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生物70点の男でもわかった怪しい医学本の怪しい健康法の怪しさ

どうも、センター試験の模擬テストの生物70点男です。
ちなみに上振れてようやく70点です。遺伝の問題は全部書き出せばなんとなく正解できるので好きでした。

今回は一応の前回の続きです。前回、怪しい健康法を試したけど健康になれなかった、というnoteを書きました。

記事内で書くと触れていた怪しい健康本についての書評のようなものを書こうと思います。

図書館やbookoffでタイトルからして怪しい本を選んで読んでみました。
怪しい本をピックアップしたら3冊同じ作者の本がありました。怪しい本で食うメシはうまいか?

この医学本を読んだ感想ですが生物学や医学の知識がなくても絶対嘘だろってわかる内容が多かったです。
「その理論を別の事象に結びつけるのはおかしいだろ」「論理が飛躍してないか?」「別の本で嘘って書いてたやつだ」「精神論では?」
というような内容をさも当然のように書いている部分があると本全体も一気に信用できなくなります。
さらには巻末の参考文献はなかったり、あってもタイトルが怪しい健康本だったり、自分の本だったりします。

今回はそういう本に出てくる健康法のまとめとその怪しさについてまとめようと思います。

健康法その1:東洋医学は素晴らしい

一般的に言う西洋医学とは医師免許を取得するために学ばれる現代の医療行為のことをさします。
漢方などの東洋由来の医学も現代医療では取り入れられており、東洋医学と西洋医学は相反する概念ではないと個人的に思っています。

西洋医学と東洋医学をわける区分として西洋医学は「科学」をもとにしているのに対して東洋医学は「哲学」をもとにしている、というのがあると思います。
研究や実験の積み重ねよりも絶対普遍の理屈を根拠にしているのが東洋医学だと本を読んでいて感じました。

科学では説明できない現象というのは現代もあります。
しかしそういった現象も哲学ではなんとか理屈をつけることで説明できてしまいます。

石原 結實氏は著作で病気の根源は水毒である、と行っています。
端的に説明すると病気になると発汗、くしゃみ、体の器官に水がたまるなど、水が由来の現象が起きます。
水を体に溜め込みすぎているの状態というのが病気であり、その水を外に出そうとすることが症状であると説明されています。

そしてそれは東洋哲学の陰陽道を根拠にしています。
陽の性質を持つものを食べることで陽の状態、つまり健康になれます。
逆に陰のものを食べると陰の状態、病気になってしまいます。

陽である、とは「赤い」や「温かい」という性質があり、陰は「青」や「冷たい」という性質があります。
そして上述の「水を体内に溜め込んでいる状態」とは陰の状態、とのことなのです。

体が温かい方が健康そうだし、体が冷えると病気になる、これは直観や現代の科学からも合っているように思われます。

では体を「陽の状態」に近づけてくれる食べ物を見てみましょう。
・北方産の野菜
・根菜
・赤、黄、黒っぽい食べ物
これらは体を温める効果があるらしいです。理由は全く書いてありませんでした。
それどころか陽の性質のものを食べる必要すらなく、赤いふんどしを身につけるだけで効果があるらしいです。
一気に怪しくなってきましたね。

逆に陰性の食べ物を見てみましょう。
・南方産の野菜や果物
・青、緑のもの
・特に白いもの(砂糖、食パンなど)

根菜ですが緑や白をしている大根はどちらの属性にカウントされるのでしょうか。
などとこの表を見たところですでに突っ込みたくなります。
この手の健康法で嫌悪されがちな砂糖や小麦などが陰に入ってるのもポイントが高いです。

ここからさらなる矛盾点として
・砂糖はダメだが黒糖はOK(黒いので)
・牛乳はダメだがチーズはOK(黄色いので)
・緑茶はダメだが紅茶はOK(赤いので)

というとんでも理論が飛び出ます。
賢明な読者諸君はおわかりだと思いますが一応書いておくと左と右は材料は同じです。
著者は特に紅茶がお気に入りらしく、生姜紅茶を本の中で推奨しています。
どのくらい推奨しているかというと、生姜紅茶の話が出るたびに毎回作り方を()で補足してくれます
読者の記憶力を低く見積もりすぎている。

