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記憶のない結婚(3)


籠の中の鳥

私がそう感じた瞬間の記憶がある

日中、外に出ることができなくて
動くこともできなくて
床に転がっていた私は
カーテン越しに入る暖かい光を受けて
じんわり身体も暖かくなったような気がした
その時の季節の記憶もないが
その光がとても心地よくて
ゆっくりと身体を起こしてソファーに頭を乗せて外を見た

『外はいいなぁ…』

呟いて涙が流れた

ソファーから見た外の景色は
まるで鳥籠の中から外を見るような
目の前に出られない檻があるような景色だった

檻なんてないのに
心は繋がれてそこから逃げられない

彼は「洗脳」するということをうまく活用していたように思う

彼が正しくて
私は正しくない

私は彼に否定され否定され
そこに存在していることすら申し訳なく感じるほどになってしまっていた

ただ生きているだけ
そこに私の思考は必要なく
心無い笑顔を作れればそれでよかった

彼の言いなりになっていれば全てがうまくいっていると思い込まされていた

籠の中から外を見る自由だけで
1人で外出する自由はなかった
それが私の安心であり幸せであると思わされていた

「籠の中の鳥」

もしくは

「軟禁」


その生活を何年続けていたのだろう

その間、仕事を辞めることになって
うつ症状はさらに悪化
通院していた病院から処方される薬は増えていくばかり
起きている時間より寝ている時間のほうが多くなった
意識は常に混濁していて
話していても呂律は回らず
時折、急に泣き出しては叫んだり
髪の毛を引っ張って引き抜いたり
かと思えば笑っていたり


ただの精神異常者だった


どの行動もコマ送りのように断片的に覚えている
どうせなら全部消えていてくれたらいいのに

行動の記憶は時系列で答えることができない


その頃の私を心配した母が
このままではいけないと、その後通院することになる病院を調べてきて一緒に行こうと言ってくれた

そこから
私の記憶は増えてきている

そこから
私の「記憶のない結婚」が変わり始めた


考えることができるようになってきて

意思を伝えるようになって

彼の思い通りにならなくなってきた




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イラストお借りしました♡︎
ありがとうございます(ㅅ´ ˘ `)☆*。


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