合格発表

遡ること数ヶ月前、資格試験を受検した。
品質管理検定3級という製造業に従事するなら取っておいても損はない資格。しかしながら職場から無言のプレッシャーによる受検なので、いかんせん腰が重くてしかたかなった。
平均合格率は50%なので勉強しないと落ちるレベル。


試験勉強に動き出したのは1ヶ月前。
今までもこうした資格は幾つか取得してきたので、その経験則からテキスト選びってのが重要なのがわかった。

本屋で物色すること15分。
①残り時間も少ない
②あまり勉強したくない
③なんなら受検しないでバックれたい
の三拍子揃った俺に最適な参考書を見付けた。

【10時間で合格！】なる題名で、他の参考書に比べて厚みが薄いものを発見。
「コレだっ！」
優柔不断の俺が迷うことなく即決定。心配性なので他の問題集と合わせて2冊を買って帰宅した。

「10時間の勉強でオッケーなところ、まだ1ヶ月もあるから‥」
Spotifyで【Study】とか調べちゃって耳心地の良い音楽を聴きつつ余裕をこいてテキストを読んでいた。


気が付くとテスト1週間前。テキストは熟読したのでバッチリだろうともう一冊買っておいた問題集を開く。
「‥‥‥‥」
「‥‥え？全然わかんねぇ‥」
問題集が難しすぎて半分くらいしか回答出来ないのだ。

あまりの出来なさに冷や汗とため息が出た。多分屁も出たと思う。そこからは焦りを糧に集中的に問題集に取り組んでいった。
何とか試験直前にはその問題集であれば80%程正解できるまでになっていた。


そして試験当日、かなり早目に会場付近に駐車して車内で仕上げに取り掛かる。
たまたま隣に停まった車の人も俺と同じ試験を受ける方だったようで、テキストを読んでいる姿が見えた。
「共に頑張りましょう！」
そんな眼差しで隣を眺めていたら目が合ってしまった。
『なんか坊主がめっちゃ見てる‥』
もしそんな不快な気持ちにさせてしまっていたらあの節は申し訳なかったです。


会場にはもの凄い人数の受検者。コロナ禍になってからこんなに多い人間を見たのは久々だった。

試験が始まり問題をガッ！っと開いた。一問目から全くわからない問題が出題。
「あっ‥コレ落ちたかも‥」
開始早々そんな事が頭をよぎる。

隣の人からは、カッカッカッと鉛筆を走らせる音が響く。またその音が焦りをさらに増幅させる。
その後も初めて見る問題が目白押しで、自信のある回答が半分くらいしか書けないまま時間が過ぎていく。

『試験終了5分前です』
試験官がそう言った時にまだ未回答の問題が数問残っていた。それほどまでに時間が足りなかった。
もう最後は、
「どーれにしようかなっ♪」
って選んで回答したのは言うまでもない。

手応えが全くないまま試験終了。半ば諦めムードで帰路に着いた。この1ヶ月間はずっと頭の片隅に試験の事があったので気が休まらなかった。
その上、散々な結果に、
「ここまでの勉強時間が無駄になった‥」
まぁ調子乗ってギリギリ勉強しなかったのが悪いのだが。


そして遂に先日結果発表がオンライン上であった。
結果は‥‥‥

まさかの合格！！

自分史に残る令和の奇跡と呼べよう。
正直言って絶対に落ちてると諦めていた。

俺の地頭が悪いのは大前提にあるが、やっぱり【10時間で合格！】なんて甘いもんじゃなかった。
問題集も予備で買っておいたから良かったものの、このテキストだけだったら確実に不合格だったと思う。

テキストは悪くない‥‥悪くないとは思うけど、
なんだって地道に努力して積み重ねないとダメなんだと改めて実感した。

もうしばらくは試験受けたくないわ。