と、いうように著者は陰陽道に則って病気というのを見ています。

そして奇妙な症例を紹介しています。
突然血尿の出た男性や血便が出た知人を病院に連れて行ったがどちらも診断結果に異常はなかった、という話です。
彼らを診断した西洋医学の医者たちはガンを疑いましたがその心配もなく退院します。
現代の科学では説明できない事象です。
しかし著者は東洋医学の観点からこれは説明できる、としています。
この現象は水分を含むという「陰」の状態から回復するために体が自動的に水分を排出して「陽」の状態になろうとしたに違いない、とのことなのです。

医学に明るくない僕がこの男たちの症例について判断することはできません。
しかし著者の主張の根底にある陰陽道が医学的か、というとかなり疑問な点が多いため著者の主張を信じることもできません

さらに著者は自説を強めるために瀉血の話をします。
瀉血とは古代の西洋から行われていた医療行為です。
すべての病気の理由は血が汚れているからだと信じられていました。
そこで体に傷をつけてそこから血を排出し、悪い血液を排出して病気を治そうとしていました。

著者はこの医療行為をさも正当な行為であるという前提で持論を補強し、さらに「女性の寿命が長いのは生理で瀉血をしてるから」だという理論も展開します。

しかし現代では瀉血は歴史上完全に否定されており、一部の病気への治療を除いて効果は否定されています。
これは人類が正しい研究と思考で導き出された結論です。

著者は「西洋医学に哲学はない」と断じていますが逆です。
「東洋医学に科学がない」のです。
理屈をつけることが大切なのではなく、現実世界を正しく認識することが重要なのだと生物70点の僕でも思うわけです

その根拠が科学以前に論理的に矛盾している点、さらに歴史上否定された医療行為を肯定している点から東洋医学が素晴らしいとは信じられません

東洋医学礼賛の根拠として、日本人は東洋人だから西洋医学より東洋医学の方が効く、などと主張する人もいます。
勘弁してくれ。

健康法その2:自己免疫力ですべての病気は治る

風邪をひいたとき、我々の体は熱が出て、汗やくしゃみが出て、ぐったりとして食欲もなくなります。

これは体の免疫機能が働いて体内の風邪菌の駆除、排出を促していると言うのが現代の科学での通説です。

この例はこの手の本でよく出てきます。
人間の体には病気を治す機能がもともと備わっているので体外から余計なことはしない方がいい、という考えの例示としてよく出されます。

著者たちはこぞって風邪の時に薬は飲まない方がいい、とよく書いています。
細菌を駆除するために熱を上げているのにそれを下げるなんて何事だ、自力で細菌を倒せるようにならないと丈夫な大人にならない、インターネットでもよく見る言説かと思います。

いわゆる自然派と呼ばれる生き方です。
薬の服用や清潔すぎる空間にいると余計に病気になるという考え方です。

彼らの主張によればあらゆる病気を人間は自力で治すことができるといいます。
それどころか病気と見られるものは実は自然でないもの(化学物質やストレスなど)を体が排除しようとしているだけであって病気ではなく健康な状態だと言います。

著者らが根拠として上げているのは病気の患者数の増加です。
アレルギー患者やガン患者数が近年になって右肩上がりになっています。
これにより一見進歩したように見える科学技術のせいで病気が増えている、と主張しています。

しかしこれは恣意的な数値の読み取りと言えます。
患者数の増加については、検査体制の拡充、検査の精度の向上、市民の意識変化により検査に行くようになったなど今までは病気だと診断されていなかった人が患者数とカウントされるようになった、という要因も大いに考えられます。
というかそのように考えるのは基本的な統計の読み取り方です。

