見出し画像

移住直後に立ちはだかる無保険の壁とビザの問題

この記事を読んで、海外で暮らすときはステータスがいかに生活に影響するかということを思い出したので書き残しておこうと思います。

Clement Demarais さんはコロナウイルスの流行による制限によって3月に職を失った。オーストラリア人の雇用者とは違い、政府からの補助を受けることができなかった。彼は10年間オーストリアで働き税金を払ってきたが、他の100万人以上の一時的ビザ保持者と同様にJob Seeker / Job Keeper (失業者、収入が下がった人向けの補助)プログラムの受給を遮られてしまった。いまは預金を使い果たし、年金に手を付け、家賃はフランスに住む家族が払っている。彼は現状に対して「非常に不安定だ」と話している。

20代 なんの保証もなくても平気だった時期


10年以上前、夫は「学生ビザ」でオランダの建築の学校に通っていました。彼の両親は海外留学させる経済的余裕はないということで支援はなく、日本で大学生の時に借りた無利子の奨学金の残りを生活費に、その後に獲得した返済不要の奨学金を学費に充てていました。

その後、学校の講師の一人だったボスが運営している建築事務所への就職が決まり、そのままイギリスに渡り、初めの三カ月程度は「ビジタービザ」で滞在し、その後「就労ビザ」に切り替え。結婚後は私のディペンダントビザを申請して一緒に暮らし始めました。

イギリスで夫は今と同じ「現地採用」で、永住権がない状態で暮らしていましたが、私たちは若く病院にかかることもほとんどありませんでした。もしかかったとしても、ご存知の通りイギリスは「ゆりかごから墓場まで」の手厚い社会福祉を提供してくれており、一時的なビザで滞在している移民でも無料で医療サービスを受けることができました。
なので全くの無保険で、政府からの補助がなくても不安は感じずに、お金はなくても身軽な暮らし方に満足していました。

そんな中、一度イギリスで駐在員家族とお会いしたことがありました。家賃の話になったとき、彼らの一週間分の家賃が私たちの一カ月の家賃よりも高く、しかもそれは会社から払われると聞き、そのとき初めて、よく聞かれる「現地採用?駐在?」の質問の意味を知りました。

30代前半 会社が雇用者の保証を担ってくれた時期

その後のシンガポールへの移住は会社辞令であり、まさにその「駐在」というステータス?での滞在でした。驚くべきことに現地までの引っ越し代、家賃の殆どと医療費、クリニックに向かうタクシー代まで会社が支払っていました。また3歳以上になると保育料もでたため、議論の余地なく、仕事のあるなしに関わらず、みな週5日で預けていました。保育園を決める際、何軒か見学に行ったのですが、安めのところで大体一ヶ月100,000円くらいでした。
シンガポールでは政府の補助が受けられない代わりに会社がそれを担い、実際にはそれ以上の負担を請け負ってくれていました。
今までの暮らしで全く知ることのなかった、田舎で公立校に通い、右も左も同じような暮らしをしているのを見て育ってきた私たちからすると、異常にすら思える待遇でした。

30代後半 政府との契約なくして子育てはできないと実感した時期

そしてオーストラリアに小さい子供をふたり連れてやってきました。初めの3ヶ月は日本で契約した旅行者用の保険で医療費を払っていて、それが切れた後はオーストラリアの民間の保険会社と契約しました。


子どもは小さいとき、よく病気になるというのは本当です。今住んでいるエリアに決めたのも、近くに大きな小児専門病院があるからでした。しかし料金は、とても高額でした。

一般医にかかると、5〜10分くらいの診察で6,000円。よくお世話になっていた小児専門病院の救急にかかると一回大体15,000円〜20,000円。また救急車は距離によって値段が違うのですが、消防署から1分・病院までも5分かからない立地で一回40,000円かかりました。(救急車は市民権保持者であっても有料です)
保険会社に申請して後から半額程度戻ってくるのですが、毎回病院に行くためにお財布にお金を多めにいれるというのが通例でした。またお金を払いたくない保険会社とのやり取りは煩雑で、交渉担当の夫はよくブチ切れており、時間的な面でもロスは大きかったです。

