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どうせまた雨が上がると嘘のように晴れるんだろう

夕方になって急に雨が降った。これが夕立というやつか。夏の楽しい思い出も悲しい出来事も、全部洗い流して新しい季節へと移り変わろうとしているかのようだ。

朝。顔を洗っても大して取れない眠気と寝汗で少しベタついた首元。冷蔵庫で冷やしてあるジャスミンティーをコップに注ぐ。今年の夏に家族で島根・鳥取旅行へ行ったときに「湯町窯」で買ったコップだ。氷を3つほど入れて、「キンキンに冷たくなれ」と気休め程度にカランコロン回す。そして洗濯機を回す。

探してもいないくせに、辞める理由がないからと吸い続けている煙草に火を点けた。冷たいジャスミンティーとメンソールの煙がどことなく身体の熱を下げていく。今日で夏が終わるというのに、自宅の机に向かってせっせと仕事を始めた。途中で洗濯機が呼ぶので、洗濯物を取り込んで干した。

昼。雲ひとつない晴天の中、歩いて近くのインドカレー屋さんに行った。肌が「ジリジリ」と言っているような気がするほど暑い。お店に着くなり出された冷たい水を半分ほど飲んで、「こんなに暑い日はやっぱり辛いものに限る」とメニューを見ながら辛口を選んだ。

いつも思うのだけれど、インドカレー屋さんのランチセットに出てくるサラダのドレッシングはスパイシーで美味しい。一人暮らしをして野菜を食べる機会がめっきり減ったけど、「インドカレー屋さんで作ったスパイシードレッシング」なる商品が発売されたら絶対買うし、きっとサラダを食べるようになると思う。だからインドカレー屋さんは、ドレッシングを販売してほしい。通販で。

夕方。もはや相棒といえる湯町窯のコップと冷えたジャスミンティーをお供に、ひたすら仕事をしていた。「あぁ今日は8月31日か」と、ふと夏の終わりを感じて窓の外に目をやる。雨が降っていた。これが夕立というやつか。夏の楽しい思い出も悲しい出来事も、全部洗い流して新しい季節へと移り変わろうとしているかのようだ。

年を重ねるごとに、花火大会や夏祭りに行く機会が減った。だけどそういった夏の風物詩に対する憧れは増すばかりで、ふと「青春」について考えてみたりする。今年で28回目の夏を迎えたことはハッキリとわかるのに、28回分の夏の思い出はよく覚えていない。毎年「あぁ今年の夏も終わったなぁ」と思っては、来年の夏に思い焦がれる。

今年の夏は、15年飼っていた愛犬がこの世を去った。いつも夏が終わるたびに「また来年」なんて思っていたけれど、もう来ない夏があることを今さらながら痛感する。「同じ夏は来ない」。わかっていたはずなのになぁ。さっきジャスミンティーに入れたはずの氷も、いつの間にか溶けてなくなっている。来年の夏には、今年の楽しかった思い出や悲しかった出来事も溶けてなくなるのだろうか。

今年も夏が終わる。

人も季節も
時と共に移ろうよ
わかっていても 僕だけ
取り残されたような気になるよ

わがままに 泣き出した
子供の様な夏の夕立
どうせまた雨が上がると
嘘のように晴れるんだろう

恋をせず生きてゆけない
僕らは夏の夕立

Shower / 清水翔太

そこはナツノオワリとちゃうんかい。

清水翔太の「ENCORE」でShowerやナツノオワリを聴こう。


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