こういった都合のいい数値の読み取りはこの手の本によく出てきました。

砂糖をとる若者はキレやすいことがわかった、よって砂糖のとりすぎはよくない、言います。
これは有名な犯罪者の90%以上はパンを食べていた、よってパンを食べると犯罪者になるという詭弁と同じ理論ですね。
そもそも若者自体が砂糖を取りやすい時代です。というか若者がキレやすいのはいつの時代もそうです。

さらにひどいと思った調査結果の読み取りを紹介します。
日本国内でのおもな慢性病の推定患者数を示した図が提示されていました。
高血圧:4300万人、糖尿病および予備軍1870万人、肥満/メタボリックシンドローム:2500万人、などとそれぞれ異なったソースから数字を示しています。
そのうえで著者は以下のように書いています。

これらの推定患者数を足してみると、日本人だけで2億人近くになってしまいます。
日本の総人口が現在一億人。ひとりで2~3つの病気を抱えている人もいますので一概には言えませんが、この数字からわかることは、日本人のほとんど全員が病気になっているということなのです。

『病気にならない暮らし時点』(本間真二郎)

たすなーっ!
著者も一人で2~3つの病気を抱えている人もいる、と前置きはしていますが、肥満や高血圧などの慢性的な病気はほぼ重複していると思われます。
そもそもソースが違い、調査方法や基準も違うのでこの人数をもとに語ることに無理があります。
塾のバイトで数学を教えていたときに「5x+3y=15」みたいな式を「8xy=15」みたいに足しちゃう生徒を思い出しました。
xとyは別物なんだよって教えるのって意外と難しいです。

こういった調査結果の都合のいい切り抜きやグラフの恣意的な読み取りが上げ続けていたらキリがないのでやめておきます。
実験や数値が出てきたらきちんとその結果を検証してから著者の主張を読むようにしましょう。
というかそれは本来著者がするべきことなんですが。

自己免疫系の話で子供が拾い食いをする理由について書かれていました。
子供が拾い食いするのは自然から様々な菌を取り込んで腸内で飼うためだ、と言っています。
そうやって腸内細菌を増やすことで病気への耐性をつけることができるらしいです。
自説の補強のために子供のよくある行動に都合の良い理由をあと付けをしているだけと思えるのですが、複数の本で出てきたので何かしらの共通認識があるっぽいです。

自己免疫の万能さについては医学的に正しいかは確証を得るには至っていません。
ですが医療の進歩や衛生環境の改善で平均寿命が伸び、治せる病気が増えているのは事実です。
もし大自然の状態が健康によく、菌と共生し、すべての病気を人間一人で治すことができるならその事実が説明できません。

健康法その3:化学調味料や添加物はよくない

マーガリンに含まれるトランス脂肪酸が体に悪いと言われていることは有名だと思います。
ですがこれは農林水産省からも否定されています。
また噂として広がっているマーガリンはプラスチック、という話はトランス脂肪酸の研究論文の誤訳であると言われています。

マーガリンの話を持ち出してくる時点で信用に値しないのですが、マーガリンのトランス脂肪酸が良くないという話にはどの本も長い理屈をつけて説明されています。

マーガリンと同じくらいに嫌われているものに化学調味料や添加物があります。
これについてはどの本にもトランス脂肪酸のような納得感のある理由は書かれておらず、ただよくない、摂らない方がいいとしか書かれていませんでした。

他にもよくないものとして上げられがちなものとして農薬、放射線、電磁波などがあります。勘弁してくれせめて理由を書いてくれ

要は天然由来のもの以外はよくない、という話なのでしょうが、こじつけた理論や都合のいいように解釈した実験結果くらいもなく、否定だけをしていました。
こういった本を読む人には共通見解なのでしょうか。怪しい健康本初心者で申し訳ございませんでした

健康法その4:医者は嘘しか言わない

病院に行くと診断料がとられ、薬代がとられます。
別の処置があればそれも別途請求されます。
治さなくていい病気を治すフリをしたり、余計な処置をして治療を長引かせることで医者は儲けているのだそうです。

