同一色の世界で II.I


II.I

 11才の時、初めて好きな人が出来た。そして彼は、最初の友人でもあった。新しい学年を迎え、クラス替えが私たちを引き合わせたのだ。その男の子は、痩せていて、同世代の子たちよりも少し高めの背丈、大きな切れ長の目元が印象的なテラコッタ。話したこともない、飛び抜けてハンサムでもない、勉強もスポーツもそこそこのその子に、なぜわたしは突然惹かれたのだろうか。事実、わたしは新しいクラスになるまで、彼のことを全く知らなかった。
 しかし、進級して間もないある日の午後、突如、ナニモノかに胸を蹴られるような感覚を味わった。それは、魔法がかかった瞬間の合図だ。

 その出来事について話す前に、当時のわたしのことをちょっとだけ話してみたい。
 わたしは学校が好きじゃなかった。それは“学校”という閉ざされた空間、システムになじめなかったからではないかと思っている。そもそも、同じ年に生まれたという理由だけで寄せ集められた私たちは、誰かが決めた教科を、誰かが区切った時間のなか、毎日同じ場所で一緒に過ごさなくてはならない。何のためなのか誰も教えてくれないまま入学し、「みんな仲良くね」と言われて過ごす。
きちんと整頓された系統は、わたしにはある意味理不尽で、不自由な気持ちを抱かせた。きっと、誰もが賛成ではなかったはず。それでも、順応していくことを促され、それが正解のように扱われていた。わたしは、それらに対して反発さを募らせるというより、少し距離を取りながら、退屈さが募る日々を過ごしていた。

 そう、学校はあまり行かなかった。そのため、気軽にことばをかわす友達も居なかった。
 でも、それは悲しいことではなく、わたしはこの頃、特に、他人を必要としていなかったように思う。ううん、もっと正しくいうなら、この人と仲良くなりたいと思える出逢いがなかったのだ。心がそう思った人同士が友達になるものだと、誰に教わったわけでもなく自然にそう思っていた。なのに、同じクラスだからという理由で仲良くなるなんて、一体誰のための友達なのか、それが楽しいことだと全く思えなかった。

 学校に行かない代わり、自宅でちゃんと勉強をし、母や出張教師がみてくれた。両親は反対しなかった。ただ、好きなことがあるなら、それをやるといいよと言った。わたしは、これといって没頭できるものがなかったけど、自然の中に身を置くことと、父の写真を見ることはとても好きだった。
 
 火の国はね、自然も私たちと同じ色。でも、みんな微妙に違うの。たとえば、昼と夜は、時間によって明るさ、色の濃度が違う。朝はやさしくやわらかく、昼はより明るく、夕方に向けて少しずつトーンダウンしながら、夜は色濃い世界をつくる。木々も花もそれぞれの色合いを持って存在している。動物や虫たちも。
 また、季節は、“暖かいと火照るように暑い”というふたつの季節で構成されている。自然の中に身を委ね、全身の皮膚を通じて熱量を感じていると、ああ生きているんだなという実感と心地良さの往来に包まれた。火の国の人間は、自分たちのスピリットは炎だと思っているんだ。だから熱を感じることは、命を感じていることと同じなのかもしれない。

 それから、夜は、瞬く星を見ながら、遥か遠くに存在している異星に思いを馳せた。わたしと同じように、今この瞬間同じことを考える人を想像した。遥か遠くに存在する誰か、隣の惑星や同じ星の誰かを。今この瞬間の中で、たった今出逢うことは不可能な私たちが、同じ思いでリンクしていること。そんなことを考えていると心は舞い、高鳴って、いくらでも時を過ごすことができた。
わたしは大半の時をこんな風にして過ごしていた。
 そんなわたしにも、恋と呼べるような訪れが、隕石の落下のように突然やってきたのだった。

・・・

(つづく)

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筆名:絲川三未 SFやファンタジー短編、掌編、詩を書いています。 子どもから大人まで楽しめる物語、小説やエッセイをたくさん書きたい🦄 Paris⇨Tokyoへ(2020.3〜)