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『愛の不時着』を観たらストライクゾーンが広がった話

最初に結論を書いてしまうと、「ヒョンビンが最強、ヒョンビンしか勝たん!!!!!」という話なのである。

私は高校生くらいから東方神起のファンで、K-POPが本格的に流行り始めた大学生時代には、ありとあらゆるK-POPアイドルを浅くかじっていた。東方神起に関してはファンクラブにも入会したし、ライブやペンミと呼ばれるファンクラブ限定のコンサートのようなものにも参加した。東方神起以外にも、彼らが所属している韓国の事務所の合同ライブにも参戦したし、弟分グループのライブにも参戦した。私の大学生時代を語るには、K-POPはなくてはならない存在だ。今は当時ほどどっぷりハマっているわけではないが、今でも東方神起のファンクラブ会員だし、コリアンタウンや韓国料理屋で知っている懐かしい曲がかかるとテンションが上がるし、知っている韓国語の単語が目に入ると少し得意げになる。K-POPが主だが、私はそれなりに韓国文化が好きな部類の人間なのだと思う。

数年前に流行った韓流ドラマ『愛の不時着』を友人に勧められたのは、今年の2月だった。
韓流ドラマやK-POPが日本に根付いて結構な年数が経ったけれども、その友人は韓国文化にまったく興味がない人だった。最近は私の影響もあり少しK-POPを聴くようになったが、最近だと世界的に有名なBTSの曲を数曲聴くくらいで、韓流ドラマを観るということはなかった。
その友人が「ぜひ観てほしい!!!」と、ものすごい圧で『愛の不時着』を私に推してきたのだ。

「あー、また観とくわ」と、いや、お前絶対観る気ないやろ、と友人もつっこみそうな返事で会話を終わらせていた。K-POPは好きだったが、韓流ドラマは観たことがなかった。だって韓流ドラマって1話が長いから拘束時間も長いし、海外作品は吹き替えじゃなくて字幕派だから、1話分のだいたい1時間半はテレビで字幕を追い続けなければいけないし、それって地味に集中力もいるし、しかも疲れるし、というかだいたい『愛の不時着』のあらすじはなんとなく知っているけど、韓国と北朝鮮の話とか、なんか銃撃戦がいっぱいで物騒な感じなのかなって思ったし、その上、韓国令嬢と北朝鮮軍人の恋愛ものとか、絶対悲しい結末じゃんかよ! 私ハッピーエンドものが好きなんだよ! 明るい気分になれるから! だから別に観たくないんだよね! ……と思っていたのが私が『愛の不時着』を見ない理由だった。

そしてそのまま、『愛の不時着』をおすすめされて数ヵ月が経過した。6月のある日、ふと「見てみようかな」と思った。なぜなのかはわからないが、本当に気まぐれだとしか言いようがないくらい、ふと思ったのだった。

幸いやることもなかったので、思い立ってすぐに視聴を始めた。1話長いなーと思いつつも、頑張って字幕を追いかける。数十分、ひたすらに字幕を追い続けていると、やっと彼が登場した。そう、主演俳優のヒョンビンだ。

ヒョンビンという名前は聞いたことがあったが、顔と名前が一致しておらず、どんな人なのかは知らなかった。知らなかったが、まず手始めに「顔面、綺麗すぎるやろ……」と早速ジャブを喰らった。役どころは北朝鮮の軍人なのに、非常に肌が綺麗。色も白い。実際の軍人は決してこんなことはないはずだ。陽に焼けるだろうし、紫外線やら何やらによって肌荒れもするだろう。女子高生やOLみたいに、日焼け止めを何度も塗りなおすこともないだろう。だけど、いいのだ。これはドラマだ。ヒョンビンの顔面偏差値が異常に高い。それだけでいいじゃないか。

しかし、そもそも私はヒョンビンのような目鼻立ちがクッキリした顔面はタイプではなく、イケメンだとか、綺麗な顔をしているというのはわかっているのだが、タイプかタイプでないか、というと話は変わってくる。私は一時期流行っていた塩顔が好きだし、ソース顔か醤油顔かでいうと、断然醤油派だ。塩か醤油なのだ。だけど、ヒョンビンという逸材を目の当たりにしてしまった衝撃で「あら、ソースもなかなか良いじゃないの」と、あまりにもあっさり鞍替えしてしまいそうになった。ただ画面に登場しただけなのに、こんなにもあっさり人の好みを左右させるなんて……。ヒョンビンの顔面、強すぎる……。

早速ヒョンビンの顔の綺麗さに衝撃を受けながら、再び字幕を追いかける。ヒョンビン登場シーンでは、字幕と同時並行でヒョンビンもしっかり追いかけないといけない。私の目はとても忙しくなった。テレビの前に座ったまま一歩も動いていないのに、恐ろしくカロリーを消化したような気がした。

次にヒョンビンが私を魅了したのは、なんと言ってもその体格の良さだ。顔の綺麗さ、色白さ、肌の綺麗さに関しては、ある意味で軍人離れしていたように感じるが、体格はかなりガッチリとしていた。その肩幅の広さたるや! そして大きい背中たるや!!!! 前からでも後ろからでもどっちからでもいいから、許されるならば飛びついて抱きしめたい!!! 絶対に腕が回らないだろうけど、力いっぱい抱きしめたい!!!! という少々変態かもしれない感情を抱いた女子たちは私だけではないはずだろう。主人公の令嬢がヒョンビンに抱きしめられたり、覆いかぶさられて守られた時に「そこ変わって!!!!」と瞬時に思った女子は、決して私だけではないはずだ。集計を取ったわけではないので根拠はないが、根拠のない自信が私には大いにある。

