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#小説

「20代と30代って、仕事も恋愛も全然違うんだよ」

「20代と30代って、仕事も恋愛も全然違うんだよ」

「ちゃんと仕事もして、外見だって悪くないし、性格もいいのにね。モテそうなのに」

あー、出た出た。「モテそう」フォロー。相手は悪気がなくて、こうやって斜に構えてしまうところが自分はモテない側なんだって痛感する。

「モテそう」って言われる人は、モテない。モテてる人は全然違う言葉を言われるからだ。例えば「今度は2人で会いたい」とか「好きになっちゃいそう」とか。モテる人は「モテそう」なんて思われる前に

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応援歌というぬるま湯

応援歌というぬるま湯

つい先日、「ダンディ倶楽部」という会を発足した。ダンディ倶楽部とは、ダンディさを追い求めるという、いかにもダンディじゃない人たちが集まるような会である。先日の議題は「自分よりスゴい年下と出会ったときに、どうやって自分を慰めるか」であった。この議題の発端は、たしか「嫉妬をうまくあこがれへと昇華できますか」だったと思う。

「正直、自分よりスゴいと思う年下にまだ出会ったことがない」やら「美味しいものに

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そのやさしさは、誰メモリのやさしさやねん。

そのやさしさは、誰メモリのやさしさやねん。

「付き合いが上手くいくかどうかは、一般に数値化されていないもののメモリ感が合うかどうかなんだ」という、飲みの席で先輩が酔っ払いながら、なかばやけくそに放った言葉を強烈に覚えている。

「あのな、数値化されていないものってたくさんあるだろ。愛とか想いとか誠意だとか、目に見えないもののほとんどは数値化されていないわけだ。でな、長く付き合えるヤツらってのは、その数値の感覚がだいたい似たようなヤツらなんだ

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しょうがを煮詰めたような恋。

しょうがを煮詰めたような恋。

やすらぎの価値を知りつつ、その一方で、私はどうしてもときめきが永遠に上昇し続ける、という夢をみてしまうのだ。 
—穂村弘『もしもし、運命の人ですか。』

先日、読んでいたエッセイ集にこんな一文を見かけた。
「ときめき」による上昇を続けても、そのうち天井にぶつかってしまう。そこから「やすらぎ」という水平飛行が続き、終いには下降していくという、飛行機を模した秀逸な例えで、誰しもが共感してしまう。

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