すでに5000字も書いているのでもう突っ込む気が起きません。
一つだけ言うなら怪しい本書いて怪しい商材売ってる医者も大概やろ

おわりに

他にもトンチキ理論やツッコミどころは多かったのですが挙げているとキリがないのでやめておきます。あとは君自身の目で確かめてくれ。
食べたものの形に自然と近づくという法則があるらしく、パンケーキを食べるとふわふわしたデブになるとかギャグじゃなく真面目にやってます。

科学の本を謳っているくせに科学的でない理論構成や事実を持ち出されると本全体の信頼度が落ちます。
怪しい健康本はだいたい信頼できない、というオチになりました。
水素水とかが出てくると「もう読まなくていいかな・・・」ってなります。

今回読んだ本リスト

タイトルだけで怪しい~ってお腹いっぱいになってくれたら嬉しいです。

『なぜ「おなかをすかせる」と病気にならないのか?』(石原 結實/プレジデント社)
『免疫力でウイルスに克つ!』(石原 結實/幻冬舎)
『「食べない」健康法』(石原 結實/PH研究所)
『病気にならない暮らし事典』(本間 真二郎/セブン&アイ出版)
『脳はバカ、腸はかしこい』(藤田 紘一郎/三五館)
『3日食べなきゃ、7割治る!』(船瀬 俊介/三五館)

医学博士や医者が書いたとは思えないくらい論理の飛躍や誤謬がひどい本でした。生物70点に突っ込まれるな。

『修道院の断食 あなたの人生を豊かにする神秘の7日間』(編:ペーター・ゼーヴァルト・著:ペルンハルト・ミュラー・訳:島田道子/創元社)

断食について修道士の視点から語られる本です。
上記の本に出てくるような怪しい理論もありましたが、それよりも神秘の面や哲学の面で健康や生き方を見つめるという点で良い本でした。
断食しながら読むのにおすすめです。

『代替医療のトリック』(著:サイモン・シン&エツァート・エルンスト 訳:青木薫/新潮社)

ガチ良書
歴史上の様々な医療行為が否定されてきた歴史を紹介してます。
そして現代での健康法や医療行為とどのように向き合うかが学べます。
このnoteで瀉血を否定しましたがこの本で瀉血が否定された歴史や根拠を20ページほどかけて紹介しています。
瀉血は健康にいい!って健康本に出てきたときは半ページくらいでした。これが科学の差という感じがします。

ぶっちゃけこの本だけちゃんと読んであとの本は斜め読みしました。
適当書かれすぎて頭痛くなるし蕁麻疹出そうになるし健康本を読むと不健康になることがわかりました

本当の健康法

noteを眺めていると怪しい健康法をなんの根拠もなく紹介しているものを多く見ます。
根拠を精査するのは素人には難しいです。
ですがその人が言っていることで前提から間違っていることや論理が飛躍して説明してることがあればすぐに疑うべきです。
科学、しかも医学の範囲で適当抜かす人は信頼に値しません。

本やネットを見ていて一番思うのは「それってあなたの感想ですよね」です。
「僕はなんとなく健康になれた」「あの人は健康になった」という個人の体験でしかなく、そこにある普遍的な実践法、そして科学的な根拠があって真に健康法足りえます。

また、例えば「小麦は体に悪い!」と主張している人がいたとします。
それを真に受けて小麦を食べなくなったとします。
実はその人が軽微の小麦アレルギーだった場合その人は段々と健康になっていきます。
一切の小麦アレルギーがなかった人でも小麦を抜いたくらいで不健康になることはありません。健康的なことをやってる気持ちで健康になれた気になれるでしょう。
つまり「小麦抜き健康法」は一見すると成立しているように見えてしまいます。
このように一面だけをみて普遍的な健康法だと断じるのは早計すぎます。
ネットに転がっている健康法はこういったパターンが多いです。

上の本の中にもちゃんと科学的な記述や納得できる部分もちゃんとありました。
そこをまとめた真の健康法は「適度に食べて、動いて、ちゃんと寝る」です。

感想や「いや、○○先生の言ってることは正しい!」などありましたらお気軽にコメントやツイッターで教えてもらえると嬉しいです。

もう疑似科学はこりごりだー!


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