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【企画参加】 金色に #シロクマ文芸部


 金色に染まり始めた景色を目の前にする朝。見慣れた風景も霧に包まれ幻想的だ。渡鳥の群れが目の前を横切る。しかしこの光景も今年が最後かもしれない。

 昨夜は夫に別れ話を切り出された。季節が変わったと同時に激しく降った雨の中を帰って来てからの突然の話だった。突然とは言うものの、もう随分前からただの鬱陶しい同居人というだけの存在で、こちらも避けるように毎日過ごしてきた。

 「お互いの為に別々に暮らす方がいい。」

 そのセリフに大いに納得はするが色々なしがらみから反論する。素直に受け入れては面白くもない。向こうも少しはごねられれば男冥利につきて自尊心も満たされるんだろう。この際は逆に「夫に捨てられた女」を演じておいたほうがいいのかもしれぬ、と胸算用してみる。

 それと同時にあれも出来る、これも出来る、自分は自由になるのだ、という光と期待が首を持ち上げる。これでいて実は先日とても座り心地の良さそうなソファに一目惚れして以来、いつかこんなソファにゆっくり抱かれたいと思った瞬間が序章だったのかもしれない。

 これでやっと本来の自分に戻れるのか。元来自由奔放だった性格も長年の夫婦生活でだいぶ軌道修正され、思うようにならず、我慢に耐えて一生が終わるのだろうと腹を括っていた。ゼロと一が中心でキーボードを叩くのが仕事の毎日、情緒に乏しく目の前にある物しか見えない夫との日常は、不満と不安でフラストレーションが溜まり毎日がつまらなかった。それを、まるで悪の呪文が解けるように心が解き放たれていくような感覚を感じていた。
 
 絶対に無理だ、と思ってきたが果たして本当にそうなのか。いやまだそんな年でもないだろう。ひとり薄暗いバーのカウンターでグラスを傾けていれば、もしかすると酔った銀髪の紳士に
「悩み事でも?」
と尋ねられるやもしれず。

 逆に考えれば、一人になるのなら一刻でも早いほうが良い。きっと時間は限られているのだから。そう思い始めると居ても立ってもいられない気分になってきた。見えてくるのは未来のことばかり。目の前には新しい扉がたくさん並んでいる。若い頃、何も考えずに家を飛び出した時と同じ気分。

 直感で動く質の自分を、石橋を何度叩いても渉らない夫がよく見抜いているのはわかっていた。しかしもう今はそれにさえ便乗したい。

 雨降って地固まる、と言う。昨夜の雨はどこへやら。一雨ごとに秋は深まる。
 どうにかなるでしょ。
 ふと外を見ると、もう朝霧は晴れて黄金色の葉がキラキラと輝いていた。




(1037字)








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今日は、久々にこちらの企画に参加しますん。




金色が似合う季節。


きゃうん♥

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