がぐぐっと胸の筋肉を盛り上げて叫んだ。横に立っている白瀬さんも嬉しそうにニコニコだ。 「そこで当たるのが希望だったからね。よかったじゃないか」 「覆面と当たる二回戦では地獄へ直行だから、今は幸運を味わっているがいい!」 「あ、はい。幸運に打ち震えます」 「勝っても負けてもいいから、観客にFCをアピールするド派手な試合を頼むよ。僕の出してる出店の売り上げに貢献して欲しいな」 「が、がんばります!」 「プロじゃないん