医療費以外で問題だったのが保育料・学費です。
日本にいた頃、長女は保育園に通っていました。お昼ごはんもでて保育料は一ヶ月30,000円。どうやって運営しているのか心配してしまうくらいに安いです。シドニーの保育園では、なんと一日で10,000円〜。次女は一切未満なのでさらに高額、なのに空きがほとんど無いという、移住直後の人間には理解できない状況でした。
市民権や永住権保持者であれば政府からの補助があり、収入に応じて割引がされるのですが、全く予測せずに就労ビザで渡豪してしまった私たちは満額で払わなければいけません。
預ける義務はないので、同じように永住権をまだ持っておらず子供が複数いる人の中には、全く預けずに家でずっと子供を見ている。という人もいました。また週5日ではなく2-3日だけ通わせるという家庭も多いです。
長女と次女は、英語環境に慣れつつ社会性をはぐくんでもらうため年中さんの歳に一年間だけ、週2日で保育園に行きました。
年長さんの歳になり小学校に入学後は、公立校であっても月に40,000円程度 政府に支払いをする必要がありました。(給食はでず、教材費などは別途支払い)
また家の近くの公立校は就労ビザステータスでは入学できず、3年間少し遠くの学校まで通いました。

永住権の取得は年々難しくなっており、申請費用もどんどん上がっていました。私たちが申請した2年前は、健康診断や弁護士費用も含めると130万円くらいかかりました。それでも学費だけで年間100万円弱出費が減り、徒歩圏内の学校に転校できたこと。また医療費は税金で支払っているものの、手続きがなくなり、かつ全額支払われるようになったので、病院に行くためのハードルが下がりました。(以前は国保(メディケア)分の税金は確定申告後に返還されました)

また小さいことで言うと永住権をとったことで、子どもの歯のチェックアップに行くことができました。もちろん自腹で行こうと思えば行けたのですが、移住後三年間は目視で虫歯がなければOKということにして歯科健診には行きませんでした。永住権獲得後のベネフィットの中に年二回までの子どもの歯科検診費用も含まれており、それならば行こうと思ったわけです。こんなふうにじわじわと周りとは生活がズレていました。

まとめ

日本で生まれ育って離れるまで、親が出生時に申請してくれたおかげで、当然のようにそのような恩恵を享受してきました。しかし子供がいる状態で無計画にあちこち動いたことで、自分たちだけで生きていくのは大変だし、資産形成という面では本当にアホだったとわかりました。おそらく私と夫だけだったなら、いまだに無保険でその日ぐらしをしていたかもしれません。


しかしこのニュースのように、社会的に大きな変化があった場合はその国に守られているかどうかというのは非常に影響があることだと実感しました。

今の場所に住んで5年、ビザのことは気にしなくなっていましたが、移り住んできた当時は、出会う人たちにどのような背景があってここにいるのかということに非常に興味がありました。

ひとことで「海外に住む」といっても理由も条件も個人のモチベーションも違うので、楽しいことや苦しいことをひとまとめにするのは難しいと思います。今回は「お金」という観点で比較してみました。

おまけ

ところで、次女がハイハイだったころ好きで見ていた番組があるのですが、オンラインでも見れるようなので今日久しぶりに見てみました。アメリカの番組なので基本的には北米出身の人たちが出演者なのですが、いろんな人が様々な条件で世界中で家探しをする番組です。

House hunters International (視聴するにはサインアップが必要です)

英語教師をしながら世界のいろんな国に住むというのはひとつのよくあるパターンなのですが、このふたつは子供のあるなしで条件が違います。

カンボジア

マレーシア

その国の賃貸住宅状況が垣間見られて興味深いし、目的が家探しで絞られててコメントが似ているので、英語の勉強にもいいかもしれないです。

では。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?