そもそも、体格に関しても、私はガッチリした体格の良い人はタイプではなかった。一時期松田翔太が出演していたCMで「細マッチョ」「ゴリマッチョ」と言っていたものがあったが、それで言うなら断然「細マッチョ」派で、ヒョンビンのような「ゴリマッチョ」はタイプではなかった。当時の私は少しぽっちゃりしていたので、ないものねだり的なところもあったのかもしれないが、顔が薄い方が好きだったの同様に、身体の線も薄いというか、細い方が好きだったのである。そしてそれは今もそんなに変わっていなかったはずだったのだが、またもやあっさりとゴリマッチョも私のストライクゾーンに入り込んできた。

なぜヒョンビンによってゴリマッチョも私のストライクゾーンに仲間入りできたのか。それはきっと私がダイエットして当初より一回りくらい小さくなったのも少なからず関係しているかもしれない。細マッチョだけがストライクゾーンだった当時の状況を考えると、ないものねだり的な考えが今もあるのかもしれない。しかし、それよりも、心のどこかで眠っていた「大きなガッチリとした体格に包まれたい! 守られたい!」というひそかな願望が、ヒョンビンによって開花させられたと考えた方がしっくりくる。歳を重ねて、家族から離れて独りで暮らし、友人はいるものの帰ると独りで、仕事は楽しいけれど上手くいくことばかりではなく責任も年々大きくなってきて、でも甘えられる彼氏もいなくて……、という、絶妙に寂しさを感じているアラサー独身女の心の隙間に、するっと入り込んできたのだ。ヒョンビンよ、そのルックスだけで少し寂しさを感じている女子たちの心の隙間にあれよあれよと入り込んでくるなんて……罪深い男ではないか……!

そして何より、私を含め、多くの女子たちがヒョンビンに魅了されたことの一つとして、彼が演じた北朝鮮軍人・ジョンヒョクの立ち振る舞いが挙げられるだろう。それは「ツンデレ」だ。
ツンデレとは、いわば飴と鞭のようなもので、日頃はクールな人や、表情がポーカーフェイスで少し冷たささえ感じるような人が、ふとした時に笑ったり、優しくしてくれたり、そのギャップに胸がときめくというものだ。ヒョンビンが演じた北朝鮮軍人・ジョンヒョクは、このギャップをすさまじく上手に使いこなしていた。ツンデレのプロと呼ぶべきが、申し子と呼ぶべきか、とにかくジョンヒョクのツンデレ具合にときめかない女子いるか!? いないだろ!? 逆にいるなら教えてくれ! と言いたくなるような、それくらい全女子が胸ときめかせないことがないツンデレ具合だった。

例えば主人公の韓国人女性が「シャンプーが欲しい」だの「アロマキャンドルがないなんて」などとワガママを言った時。ジョンヒョクは「そんなものない」と一蹴して家を後にするのだが、1人で市場に行き、主人公が欲しがっていたシャンプーやアロマキャンドルを、わからないなりに探して購入するのだ。「そんなものないって冷たくあしらったのに! わざわざ探して買ってきてくれるなんて! 好き!!!」と簡単にコロッと落ちるのだ。私のことだ。しかし、アルマキャンドルがわからなくて、結局買ってきたのは普通のロウソクだった。「いや、何それ可愛い! 好き!!!!」と盲目状態になったのはやはり私だが、共感してくれる女子は全世界にたくさんいることを私は知っている。やはり統計は取っていないので根拠はないが、こちらに関しても根拠のない自信が私にはある。

その他にも「俺とはここでお別れだ」と言いながらもこっそりついていき、主人公が危険な目にあいそうになったら自分を犠牲にしてまで守ったりだとか、好きだということを認めたあとは、ツンデレどころかデレデレになり、主人公が重症を負った際、大事に思うあまり身の回りのすべての世話を過剰なくらいにしたりだとか……。

いや、最強すぎるだろ!!! 顔も体格も良くてこんな胸ときめかせる良い塩梅のツンデレの性格を兼ね備えているなんて、最強すぎるだろ!!! ツンデレな性格に関しては役柄ではあったが、それに胸ときめいたのも、すべてヒョンビンのルックスありきの話だと思うし、この良い具合のツンデレを上手く演じられたヒョンビンの演技力もあってこそだと思うのだ。

なぁ、これに胸キュンしない女子、いるか!? いないよな!? みんな仲間だよな!? ヒョンビンに心ときめかせた仲間だよな!?

全世界の全女子に1人ずつ、ヒョンビンをくださーーーーい!!!!!!!!

と思わず鼻息荒くしながら叫んでしまうくらい、それくらい『愛の不時着』のヒョンビンは最高で最強だった。勧めてくれた友人に感想を述べると「私が言いたかったのは、そういうことだ」と言っていた。私の根拠のなかった自信に、少し根拠ができた瞬間だった。

思わぬところで異性のストライクゾーンが広がった私であるが、未だ彼氏はできていない。視野が広がったことだし、今までより彼氏は作りやすくなっているに違いない。そう信じて、そのあたりにヒョンビンが落ちてこないかなと妄想を膨らませる日々なのである。


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